「大企業の内部留保」でさんざん雇用問題の議論を迷走させてくれた赤旗が、選挙前に
また妙な話を言いだしている。なんでも、日本の法人税はいろいろな隠れ優遇策があって
むしろ引き上げるべきなんだそうだ。
騙される学生がいてはいけないので簡単に解説しておこう。
仮に、ある会社が日本とアメリカの事業所で1億円ずつ稼いだとしよう。
日本で2億円を確定申告すると8千万円の法人税が発生するが、アメリカでも2500万円ほどの
法人税が発生する(法人税率をそれぞれ40、25%とする)。
このままだと明らかな二重課税なので、海外で支払った分は“外国税額控除”として
ここから差っ引くことができる。つまり、結果的に日本国に払う税額は5500万円だ。※
当然、海外展開している企業(つまり海外での売り上げの多い企業)ほど経常利益に対して
納める税の額は低くなっていく。
海外売上比率が7割と言われるソニーのような会社を引っ張り出して
「ほら見て!こいつは日本政府には12%しか払ってないのよ!」
というのは、なんというか、ほとんど会社ゴロのレベルである。
外国税額控除とは優遇でも何でもなく、2重課税を防ぐための当たり前の仕組みである。
というわけで、ソニーのようなレアケースだけでなく、一般的な大手企業も含めて決算書
から実際に計算した法人税等負担額/税金等調整前当期利益を比較するとどうなるか。
(%)
日本 :39.3
アメリカ :31.2
フランス :30.5
ドイツ :27.4
韓国 :23.2
シンガポール:13.7
研究開発税制のある電機で比較してみるとこうなる。※2
シャープ:36.8
キヤノン:34.8
サムスン:16.7
LG : 4.9
研究開発税制等の優遇税制を反映させると、「日本は企業を甘やかしている」どころか、
さらにアジア諸国との税率は拡大する。
日本の法人税はやはり、世界最高水準であり、最低10%は引き下げるべきだ。
面白いのは赤旗のロジックで、「税金の低い国で事業活動しているから総所得に対する
実効税率は抑制されている」(だから、下げる必要はない)と書いているが、逆だ。
「日本の税率が高いから、低い国に必要以上に事業が移転している」
と言うべきだ。
それから内部留保についても補足しておこう。
何度も述べてきたように、内部留保というのは設備投資などが中心で、それだけの現金預金
を貯め込んでいるわけではない。
赤旗は「製造業は有価証券を66兆も持っているじゃないか」と言っているが、だったら
150兆円以上ある製造業の流動負債についても言及すべきだろう。
ついでに言っておくと、有価証券への投資が増えたのは、日本国内が低金利なので金を
借りつつ、海外での利益はそのまま海外に投資したためだ。大手ならどこだってやっている
話である。
要するに、共産党の主張というのは単なるいちゃもんレベルであり、
「おたくの冷蔵庫に足ぶつけたから金払え」と言ってメーカーに電話かけて来る人々と
同じである。かつての社会科学は、いったいいつから会社ゴロになり下がったのか。
さて、世の中には貧困ビジネスという商売がある。生活保護者をタコ部屋に入れて支給額の
過半をピンハネするような悪質事業者のことだ。
とはいえ、上記のような生活保護ピンハネ業者にしても、弱者の手元にはとりあえず
「屋根つきの宿舎」というメリットは(多少なりとも)残されている。
一方、日本共産党を信じて付いて行った弱者の手には、何が残されただろうか。
「大企業は内部留保があるから、全員正規雇用が可能なんですよ。だから派遣は規制しましょうね」
こう言う主張を信じて、雨の中デモまでやった人達は、何かを手にしたのだろうか。
ありもしないモノがあるのだと言われ、言いように連れ回されたあげく、
むしろ問題解決 からは遠ざかっただけではないのか。
「法人税引き下げ反対、むしろ負担強化」という主張も同じだろう。
彼らの手に残されるのは(企業の雇用減による)失業だけだ。
貧困ビジネス度を「弱者の手元に残される便益の少なさ」で測るなら。
現在の日本共産党は、日本一の貧困ビジネスである。
※
実際の控除額には上限があるが、日本より税率の高い国はそうないので、ほぼ全額控除可能。
※2
上場企業対象03~06年会計年度平均・連結(「元気で豊かな日本を作る税制改革」経済産業調査会編)
また妙な話を言いだしている。なんでも、日本の法人税はいろいろな隠れ優遇策があって
むしろ引き上げるべきなんだそうだ。
騙される学生がいてはいけないので簡単に解説しておこう。
仮に、ある会社が日本とアメリカの事業所で1億円ずつ稼いだとしよう。
日本で2億円を確定申告すると8千万円の法人税が発生するが、アメリカでも2500万円ほどの
法人税が発生する(法人税率をそれぞれ40、25%とする)。
このままだと明らかな二重課税なので、海外で支払った分は“外国税額控除”として
ここから差っ引くことができる。つまり、結果的に日本国に払う税額は5500万円だ。※
当然、海外展開している企業(つまり海外での売り上げの多い企業)ほど経常利益に対して
納める税の額は低くなっていく。
海外売上比率が7割と言われるソニーのような会社を引っ張り出して
「ほら見て!こいつは日本政府には12%しか払ってないのよ!」
というのは、なんというか、ほとんど会社ゴロのレベルである。
外国税額控除とは優遇でも何でもなく、2重課税を防ぐための当たり前の仕組みである。
というわけで、ソニーのようなレアケースだけでなく、一般的な大手企業も含めて決算書
