大島の空の下で

伊豆大島在住の中年のおっさんのブログです.日々の出来事を綴っていきます.一部は mixiとマルチポスティングしています.

ポトスライムの舟

2009-02-14 23:31:43 | Weblog
今期の芥川賞受賞作です.
 "ポトスライム"ってなに…? はさておき.ストーリーは高学歴を持ちながら不本意な パート(後に契約)の低賃金労働で生活を支える未婚女性のつましい日々を綴ったもの. まさに今時のお話です.もっともこの作品が書かれたのは昨秋からの壊滅的な雇用状況が生ずる前と思われ現実をなぞったような破滅的な展開とはなっていません. 不全感に満ちた日常から逃れる手段として始めた世界一周ツアーのための貯金を縦糸に友人・その娘・母親・同僚といったほとんど女性のみの登場人物たちとの関係性を横糸として書ききった,いかにも芥川賞受賞作らしい小説です. 昨年末の派遣村の騒動をテレビで見ていてフト疑問に感じたのは画面に映る人々のほとんどが男性であることです.派遣・契約・パートと呼び方は異なりますが,この御時勢で職を失った方は女性にも多くいたと思われるのにです.むしろ今般話題になる遥か以前から女性のパート労働力は本邦の雇用の調整弁として機能してきたはずです. その答えの一部が見つかった気がしました. この物語の主人公ナガセは契約社員ですが路頭に迷ったわけではありません.会社をやめ期するものを抱えて転がり込んだうえ数ヶ月の居候をしていった友人ヨシカや子連れで家を飛び出してきたりつ子を何ヶ月も居させるとゆう住居を提供する側です. 男だったら見栄と気がねで,できかねる依存を躊躇なくする友人に対して自宅に余裕があるというだけでこれまた躊躇なく答える融通の利く生活感覚はタブン女性特有のものだと思います. これに近い形で路上生活を免れている女性は現実にかなりいるのではないでしょうか.就職氷河期に社会に出て現在も満たされない状況のまま女性としての盛りを通り過ぎようする日々がリアルさをもって描かれていると思いました.
写真は物語中に希望のメタファとして登場する観葉植物 「ポトスライム」です.

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