大島の空の下で

伊豆大島在住の中年のおっさんのブログです.日々の出来事を綴っていきます.一部は mixiとマルチポスティングしています.

堤智惠子ライブ in 大島

2009-02-16 23:55:22 | Weblog
大島でプロミュージシャンがライブを行うのにはいくつかの問題が伴います.



○事の性質上開催時間帯が夕刻になるのでどうしても島内に一泊
 以上しなければならないこと.
○都内が活動拠点のユニットの場合,通常の交通費に加えてかなり
 高額(往復10k円以上)な船賃が余計にかかること.
○楽器の運搬に自家用車を使用できない.従って手持ちで運べる
 もの以外は現地で用意したものを,不見転(みずてん)で使用し
 なければならないこと.(ドラムセット・ウッドベース・アンプ類)
○交通が天候に左右されやすく渡航できないリスクが常に伴う.
○島民にミュージックチャージを負担して音楽を聴く習慣が
 ほとんど無いため集客に苦労する.

等々といった事です.
これらの累々たる困難を物ともせず毎年上質のジャズバンドを呼び,島内でプロミュージシャンの音楽を聞く機会を設けてくれるのが「ミュージックカフェ らイヴ」です. 2月14日はその恒例のバレンタインライブでした.今年のミュージシャンはサックス奏者の堤智惠子+3.ワタシの好みとしては女性ジャズミュージシャンといえば美人ボーカルが頭に浮かぶのですが,今宵はテクニックで見せる熟女サックス奏者. ポップスをジャズアレンジし聞きなれたメロディを緩急自在のパッセージでつなぐ職人芸とステージ慣れした明るいMCで楽しませてくれました. チョイト残念だったのはワタシの大好きなサックスの名曲「MY ONE AND ONLY LOVE」が演目に無かったことです. 仕方ないのでこの曲だけは戻ってから自宅のオーディオで聞きました. 「ミュージックカフェ らイヴ」のオーナーnanaさん来年も楽しいライブをお願いしま~す(^_^)v

ポトスライムの舟

2009-02-14 23:31:43 | Weblog
今期の芥川賞受賞作です.
 "ポトスライム"ってなに…? はさておき.ストーリーは高学歴を持ちながら不本意な パート(後に契約)の低賃金労働で生活を支える未婚女性のつましい日々を綴ったもの. まさに今時のお話です.もっともこの作品が書かれたのは昨秋からの壊滅的な雇用状況が生ずる前と思われ現実をなぞったような破滅的な展開とはなっていません. 不全感に満ちた日常から逃れる手段として始めた世界一周ツアーのための貯金を縦糸に友人・その娘・母親・同僚といったほとんど女性のみの登場人物たちとの関係性を横糸として書ききった,いかにも芥川賞受賞作らしい小説です. 昨年末の派遣村の騒動をテレビで見ていてフト疑問に感じたのは画面に映る人々のほとんどが男性であることです.派遣・契約・パートと呼び方は異なりますが,この御時勢で職を失った方は女性にも多くいたと思われるのにです.むしろ今般話題になる遥か以前から女性のパート労働力は本邦の雇用の調整弁として機能してきたはずです. その答えの一部が見つかった気がしました. この物語の主人公ナガセは契約社員ですが路頭に迷ったわけではありません.会社をやめ期するものを抱えて転がり込んだうえ数ヶ月の居候をしていった友人ヨシカや子連れで家を飛び出してきたりつ子を何ヶ月も居させるとゆう住居を提供する側です. 男だったら見栄と気がねで,できかねる依存を躊躇なくする友人に対して自宅に余裕があるというだけでこれまた躊躇なく答える融通の利く生活感覚はタブン女性特有のものだと思います. これに近い形で路上生活を免れている女性は現実にかなりいるのではないでしょうか.就職氷河期に社会に出て現在も満たされない状況のまま女性としての盛りを通り過ぎようする日々がリアルさをもって描かれていると思いました.
写真は物語中に希望のメタファとして登場する観葉植物 「ポトスライム」です.

LIVE INN ROSA(池袋)2/10

2009-02-13 01:21:34 | Weblog
久しぶりにライブハウスで音の洪水に浸かってきました.コンクリート打ちっぱなしの壁がベースとドラムの振動でビリビリするという極強の音圧に身をさらしていると一瞬滝に打たれる修行僧のような気分になります. J-POPとはいうもののデスメタル系のボーカルは歌詞が聞き取れないのを通り越して何語かさえも不明. 五十路のオッサンとしてはその辺にツッコミたい気持ちもあるのですが,それを抑えて彼らの発するエネルギーを浴びる快感に意識を集中します.大音量のロックでは男性ボーカルの音域が楽器とほぼカブルため半ばやむをえないコトなのかもしれません.
お目当てのバンドはトリの「水面下ノ空」.
女性ボーカルのマコちゃんはいわゆる萌え系の発声なので歌詞が他の出演者と比べ際立って聞き取りやすいです.かといってけっして色物にはならず.観客に豊かな表現力で歌のニュアンスを伝えています.
ドラムスのHIKARIはホントにうまくなったと思いました.初めて観た頃の勢い先行からテクを一つひとつ積み上げる時期を経て,確かな技術とパワーで完成したドラミングを見せるようになりました. 一人のアーティストを定点観測的に見ていると得られるこんな発見がライブ通いの醍醐味かもしれません.
キーボードのkatsumiはいつも確かなテクニックで二人の女性アーティストを差支えています.よく着ている白系のシャツ一枚のステージ衣装が中性的な雰囲気で曲の持つ世界を邪魔していないことにセンスを感じます. 今回は初めて彼のMCを聞きました.事前打ち合わせが無かったようですが正確な告知とフレンドリーなしゃべりを両立することはなかなか難しい. 伝えるということについては打ち込みと同じように手間と工夫が必要と感じました.