から実際に計算した法人税等負担額/税金等調整前当期利益を比較するとどうなるか。
(%)
日本 :39.3
アメリカ :31.2
フランス :30.5
ドイツ :27.4
韓国 :23.2
シンガポール:13.7
研究開発税制のある電機で比較してみるとこうなる。※2
シャープ:36.8
キヤノン:34.8
サムスン:16.7
LG : 4.9
研究開発税制等の優遇税制を反映させると、「日本は企業を甘やかしている」どころか、
さらにアジア諸国との税率は拡大する。
日本の法人税はやはり、世界最高水準であり、最低10%は引き下げるべきだ。
面白いのは赤旗のロジックで、「税金の低い国で事業活動しているから総所得に対する
実効税率は抑制されている」(だから、下げる必要はない)と書いているが、逆だ。
「日本の税率が高いから、低い国に必要以上に事業が移転している」
と言うべきだ。
それから内部留保についても補足しておこう。
何度も述べてきたように、内部留保というのは設備投資などが中心で、それだけの現金預金
を貯め込んでいるわけではない。
赤旗は「製造業は有価証券を66兆も持っているじゃないか」と言っているが、だったら
150兆円以上ある製造業の流動負債についても言及すべきだろう。
ついでに言っておくと、有価証券への投資が増えたのは、日本国内が低金利なので金を
借りつつ、海外での利益はそのまま海外に投資したためだ。大手ならどこだってやっている
話である。
要するに、共産党の主張というのは単なるいちゃもんレベルであり、
「おたくの冷蔵庫に足ぶつけたから金払え」と言ってメーカーに電話かけて来る人々と
同じである。かつての社会科学は、いったいいつから会社ゴロになり下がったのか。
さて、世の中には貧困ビジネスという商売がある。生活保護者をタコ部屋に入れて支給額の
過半をピンハネするような悪質事業者のことだ。
とはいえ、上記のような生活保護ピンハネ業者にしても、弱者の手元にはとりあえず
「屋根つきの宿舎」というメリットは(多少なりとも)残されている。
一方、日本共産党を信じて付いて行った弱者の手には、何が残されただろうか。
「大企業は内部留保があるから、全員正規雇用が可能なんですよ。だから派遣は規制しましょうね」
こう言う主張を信じて、雨の中デモまでやった人達は、何かを手にしたのだろうか。
ありもしないモノがあるのだと言われ、言いように連れ回されたあげく、
むしろ問題解決 からは遠ざかっただけではないのか。
「法人税引き下げ反対、むしろ負担強化」という主張も同じだろう。
彼らの手に残されるのは(企業の雇用減による)失業だけだ。
貧困ビジネス度を「弱者の手元に残される便益の少なさ」で測るなら。
現在の日本共産党は、日本一の貧困ビジネスである。
※
実際の控除額には上限があるが、日本より税率の高い国はそうないので、ほぼ全額控除可能。
※2
上場企業対象03~06年会計年度平均・連結(「元気で豊かな日本を作る税制改革」経済産業調査会編)
まあ、既存の新聞(朝日、毎日、読売)の報道するのとは違う視点や取り扱わない記事を参照にするってだけでも存在意義や意味は十分あるんじゃないかと。
特に宗教がらみの話題は広告収入減の続く既存新聞はまるで報道できていない。中でも統一教会がらみの報道なんて既存の新聞、TVが全然報道しないし・・・
統一協会の集団結婚 日本人女性7000人 韓国に
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-05-11/2010051114_01_1.html
統一協会、民主に接近 集団結婚参加者が選挙応援
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-01-05/2010010501_04_1.html
日経もそうですけどメディアの中にいて記事を作るのも人間。どんなものであっても人間のつくるものである限り一長一短あるのは仕方ないのではないかと。
貧困ビジネスがらみでも・・
貧困ビジネス「やすらぎの里」 生活保護費ピンハネ
年6200万円利益
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-06-16/2010061601_05_1.html
そんなに企業に余裕があるなら過剰雇用が600万人以上居るなんてデータは出ないと思いますが、共産党的に言うと「そんな捏造は財界の陰謀だ!」になるんでしょうね。
ネットでも既存の左翼の胡散臭さに
多くの人が気づき始め流動化支持が増えつつあるようです。
http://seiji.yahoo.co.jp/vote/result/201007010003/
今や企業そのもの自体が、どこに本社機能を置こうが、働いてる人の国籍がどこであろうが、そんなことは関係ない存在になっているのに、付いていけない人もたくさんいるのですね。
法人なんて国境を超えるもの。このまま行くと本当に日本は空っぽになりそうです。
法人も個人も人であるから、法人税が個人税より下回るのはおかしい。
そもそも法人は法人擬制の扱いを得ることで利益を得ているのだから、人として個人税と同じ税率で納税しないなら法人格を返上するべきなのだ。
自己の権利だけ求めて法の下の平等すら侵そうとする賎しい守銭奴は日本から出て行ったほうがいい
現実的に貧困ビジネス対策に 一番前向きに取り組んでいる政党はどこでしょうか?
