大島の空の下で

伊豆大島在住の中年のおっさんのブログです.日々の出来事を綴っていきます.一部は mixiとマルチポスティングしています.

「苦役列車」を読んで

2011-02-19 22:27:54 | Weblog
読み始める前に題名から連想したのは内田百間の阿房列車ですがあちらは元祖乗り鉄の鉄道紀行.この作品の読後に連想したのはそれとはまったく別なおもむきの小説「蟹工船」でした.といっても内容は資本主義を糾弾するプロレタリア文学ではなく,やむない経緯により肉体労働に従事したかつての記憶を私小説という形式で著した一種の青春文学でした.
主人公の貫多が家庭環境や自身の性格から来る負のスパイラルから抜け出られず不本意な日々を悶々と過ごす様を悲しいくらいリアルに描いています.
かつて吉行淳之介の私小説的な作品を読み漁った記憶がありますが,この作品の自分のさらけ出し方はそれらとは桁違いで受賞者インタビューのサブタイトルには「自分の恥をさらけ出して書く」の言葉がみられます.ワタシ自身貫多と同じ三畳一間のアパートに住みながらパートタイム工員で日々の糧を得ていた経験があるので不如意な日々の描写には既視感があります.主人公と異なるのは学校卒業後には別の生活があるはずという希望があったことで,おかげでどうにかひねくれずに社会に出ることができたようです.先に読んだ同時受賞作品の「きことわ」と合わせて読むことで小説のあらわせる世界観の多様さを改めて感じさせてくれる作品だと思いました.

「苦役列車」西村賢太作
平成22年度下期芥川賞作品

「きことわ」を読んで

2011-02-14 21:41:38 | Weblog
朝吹真理子さんの今期芥川受賞作の題名です.キレイなおねいさんの受賞は読む意欲がわくので結構なことだと思います.いやホントに.
別荘に滞在する8歳の貴子(きこ)とその唯一の遊び相手だった15歳の別荘管理人の娘永遠子(とわこ)のリリカルとも思える触れ合いと,それぞれの人生を歩んだ25年後の再会の様子を夢とも回想ともつかぬ語りで描いた作品です.男性作家なら性愛に関するエピソードを入れたくなるシチュエーションですがそれらしき場面は貴子と永遠子の母がそれぞれに経験した過去の不倫がさらりと明かされる箇所程度です.女性はリアリストなので,妄想を膨らませることなく夢うつつを表現できるのかもしれません.
物語りのキールにあるのは作者の受賞の言葉にもある時間間隔の不思議さではないかと思います.深読みせず,過去と現在をたゆたう心地よい感じを味わえば良いのではないかと感じました.

今期もう一つの受賞作「苦役列車」の感想は後日UPしたいと思います.

ライブに行ってきました

2011-02-14 00:52:54 | Weblog
伊豆大島元町にあるカフェ「らイヴ」で恒例のバレンタインライブに行ってきました.ちょっと残念なのは会場が自宅から10kmほどの地にあるため自家用車で出向かなければならないことで毎度の事ながらノンアルコールでの観賞となります.30平米ほどのフロアは約40名のお客さんで超満員,場内には防犯協会の会合でいつもお世話になる桜田商事のPMや愚息の小中時代の先生たちもチラホラ,あいさつもそこそこにピアノトリオプラス女性ヴォーカルによるスタンダード主体の楽しい2時間半を過ごしてきました.鄙で生のジャズにひたれるだけでも幸せなことと思っていますので,営業度外視で毎年ライブ開催に尽力するオーナーのナナさんに感謝しつつ2200に会場を後にしました.水割りでのどを湿しながらの観賞は上京の折りの楽しみにとって置くことにします.

収穫

2011-02-05 23:23:43 | Weblog
今日はヤマから柑橘3種を採ってきました.ヤマというのは主に換金耕作以外の用途で使用される農地の当地での呼び方です.別に登山をしてきたわけではありません.父の残したヤマは数アールの小さな面積ですが枇杷・プラム・白桃といった果樹や茶・ツバキの園芸種などその時々に興味を持った雑多な品種の木々が植わっています. 今日収穫したのは 夏みかん・はっさく・ダイダイです.それぞれ1・2本の成木があるだけですが食べきれないほどの量がとれます.そのまま食べてもよいのですが,施肥もせず放置状態なのでちょっと酸っぱすぎます.そこで例年どおり家人が自家製ジャムやマーマレードに加工します.処理が終わるまで拙宅のリビング兼DKは作りかけの入ったボールや大量のビンで身の置き所に苦労することになります.