
左は 基板上の半導体。 右はチップ切り出し前のウェハーですが、デモ用です。
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かつて 半導体は „産業の米“ といわれてきました。 „日本の産業の中枢を担う物“ という意味ですが、最近は軍用兵器の要の1つにもなってきています。
ロシアが侵攻しているウクライナでの戦争に関して 半導体絡みの部分を拾うと __
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『ロシア軍 “白物家電で戦う” ?』(11月1日 テレ朝NEWS ※1) __ 家電の半導体などの部品が、戦車などロシアの軍事装備に転用されている可能性が高い …
『ロシア兵は戦地で家電漁り兵器補修』(5月14日 日刊ゲンダイ ※2) __ ロシア軍の装備に食洗機や冷蔵庫から取り出した半導体が使われている。 ロシアは半導体の大部分を輸入に頼って ほとんど自国生産しておらず …
『露の最新ミサイル解体すると 60年前の電子部品が使われていた』(4月25日 Korea Economics ※3) __ ロシアの1999年から2013年まで生産されたミサイル内部の電子部品・誘導装置は1960年から1970年にかけて開発されたもので …
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軍用機器向けに開発された高価なテクノロジー (GPS やインターネット) が、段々と価格が下がってきて民生家電品に使われるのはよくある事ですが、ロシア軍は逆に家電品から半導体を取り出して 軍用機器に転用しているようです。
半世紀前の1976年 ソ連現役将校が、MiG-25 迎撃戦闘機で函館空港に強行着陸し、亡命を求めた事件があり、“真空管などを多用した電子機器“ を搭載していた戦闘機も話題になりました。
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日本製の部品は高性能かつ高信頼で世界的に有名です。 民生用として日本企業が輸出しても、他国ではその優秀な性能部品を軍用機器に流用しようと __
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『ロシア軍ドローンから日本製部品、次々と』(6月2日 毎日新聞 ※4) __ ロシア軍の偵察ドローンを解体するウクライナ軍兵士が、日本製とみられる一眼レフカメラを取り出し … ドローンのエンジンは、大型無線操縦装置のエンジンを開発している斎藤製作所の製品だった。
『ロシア兵器 部品の多くが外国製 日本企業は2番目に多い 英調査』(8月12日 NHK ※5)
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短銃や手榴弾などの単純な兵器は別として、半導体を全く採用しない 複雑な軍用機器は考えられません。 高度な性能を持つ部品や半導体は軍用機器の性能・信頼性を一段と高めますから、使うのが自然です。
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特に 最先端半導体を今現在 製造しているのは、先ず 台湾であり、韓国です。 米国ではありません。 かつては米国だったのですが、それが徐々に日本に移り、さらに韓国に、そして台湾が最先端半導体の製造国となっているのです。
一方で 従来から台湾を自国の一部と主張する中国が、台湾との統一実現のために軍事力の行使を排除しないと堂々と発言するようになりました。 もしこれが実現すると、台湾の最先端半導体は米国のコントロールが及ばない事態となる可能性が出てきたのです。
さらに 韓国は米国と同盟関係にありますが、これが強固な同盟かというと、そうともいえない不確かなものです。 というのも 韓国は米中二股外交を平気でする国だからで、いつなんどき 中国の指示で米国向け最先端半導体の出荷を制限しないともいい切れません。 また 北朝鮮が攻撃して、韓国内半導体工場を制圧しないともいえないのです。
米国としては 国内で最先端半導体を安定的に製造できれば、何ら懸念する必要はないのですが、今 最先端半導体を国内で製造できてないのが現状です。
そうなった理由は2つあり __ 1つは、多くの国内半導体企業は製造を止めて 台湾・韓国に製造をまかせるようになったこと。 もう1つは、長年 最先端半導体を製造していたトップ企業のインテル社が台湾・韓国企業に遅れを取り、ここ数年追い付けない状態が続いていることです。
インテルが追いつけないのは、優秀な人材が製造部門に集まらないからだともいわれますが、アイディアだけで一攫千金できるアメリカン・ドリームがあると そうかも とも。
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すると 台湾有事・韓国有事が発生した場合、 安全保障上 最先端半導体の製造で頼れるのは、欧州か日本の半導体製造となるのは素人の私も思いつきます。
かつては 90年代に 台頭する日本の半導体製造を叩いて、その脅威を取り除いた米国ですが、安全保障の観点から見直した結果、再び日本を頼り始めたといえるのかも知れません (日本としては腹立たしい面もありますが、超大国の前では大きな声も出せず …)。
もちろん 米国内で最先端半導体を確保できれば、それに越した事はありませんから、米国は台湾・韓国半導体メーカーにも米国内での工場建設を促し、数年以内に稼働する予定となっています。
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『最先端半導体、米に工場 TSMC …』(11月22日 日経新聞 ※6) __ 120億ドルを投じる海外初の先端工場で、2024年から 5nm 半導体を量産する。 3nm 品工場建設も検討 …
『韓国サムスン „米国に巨大半導体工場“ 国際政治の風圧』(3月18日 毎日新聞 ※7) __ 170億ドルをかけて米テキサス州に最先端の半導体工場を建設、ファウンドリー専用とし、24年下半期の稼働を目指す。 3nm の次世代品をを生産すると …
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このように 複数の手を打って、安全保障を確保しよう (=中国の脅威を取り除こう) という米国の意志を随所に感じますね。
今の日本の半導体工場は数世代前の技術の 40nm 台のロジック半導体しか製造していませんが (フラッシュメモリ分野では 14nm を製造)、九州では 台湾 TSMC を誘致して 20nm 台の半導体製造を目指す工場を建設しています。 また 5年後に自前で 2nm 半導体を製造しようという 新たな動きも見られます。
最先端半導体を製造できる製造装置を購入する費用があり、それを据えつけても最先端半導体を製造できるとは限りません。 インテルの苦闘はそれを物語っています。 日本が本気でやれば 最先端半導体を製造できるようになるかも知れません。 但し その売り先目標をどこに設定するか、これが大きな課題です … 報道では これが明確になってないように感じます。
今日はここまでです。