*『リンゴが腐るまで』著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。43回目の紹介
『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-
著者 笹子美奈子
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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介
第3章 復興が進まないワケ
官庁不在
宮城、岩手県に比べ、福島県の復興事業は大きく遅れている。除染の遅れが一因であることは明らかだが、それ以外にも原因はある。あらゆる復興事業はほとんどの場合、国の交付金によってまかなわれる。国の交付金として認定されるためには、国に提出する資料を作らなければならない。
この書類作成作業は、人口わずか1万人足らずの自治体の職員にとって大きな負担となっている。地震や津波による被害復旧のためのインフラ事業などは、段取り、フォーマットなど、ある程度形式に沿って、進めていけばよい。
だが、原発災害によいては、全く前例のないところから始めなければならないため、時間がかかるという。
たとえば、ネズミの駆除だ。避難指示区域の住宅は数年以上も人が住まないまま放置されているため、ねずみに荒らされて痛んでいる。住民からなんとかしてほしいという要望が多く寄せられるため、自治体は国に交付金の申請を求めるが、ネズミの駆除のために使える交付金など、過去に前例がない。
このほか、住民が一時帰宅に使用する仮設トイレの設置、飲用水確保のための井戸の採掘など、これまでの災害復旧事業で行われたことのない事業が次々と必要になってくる。こうした事業は、スキーム作りを一から始めなければならない。
※「第3章 復興が進まないワケ「官庁不在」」は次回に続く
2016/8/31(水)22:00に投稿予定です。
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