ガサガサ…ガサガサ…
ザワワ…ザワザワ…ザワワワ…
ワワワワ…ワワワワ~…
「♪ワワワワ~ドゥワワワワ~
さくらぁ
胸のつぼみ開くわ
あなたへひらり舞い降りて
素敵な大人になるの
さくらぁ
お願いそっと受け止めて
少し背伸びしたわたしを
抱きしめてKISSして
Darling 今わたしはあなただけのもの
ドゥ~ワ~
……♪」
ザワワワ…ザワワワ…
ザワ…
「ニヤーーーッ!」
『らーめん放浪記』純情旅情編。
〈3-(48)・らーめん!〉
ケタタマシイ!
けたたましい魂の叫び!
その叫びは
まるで龍の様に
真っ直ぐ天へと昇ってゆく!
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
麺の王道らーめんの頂点を決めるイベント『らーめんバトル』会場が揺れていた!
その日、その時、気象庁の地震計は
広島のとある地点のみで震度7強を記録していた。
すぐさまそれは誤りである事が発表されたのだが、その誤り自体が誤りである事を
会場内外にいた人々だけは知っていた。
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
そう、確かに、かなりの縦揺れで揺れていたのだ。
揺れは、ドルビーサラウンドシステムが如く
波動が周囲に重低音の広がりを魅せていた。
そんな脅威の振動にもビクともしない原爆ドームを
『犬山(いぬやま)』の娘、『ほたる』と『たがめ』は見上げていた。
周辺の人達が皆、腰をぬかして尻餅をついたりはいつくばったりしている中
ほたるとたがめは、なんとか鉄柵にもたれかかる。
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
ズンズン、ズンズンと突き上げる振動。
この異様な状況を飲み込めぬまま
理解を超えた何かに漠然と怯える2人の瞳に飛び込んで来たモノが
仁王立ちした世界遺産の“それ”である。
2人には、何故か原爆ドームが笑っているように見えていた。
ドームの壁面に幾つも開いた窓の穴が、ケタケタと耳障りな笑い声を上げてパクパク蠢いている。
怖い!煩い!怖煩い!
2人は耳を塞いだ。
しかし、その信じ難き気味の悪い情報は
耳を塞げど開いた瞳からどんどんこちらへ入り込んで来る。
もう嫌!
あわてて2人は目を閉じた。
しかし、振動だけはどうする事も出来ない。
耳を塞ぎ目を閉じても
おっかない笑い声は地面と、そして鉄柵を伝わり
感触としてケタケタ~ケタケタ~と2人の身体へ入り込んで来る。
骨が“キシキシ”音をたててきしんだ。
いつしか“キシキシ”言うきしみ音が“ケタケタ”にすり変わっていた。
2人の身体が理解を超えた奇妙な状況に乗っ取られる!
ほたるが思わず叫んだ。
「死んじゃうーーーっ!!!」
何があろうと“死”なんて言葉を簡単に吐くもんじゃない。
はっ!と、ほたるは自らの両手で自らの口を塞いだ。
小さい頃、父『源五郎(げんごろう)』にそう言われて育てられてきた2人だ
父の教えの刷り込みにより、ほたるはその“死”を直ぐに飲み込み
たがめは、そんなほたるの肩をギュッと抱きしめた。
「大丈夫、人間こんなナンセンスな事で死にゃしないわ」
2人の鋭い目付きは、原爆ドームをスルーして『らーめんバトル』会場へと向けられた。
お父さん…どうなっちゃってるの?…もう…
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
この奇妙な事態が、やがて死の劇場と化し
それは全て『黒猫』の、そう父『源五郎』の絡んだものだという現実を
やがて突きつけられる事も知らずの2人。
揺れのバロメーターの谷間を計って
ほたるとたがめは少しずつ会場入口ゲートへと近づいてゆく。
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
場内から漏れる轟音に共鳴してか
さっきからずっと広島市平和記念公園内外の桜の木々がざわめいている。
ザワ…ザワザワ…ザワワワ…と静かに
そして時に、グワッ!ザッワーーーッ!!!と荒くれて
まるで血肉を求めるケダモノの叫びの様なザワメキだ。
「すみません!なかに父が!
