*『リンゴが腐るまで』著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。55回目の紹介
『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-
著者 笹子美奈子
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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介
あとがき
(前回からの続き)
どこまで本当に近いところまで話してくれたのだろうか。取材して、常にそう思いました。もちろん、通常の取材でもそれはあります。しかし、今回の取材は、通常の取材とは比較にならないぐらい、その問題が深かったです。だから、取材を終えた今なお、わからないことの方が多いです。
ただ、自分なりに思うところもあります。
本書では、賠償金にまつわる問題を取り上げました。それは、賠償金が被災者間の不公平を生み出し、地域の分断につながり、復興の大きな足かせになっているからですが、東京で暮らす人々の関心事でもあるように思われました。
今回の原発事故では、とりわけお金の問題がよくクローズアップされました。東電の被災者への賠償金、中間貯蔵施設建設にあたっての交付金、環境大臣による金目発言など、お金に関する話題への世の関心は高かったように感じました。
「結局、お金の問題なんでしょ」。そう思っている人も多いでしょう。霞が関の官僚の中にも、そんな風に考えている人が多いように思いました。
でも、「お金であり、お金でない」。それが私の思うところです。
お金が被災者の生活再建にとって最も重要な問題であることは本書で指摘しました。お金がなければ復興はできません。移住もできません。放射線リスクを減らすこともできません。お金の問題抜きに、この原発事故の被災地について語ることはできません。
しかし、お金だけではない側面もあります。
南相馬市で営農再開の問題を取材した時のことです。
※「あとがき」は次回に続く
2016/9/26(月)22:00に投稿予定です。
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