貧困ビジネスに利用されそうな人は全員 自己責任ということ なんでしょうか?
6月24日の赤旗で、以下のように試算して、あちこちで数字を使っていますが、一国の政党として本当にはずかしい計算手法の誤りだと思います。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-06-24/2010062401_01_1.html
「この試算では、景気変動の影響を除くため各社の決算データから7年間の税引前当期純利益と法人3税の合計額で実際の負担率を計算しました。(赤旗による)」
これで計算すれば、海外課税額が多ければ(海外事業活動が多ければ)日本でその分の税額控除されて、資産した比率が下がる計算になり、ソニーが12.9%の法人税負担率など、いわゆる実効税率の概念とかけ離れているのは明白です。
昔からこういう数字のレトリックを使う政党ですが、誤りを認めるのであれば全く問題ありませんが、この数字で参議院選挙を戦うなど、国民全体をだます実質的に詐欺に近い行為であり、許されることではありません。
こういう考えって合理主義からあまりにかけ離れていて、前近代的な暴力的な言論だと思います。共産主義を真剣に勉強した世代としては、現在の日本共産党のヒステリックな非合理的行動は本当に情けなく思っています。
前々回の保守批判の次は、極左批判ときましたね、城さん。まったく、日本にはまともな政治評論家、政党がないのでは、と思ってしまいます。
もっとも、日本は「官主政治」ですから、政党や政治家は単なるお飾りにすぎないと思いますが。
goo のニュースで、国際競争力ランキングが発表されていましたね。ついに日本は、韓国、中国に追い抜かれ、順位が下がりました。日本は、17位から27位に成り下がり、このままいくと先進国というよりも中進国になるのでは、と思ってしまいます。詳しくは、下部のアドレスからアクセスしてみて頂きたいと思います。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/snk20100705028.html
ただ、記事にもあるように、生産コスト(また人件費もそうですが)が20~30%ほど日本は高いこともあり、アジア諸国との戦いに苦しむことになります。また、城さんもご指摘されていますが、法人税率の高さが調査国55カ国の中で最悪とのことです。
やはり、政治レベルで思い切った改革が必要だと思いますし、実際、先の記事にもそう書いてありますね。また今の日本に必要なのは、赤旗の「世界同時革命」ではなく、「規制撤廃」と「世代闘争」だと思います。くだらなく、合理性に欠ける規制が日本国内でのビジネス・チャンスを奪い、老人たちが若者の社会進出や人材登用のチャンスを奪っています。
そう考えると、いくら給料が恐ろしいほど安くても、今、私がいるフィリピンの方が、はるかにビジネス・チャンスがあると思ってしまいますね。少なくとも、日本にいた時のような悲壮感と閉塞感はないです。
もっとも今の日本は、シンガポール、香港、もっといえばマレーシアにも国際産業競争力で負けているので、フィリピンにも負けたら、かなり危険水域となりますが。。。。
池上さんの解説はわかりやすくて素晴らしいのですが、昨日の内部留保の件だけは論外でした。誤った解説は何らかの形で訂正してもらいたいです。
池上さんらしくなく共産党の政治宣伝に洗脳されちゃったのでしょうか?
ならなぜ大金持ちのカルロスゴーンは、日本から出て行かないのですか?
法人税にしても相続税にしても、最高税率で税金払ってるお人よしがいるのですか?
「法人税の話にはこのような方角で責めるべし!!これなら相手は守勢に回るぞよ。」
共産党が言っても「共産党らしいお言葉ですな。」と影響力少ないんですけど、「指南書」をキャッチした報道機関の製作者がお金タップリかけてドキュメンタリー製作したりすると、我々法人税の知識のない凡人には結構響いたりしますね。