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原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~病める自治体~> ※43回目の紹介

2016-08-30 22:25:43 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。43回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

 官庁不在

 宮城、岩手県に比べ、福島県の復興事業は大きく遅れている。除染の遅れが一因であることは明らかだが、それ以外にも原因はある。あらゆる復興事業はほとんどの場合、国の交付金によってまかなわれる。国の交付金として認定されるためには、国に提出する資料を作らなければならない。

 この書類作成作業は、人口わずか1万人足らずの自治体の職員にとって大きな負担となっている。地震や津波による被害復旧のためのインフラ事業などは、段取り、フォーマットなど、ある程度形式に沿って、進めていけばよい。

 だが、原発災害によいては、全く前例のないところから始めなければならないため、時間がかかるという。

 たとえば、ネズミの駆除だ。避難指示区域の住宅は数年以上も人が住まないまま放置されているため、ねずみに荒らされて痛んでいる。住民からなんとかしてほしいという要望が多く寄せられるため、自治体は国に交付金の申請を求めるが、ネズミの駆除のために使える交付金など、過去に前例がない。

 このほか、住民が一時帰宅に使用する仮設トイレの設置、飲用水確保のための井戸の採掘など、これまでの災害復旧事業で行われたことのない事業が次々と必要になってくる。こうした事業は、スキーム作りを一から始めなければならない。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「官庁不在」」は次回に続く

2016/8/31(水)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~病める自治体~> ※42回目の紹介

2016-08-29 22:17:48 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。42回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

 病める自治体

(前回の続き)

 職員自身も被災者であり、ただでさえ心労を抱えているのに、仕事でも大きなストレスが重なり、精神的に追い込まれていくというのだ。

 自治労福島県本部幹部は「住民から文句や突き上げがあって、『間違いなく人の役にたっているのだろうか、住民のためになるのだろうか』と思い詰めてしまい、公務員としてのポリシーがぶれてしまっている」と分析する。「帰町判断時に、一気に退職者が出てくるのではないか」と懸念している。

 そうかといって、簡単に職員の数を増やせるものでもない。そもそも原発事故前、多くの自治体は国による定員管理計画に従って、職員の数を減らしてきた。国の計画をクリアするため、新採用を行わず、段階的に職員数を減らし、ギリギリの人数でやっていた最中に原発事故が起きた。

 ある町の担当者は「原発事故前は8人いた部署が原発事故後、5人でやりくりしているというケースもある。だが、財政の見通しが不透明な中で、通常採用の人数は増やせない」と言う。別の町の担当者も「先が見えない中で、職員の確保はできない。復旧業務もずっとつづくわけではないし、退避している住民がどのぐらい町に戻ってくるのか見通せず、将来的に何人の人口規模になるのかわからない。将来の町の規模を考えると、人件費が膨大になってまうと問題だ。今少ないからといって増やして、10年後20年後、退職しれとは言えない」と言う。

 ※次回は「第3章 復興が進まないワケ「官庁不在」」

2016/8/30(火)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~病める自治体~> ※41回目の紹介

2016-08-25 22:09:37 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。41回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

 病める自治体

(前回の続き)

 復興作業に加え、通常業務も当たり前にやらなければならない。だが、通常業務も原発事故前と比べ、作業量が増えている。まず、役所自体が避難先の仮庁舎で業務を行っており、前年度の資料がなく、以前どうやっていたのかわからないことが多く、土台作りから始めないとならない。会議一つ行うのも一苦労だ。

 まずは、場所取り作業。

 たとえば、住民向けの説明会を開催するにしても、会場として使える場所がどこにあるのか、探す作業から始まる。原発事故前であれば、自治体内の公共施設など、普段使用している自前の施設をおさえればよかったが、避難先のため、開催場所の手当をつけなければならない。すんなり見つかればよいが、駐車場がない、人数が入りきらないなど、なかなかうまくいかなことが多い。会場のセッティングからして手間が増えている。

 さらに、原発事故前であれば地域単位で1回ずつ開催すればよかったものを、住民の避難先が複数の市町村に分散しているため、避難先ごとに複数回開催しなければならない。もちろん、会議には何人かの職員が同席するため。往復の時間を含め、拘束されることになる。(中略)

 原発事故後、苦情を寄せる住民が増えた。仮設住宅など避難先での生活の不便を訴える内容、避難元の自宅がネズミやイノシシで荒らされ、対応を求めるもの、放射線の影響への疑問、除染を進捗状況に対する不満、東電の賠償への憤り、いつになったら元の生活に戻れるのかという不安の声、住民向けの説明会や日々役所にかかってくる電話など、様々な場面でこうした対応に追われている。住民自身も避難生活でストレスがたまっており、やり場のない思いを役所の職員にぶつけるケースも多いという。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「病める自治体」」は次回に続く

2016/8/29(月)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~病める自治体~> ※40回目の紹介

2016-08-24 22:24:55 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。40回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