いや、あの、会場に入るにはどうすれば」
少しばかり慌てて、しどろもどろになりながら
ほたるは入口警備員に話しを切り出した。
「チケット
このイベントのチケットはどちらで買えば…」
「入れません」
「へ?」
「会場には、入れません」
「へ?」
「チケットも、売ってません」
「へ?」
突然、警備員にスパンと言葉を断ち切られ拍子抜けるほたる。
警備員は気味悪いくらい無機質な感じがした。
たがめが後を引き継いだ。
「わたしたち
東京からわざわざこのイベントへ参加しに広島へ来たの。
会場へ入りたいの。
お願い、入れて」
「無理です」
「父が、父が会場に」
「無理です」
警備員が胸元から何やら抜き出し
2人の瞳につきつけた。
これは!見慣れた
「警…察…手帳?」
「お引取りください」
警備員じゃない!?
よくよく見渡せば、会場を取り囲む者達全てが刑事だ!
このものものしさ…一体このイベントは!?
お父さん、何かとんでもない事に巻き込まれているんじゃ…。
ますます、桜のザワメキが増してきた。
そんな桜の森の中心の
蠢く人体の群れを、一瞬静寂に導く人物が
巨大スクリーンに映し出された。
“「ガッハッハッハッ!
うるさい!うるさい!
とっとと始めろ!
どうせお前ら、じきに“死ぬ”んじゃ!」”
聞き覚え満点の声が
信じられぬ単語を吐き散らし
会場からはっきり漏れ聞こえてきた!
「お、お父さん!?」「お、お父さん!?」
挑戦者がいっせいに麺を握った!
ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!
という歓声の轟音と共に
バトルが今、動き出す!
司会の十八番を犬山に奪われた『勝男』が
指で銅鑼を弾いて
悲しげにつぶやいた。
チーン…
「はじまりぃ~…」
♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪
街に夜鳴きの音(ね)が響く。
めけめけ~。
『らーめん放浪記』つづく。
(注)この物語はフィクションです。
写真。桜。
ザワワ…ザワザワ…ザワワワ…
ワワワワ…ワワワワ~…
「♪ワワワワ~ドゥワワワワ~
さくらぁ
胸のつぼみ開くわ
あなたへひらり舞い降りて
素敵な大人になるの
さくらぁ
お願いそっと受け止めて
少し背伸びしたわたしを
抱きしめてKISSして
Darling 今わたしはあなただけのもの
ドゥ~ワ~
……♪」
ザワワワ…ザワワワ…
ザワ…
「ニヤーーーッ!」
『らーめん放浪記』純情旅情編。
〈3-(48)・らーめん!〉
ケタタマシイ!
けたたましい魂の叫び!
その叫びは
まるで龍の様に
真っ直ぐ天へと昇ってゆく!
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
麺の王道らーめんの頂点を決めるイベント『らーめんバトル』会場が揺れていた!
その日、その時、気象庁の地震計は
広島のとある地点のみで震度7強を記録していた。
すぐさまそれは誤りである事が発表されたのだが、その誤り自体が誤りである事を
会場内外にいた人々だけは知っていた。
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
そう、確かに、かなりの縦揺れで揺れていたのだ。
揺れは、ドルビーサラウンドシステムが如く
波動が周囲に重低音の広がりを魅せていた。
そんな脅威の振動にもビクともしない原爆ドームを
『犬山(いぬやま)』の娘、『ほたる』と『たがめ』は見上げていた。
周辺の人達が皆、腰をぬかして尻餅をついたりはいつくばったりしている中
ほたるとたがめは、なんとか鉄柵にもたれかかる。
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
ズンズン、ズンズンと突き上げる振動。
この異様な状況を飲み込めぬまま
理解を超えた何かに漠然と怯える2人の瞳に飛び込んで来たモノが
仁王立ちした世界遺産の“それ”である。
2人には、何故か原爆ドームが笑っているように見えていた。
ドームの壁面に幾つも開いた窓の穴が、ケタケタと耳障りな笑い声を上げてパクパク蠢いている。
怖い!煩い!怖煩い!