届きました.

2009-02-07 10:29:30 | Weblog
前々回の日記で触れた友人から荷物が届きました.
3個口のかなりのカサで送られてきた中身は 真空管が 115本 図書が約40冊でした.
真空管はテレビ球が目立ちましたが 6D6・6V6・6E5・6BQ5・6BA6 等々の使い方がすぐ思い浮かぶ球も30本以上ありました.12本足のコンパクトロンをはじめとする残りの球は手持ちの雑球と一緒に保管することにしました.  問題は15kgを超える重さの図書類です.友人が某公立大学の電気工学科にいた頃のものです. ワタシは専門学校卒ですので大学レベルの電気屋はどの程度のことをやるのかに興味があって処分寸前だった教科書類を貰い受けたわけです. 電磁気学関係だけで5冊ありました.過渡現象論が2冊 ,フーリエ解析やラプラス変換といった数学関係3冊. これらは各種現象を定量的に捕らえるための基本的な道具です. 他はお約束の電気・電子回路関係と「電気」屋らしく電動機や発電工学,中には原子力工学の文字もありました.表題が重複する本は基本学問分野なので内容はどれもほぼ同じです.担当教授ごとに違う教科書を指定されるので何冊にもなってしまうとのことでした.そんなものかと思いましたが学生にとってはかなりの高コスト構造です.
これらをざっと見て感じたのは大学課程の電気屋は数学から逃れることはできないというコト. 専門学校は即戦力養成ですので,数学は電気特有の初歩的なものをさらうだけです.授業は数理解析を伴わない実験による定性的な理解がメインです.無線技術士受験のためにいくらか余計にやった思い出はありますが,しょせん既出問題の丸暗記の延長が実態です. 微分方程式の羅列を眺めていたらふと 「一からやってみようかなぁ…」という思いがよぎりましたが 「イヤイヤ」と頭を振って思い直しました.五十路に入って残り時間が限られてきた人生ですので,達成感を得るのに時間のかかることに新たに手を出すことは慎重になるべきです. これからもサンデーエンジニアとして真空管で遊ぶことにしましょう. 
これらの時を経ても内容の変わらない本に混じって 8080を主体とする4冊のマイコン (パソコンではない) 入門書がありました. 面白く読めそうですが今となっては技術図書としてのは価値はほとんどありません. 学問と技術の違いでしょうか.

「敵対水域」を読んで

2009-02-02 00:02:09 | Weblog
 ワタシにとって潜水艦といえば米国貸与の中古ガトー級が活躍する「サブマリン707」が原点.これに夢中になったのが小学校低学年の頃.トム・クランシーの「レッドオクトーバーを追え!」は20代の終わり.現在は都内出張からの帰途,横須賀沖でしばしばセイルを見ることがあります.何冊かの読み物で仕入れた付け焼刃情報ですがメカ好きオノコとしては雑談のネタになる程度のことは知っているつもりです.この本はそのうち読もうと思い入手したものの起伏に乏しい事故ドキュメントのような気がして何年もの間ツンドク状態だったものです.
 主題であるソ連の戦略ミサイル潜水艦K-219の事故は1986年10月に発生しています.ワタシにとっては11月に控えた故郷大島への転勤の準備中の出来事でした.緊急浮上のためセイルに装備された潜舵がほとんど垂直になった写真がテレビで報じられビックリしたものです.当時「レッドオクトーバー」を読んでからいくらも経たない時期だったので事の重大さはある程度理解ができました.
 今年は少し身の回りを整理したいウィルがあったので場所をとるハードカバー本はさっさと読んで処分するつもりで昨夜遅くから読み始めました.読了後すぐに感じた事は心が痛い,そしてもっと早く読めばよかったです.
 数々のエピソードが緻密な構成で配置されている上,現代の武人たちの矜持や世界の軍事状況を描きながら底流にはソ連の軍人たちの持つ体制に対する諦観があるという,ドキュメンタリーとは思えない読ませる作品です.原子炉の緊急停止機構が破損し弱冠21歳の一水兵が自らの命と引き換えに原子炉のメルトダウンを防ぐくだりや,死刑か長期間の重労働という刑を覚悟の上でモスクワからの冷酷な命令に逆らい部下たちの命を守った艦長の行動などはまるでお約束通りに書かれた軍事小説のようです.米ロとも空中発射やICBMによる核攻撃手段は大幅に削減されたようですが大陸間弾道弾と遜色ない射程をもつに至ったSLBMは自国付近の海域から発射可能となったため現在も隠然たる核抑止力として機能しているのではないかと思います.
 現在米国の戦略ミサイル原潜の一部は対ゲリラ戦用に大改造されているようです.海底に張り巡らされたSOSUSマイク群もクジラの生態観察などに流用されているともどこかで読んだことがあります.でも地上から全ての核がなくなる日はワタシの寿命のあるうちにはこないと思います.この事故の14年後にはバレンツ海で「クルスク」が魚雷の爆発事故を起し乗組員全員が死亡しています.ホント人間ってなかなか反省しない生き物です.

「敵対水域」
1998 文芸春秋
ピーター ハクソーゼン, R.アラン ホワイト, イーゴリ クルジン, Peter Huchthausen, R.Alan White, Igor Kurdin, 三宅 真理