 病める自治体

 原発事故後、原発被災自治体では業務量が膨大に増えた。
 
 まず、復興業務にかなりの人員、労力をを割かなければならない。原発事故後、「放射線対策課」、「生活支援課」、「復興推進課」など、多くの自治体が新しい課を立ち上げた。被災した道路、農業施設の復旧、避難者支援のケア。どれも原発事故前には存在しなかった業務ばかりだ。住民からは、「原発事故前に住んでいた家が、ネズミだらけになった」、「家の解体費用を個人で負担できないので、町で解体してほしい」など、様々な要望が寄せられる。

 復興業務はマニュアルがない作業のため、まず調べるところから始まる。除染、住民の放射線管理、避難先でのコミュニティー問題、帰還に向けた復興計画の策定、すべてが何もないとこからのスタートだ。マニュアルに則ってこなせばよい作業は何もない。それもそも地方自治体の業務の多くは、前例を踏襲しながら引き継がれる事務作業だ。何年も繰り返されてきた作業を、前任者から引き継いだことを基本に行うのが通例だ。もちろん、町づくり計画など新しい企画をねることもあるが、ゼロからスタートしてマニュアルから作り上げる作業には慣れていない。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「病める自治体」」は次回に続く

2016/8/25(木)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~三流官庁~> ※39回目の紹介

2016-08-23 22:37:28 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。39回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

三流官庁

「国交省だったら、じゃあ何メートルにしましょうと即答する。環境省は規制官庁でこういった作業に慣れていないんでしょう。当事者意識がない。あらゆることがこんな感じだ」と不満をもらす。「国交省が除染をやったらもっと早い。なぜ、国交省が除染を担当しなかったのか。除染が遅れているおは国のせいではない。環境省のせいだ」という。

 批判は、他省庁の官僚からも噴出している。

 福島県には2013年2月、復興庁の出先機関「福島復興再生総局」が作られ、経済産業省、農林水産省、国土交通省などから霞が関の官僚が出向し、常駐している。各種の事業が環境省の担当領域で頓挫し、玉突きで仕事が進まないのだ。ある官僚は「環境省の人たちはホッチキスで書類を止めているばっかりで何もしていない」とこぼす。

 自治体の除染担当者は、「最近になってようやく国交省からの出向組が環境省内で増えてきたが、環境省の前任者がやったことを今さらひっこめられなくて困っているようだ」と明かした。

 ※次回は「第3章 復興が進まないワケ「辞める自治体」」

2016/8/24(水)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~三流官庁~> ※38回目の紹介

2016-08-22 22:32:50 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。38回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

三流官庁

 中間貯蔵施設建設の青写真は、環境省が中心となって描いたものだ。だが、福島県との交渉において環境省は手をこまねくばかりで進展が見られず、最終的に政治決着した。住民説明会においても、矢面に立って住民との質疑応答を担当したのは国土交通省から出向している官僚だった。

 原発事故後、除染の所管省庁をどこにするか、政府で検討された際、名乗りを上げたのが環境省だった。「三流官庁」と揶揄されてきた環境省にとって、膨大な予算を扱う除染事業で実績を作ることにより、脱三流官庁を果たすチャンスだった。

 ところが、実績を作るどころか、除染事業は霞が関のお荷物となった。宮城県、岩手県でインフラの復旧が着々と進む一方で、福島県は除染事業が進まないため、復興事業全体が足止めを食らった。

 福島県内の自治体からは、環境省への恨み節が山のように聞かれる。

 ある自治体の除染事業担当者は、市内に設置する放射性廃棄物の仮置き場の計画について、環境省に相談を持ち掛けた。仮置き場は人家から離れたところに設置されるケースが多いため、仮置き場に通じる道幅が狭く、汚染土壌を運ぶトラックが通るためには道路の拡張工事が必要になる。道路の拡張だけでなく、往復のトラックがすれ違うための退避場も造らなければならない。何メートルおきに設置するべきかなど、環境省の担当者から持ち帰って検討する旨、伝えられた後、そのまま時間は過ぎていった。その分、計画は遅れに遅れた。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「三流官庁」」は次回に続く

2016/8/23(火)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~第二の沖縄~> ※37回目の紹介

2016-08-18 22:26:35 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。37回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

第二の沖縄

(前回からの続き)

 小型トラックから大型トラックに詰め替える拠点施設も必要になる。トラックが走る道路や新たに必要となる移設の周辺住民から、当然反対の声が上がる。トラックが走る道路や新たに必要となる施設の周辺住民から、当然反対の声が上がる。迷惑施設を受けれることの対価として、周辺自治体がこうした対応に使うための交付金が必要だという主張だ。青森県の核燃料サイクル関連施設を引き合いに出し、高額を要求し、霞が関を驚かせた。

「桁が1桁違うのではないか?」

 福島県との交渉担当者から報告を受けた復興庁の幹部は、耳を疑った。東日本大震災から3年がたち、被災地の復興ばかりでなく、地方創生やインフラ老朽化など、全国的に取り組むべき課題が山積みしている。自民党内では被災地向けの予算を減らし、全国に振り向けるべきだという議論が持ち上がっていた。

