城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

アメリカの民主主義 20.11.14

2020-11-14 19:41:05 | 面白い本はないか
 アメリカという国ははたから見ていると本当に訳の分からない国である。かつてアメリカの民主主義を草の根で支えていたのは分厚い中間階級、ミドルクラスであったと言われる。しかし、グローバル化の影響もあり、その中間階級が減り、分断ばかりが目立つ国となってしまった。ここで民主主義についての格言を見ておこう。
特に有名なのがチャーチル「民主主義は最悪の形態らしい。ただし、これまでに試された全ての形態を別にすればの話であるが。」(わかりにくいよね!!)。次に日本の首相吉田茂「新憲法によって、いわゆる「民主政治が」が確立されたが、現在の政治の形態が期待された如きものであるや否や。真に民主政治が確立されるまでは、国民は深き注意を持って常に政治、政局を監視せねばならぬ。」。

 本日の城台山

 まずは、宇野重規著「民主主義とは何か」(講談社現代新書)から。民主主義はいわば「瀕死」の状態にあると言える。しかし、2500年前にギリシャに生まれた民主主義は、今までつねに試練にさらされ、苦悶し、それでも死なずにきたというのが現実に近い。今日の民主主義の危機を四つのレベルで考えると、①ポピュリズムの台頭、②独裁的指導者の増加、③第4次産業革命とも呼ばれる技術革新、④コロナ危機がある。①はブレグジットそしてトランプの登場に代表される政治的現象、いかしこれには既成政治や既成エリートに対する大衆の異議の申し立ての側面もあることに注意する必要がある。②の方は、中国、ロシア、北朝鮮、フィリピン、トルコ等々の国で独裁的な指導者が登場している。かつて、世界の国々は、遅かれ早かれ、経済が発展すればいつかは民主化するという「常識」があった。しかし、中国などの経済的成長は、欧米的な民主主義の正統性に対して懐疑を投げかける一因ともなっている。③は、AIなどが人間を支配してもおかしくない、そこまでいかないにしてもビッグデータとアルゴリズムを保有する一部の有力者による「デジタル専制主義」が拡大する一方、その他の人は「無用階級」へと転落する(デジタルデバイドとも言われる格差がますます拡大する)。④はコロナの発生により、個人の自由や権利の制限、強い指導者が求められる(この緊急事態に適切に対応するには独裁的な指導者の方が良いのではないかという意見も出てくる)。

 一心寺 カエデが少し色づいてきた

 1830年代のアメリカを視察したフランス人のトクビルが書いた「アメリカの民主主義」。そこで彼は東部の町の「タウンシップ」と呼ばれる基礎自治体について、いずれの市民も地域の諸問題を良く理解し、政治的見識においてみるべきものがある。さらに政府の力が弱い分、学校、道路、病院などについても、自分たちの力でお金を集め、あるいはそのための結社を設立して事業を進めていく姿に民主主義の可能性を見いだした。おじさんが思うのに、果たしてこの良き伝統は現在の現在の4年に一回の馬鹿騒ぎ、大統領選挙の中にも見いだすことができるのであろうか。確かに、ボランティアで参加する住民は多く、民主主義の重要な要素で日本では低調な「参加」が見られることは否定できないが、節度というものが欠けている(それを煽る大統領が悪いのだが)。

 城台山直下

 続いて、古矢旬著「グローバル時代のアメリカ」から。アメリカの金権政治ぶりについて、1981年から2002年にいたる間の1779件の連邦政策過程に当たった結果、判明したのは、これらの諸政策形成に圧倒的大企業な影響力を及ぼしたのは、保守的な企業集団、コーク財団など富も所得も極めて高い経済エリートと大企業利益を代弁する圧力団体であった。(チェンジを掲げたオバマ政権が期待外れの成果しか生み出さなかったのは、利益団体をバックとする議会との妥協の結果である。低所得者に対する医療保険も結局薬剤メーカー等の利益を守るように決着した)議会議員の大半の時間とエネルギーはロビイストや献金者との面会や会食に費やされる。トランプ以前にも、政治的な窮境を脱するために虚言を弄した大統領や政治家は無数にいたであろう。しかし、自らの虚言を隠蔽するために、事実とはそれぞれの立場で好き勝手に選べるものであると言い立てた大統領は、おそらくいないであろう。民主主義が機能するための必須の条件となる「事実に基づく自由な討論」の機会を一再ならず奪ってきた。

 ☆今日の中日新聞によると、宇野重規氏(東大教授)は18年もの間、学術会議の委員になれないと書いてあった。同氏は、秘密保護法案や安保関連法案にかなり主導的に反対してきた。政府にとって都合の悪い学者は認めないということらしい(もちろん政府はその理由を明らかにしていない)。しかし、同氏の本を何冊か読んだが極めて真っ当な先生だと思うが。やはり、この国では、政府とは違った意見を言う者を排除する、すなわち少数意見を尊重しない国に成りはてているというなによりの証拠であろう。
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