2人は耳を塞いだ。
しかし、その信じ難き気味の悪い情報は
耳を塞げど開いた瞳からどんどんこちらへ入り込んで来る。
もう嫌!
あわてて2人は目を閉じた。
しかし、振動だけはどうする事も出来ない。
耳を塞ぎ目を閉じても
おっかない笑い声は地面と、そして鉄柵を伝わり
感触としてケタケタ~ケタケタ~と2人の身体へ入り込んで来る。
骨が“キシキシ”音をたててきしんだ。
いつしか“キシキシ”言うきしみ音が“ケタケタ”にすり変わっていた。
2人の身体が理解を超えた奇妙な状況に乗っ取られる!
ほたるが思わず叫んだ。
「死んじゃうーーーっ!!!」
何があろうと“死”なんて言葉を簡単に吐くもんじゃない。
はっ!と、ほたるは自らの両手で自らの口を塞いだ。
小さい頃、父『源五郎(げんごろう)』にそう言われて育てられてきた2人だ
父の教えの刷り込みにより、ほたるはその“死”を直ぐに飲み込み
たがめは、そんなほたるの肩をギュッと抱きしめた。
「大丈夫、人間こんなナンセンスな事で死にゃしないわ」
2人の鋭い目付きは、原爆ドームをスルーして『らーめんバトル』会場へと向けられた。
お父さん…どうなっちゃってるの?…もう…
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
この奇妙な事態が、やがて死の劇場と化し
それは全て『黒猫』の、そう父『源五郎』の絡んだものだという現実を
やがて突きつけられる事も知らずの2人。
揺れのバロメーターの谷間を計って
ほたるとたがめは少しずつ会場入口ゲートへと近づいてゆく。
「らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!らーめん!」
場内から漏れる轟音に共鳴してか
さっきからずっと広島市平和記念公園内外の桜の木々がざわめいている。
ザワ…ザワザワ…ザワワワ…と静かに
そして時に、グワッ!ザッワーーーッ!!!と荒くれて
まるで血肉を求めるケダモノの叫びの様なザワメキだ。
「すみません!なかに父が!
いや、あの、会場に入るにはどうすれば」
少しばかり慌てて、しどろもどろになりながら
ほたるは入口警備員に話しを切り出した。
「チケット
このイベントのチケットはどちらで買えば…」
「入れません」
「へ?」
「会場には、入れません」
「へ?」
「チケットも、売ってません」
「へ?」
突然、警備員にスパンと言葉を断ち切られ拍子抜けるほたる。
警備員は気味悪いくらい無機質な感じがした。
たがめが後を引き継いだ。
「わたしたち
東京からわざわざこのイベントへ参加しに広島へ来たの。
会場へ入りたいの。
お願い、入れて」
「無理です」
「父が、父が会場に」
「無理です」
警備員が胸元から何やら抜き出し
2人の瞳につきつけた。
これは!見慣れた
「警…察…手帳?」
「お引取りください」
警備員じゃない!?
よくよく見渡せば、会場を取り囲む者達全てが刑事だ!
このものものしさ…一体このイベントは!?
お父さん、何かとんでもない事に巻き込まれているんじゃ…。
ますます、桜のザワメキが増してきた。
そんな桜の森の中心の
蠢く人体の群れを、一瞬静寂に導く人物が
巨大スクリーンに映し出された。
“「ガッハッハッハッ!
うるさい!うるさい!
とっとと始めろ!
どうせお前ら、じきに“死ぬ”んじゃ!」”
聞き覚え満点の声が
信じられぬ単語を吐き散らし
会場からはっきり漏れ聞こえてきた!
「お、お父さん!?」「お、お父さん!?」
挑戦者がいっせいに麺を握った!
ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!
という歓声の轟音と共に
バトルが今、動き出す!
司会の十八番を犬山に奪われた『勝男』が
指で銅鑼を弾いて
悲しげにつぶやいた。
チーン…
「はじまりぃ~…」
♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪
街に夜鳴きの音(ね)が響く。
めけめけ~。
『らーめん放浪記』つづく。
(注)この物語はフィクションです。
写真。桜。
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