 その流れに逆行し、桁違いの金額を要求する福島県の対応に、霞が関は頭を痛めた。内閣改造も迫り、改造前までに何とか交渉を妥協させたい環境省に対し、一歩も譲らぬ福島県側。交渉は最終的に沖縄復興予算1年分とほぼ同額の3010億円を、30年間の総額として交付することで決着した。

「まるで第二の沖縄だな」。ある政府幹部はこうこぼした。

 ※次回は「第3章 復興が進まないワケ「三流官庁」」

2016/8/22(月)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~第二の沖縄~> ※36回目の紹介

2016-08-17 22:29:52 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。36回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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第3章 復興が進まないワケ

第二の沖縄

(前回からの続き)

 当時の石原環境大臣による金目発言は、住民感情を大きく逆なでした。だが、説明会では金銭に関する発言も聞かれた。

 双葉町の男性は「私は施設の目の前に家がある。一時帰宅に使うが、30年後に帰れと言われて帰るか?住民の補償をきちんと打ち出してくれ。金でなければ何ができるのか。施設を持ってくるならきちんと責任を持ってくれ」。こうした意見もあった。

 建設にあたり、福島県と地元自治体は迷惑施設を受け入れることによる交付金の創設を要求し、交付金の金額とその使い道をめぐる交渉が1年以上続いた。原発事故前、福島県と原発立地自治体には電源立地地域対策交付金が支払われていた。だが、事故で発電が止まったため、交付金の支払い根拠がなくなった。原発事故の特殊性から原発事故後、国は「福島原子力事故影響対策特別交付金」を創設、2013年度の交付額は35億円だった。

 だが、いつまでも同額の支払が続くわけではないため、福島県は半永久的に同額が支払われる仕組みを引き出すため、中間貯蔵施設の交付金の創設を模索する。政府内では福島県が”第二の沖縄化”することを懸念する声が上がった。(中略)

 環境省の試算によると、福島県内で発生する放射性廃棄物は減容化処理後の推計で1600万~2200万立法メートル。これらを10トントラックで3年間、1日2、3往復して運び込むとすると、1500~2000台の放射性廃棄物を積んだトラックが毎日県内を横断することになる。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「第二の沖縄」」は、次回に続く

2016/8/18(木)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~第二の沖縄~> ※35回目の紹介

2016-08-11 22:09:00 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。35回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

第二の沖縄

(前回からの続き)

  地元では、中間貯蔵施設が一時保管施設ではなく、そのまま最終処分場になってしまうのではないかと懸念する声が多かった。国は30年以内に福島県外の最終処分場に持っていくと主張したが、最終処分場の建設候補地の選定は全く着手されておらず、現実的には極めて困難ということを住民は十分承知していたが、そのことを知らない首都圏の住民へのわだかりも根強く、なおさら心情として受け入れがたいものがあった。

「利益者負担で向こう(関東地方)に持っていくのが当たり前だ。30年以内に県外搬出というが、下北半島(の中間貯蔵施設計画)はいまだに決まってない。しかも、30年後は説明者の皆さん(官僚)はいない。どうやって担保するというのか」2014年6月15日、仙台市で開かれた中間貯蔵施設の説明会で、大熊町の男性はこう意見を述べた。

 もう一つ、地元で大きな問題となったのは住民の分断だ。施設の建設予定地内に自宅がある住民は土地を買い取られることになる。だが、道路1本を隔てた土地に自宅がある住民は、施設の目の前の敷地で30年間暮らすことになる。建設に反対する声はむしろ施設の建設予定地内の住民より、建設予定地から外れた土地の住民の方が大きかった。「国道6号で仕切られるが、西側も東側も同じ町民。生活支援も同じにしてもらいたい」

  同じ説明会で双葉町の男性は訴えた。このため、地元自治体は建設予定地内の地権者住民だけでなく、施設の建設によって帰還をあきらめる敷地周辺の住民への補償を行うため、自由度の高い交付金の創設を国に要求した。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「第二の沖縄」」は、次回に続く

2016/8/17(水)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~第二の沖縄~> ※34回目の紹介

2016-08-10 22:28:05 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。34回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

第二の沖縄

 中間貯蔵施設の建設構想は2011年8月、当時の菅直人首相が辞任直前、福島県の佐藤雄平知事(当時)と会談した際、福島県内での設置を求めたのが議論の始まりだ。国はあくまでも一時保管で、最終処分場は県外に設置する方針を強調したが、佐藤知事は建設構想に猛烈に反対した。

 環境省は、福島県内の除染土壌の発生量は最大で東京ドームの18倍に相当する約2200万立方メートルに上ると試算。除染を進めるうえで施設の必要性を強調した。2015年1月から除染土壌を中間貯蔵施設に搬入し、その後はそこで保管、30年以内に県外に設置する最終場に移管するとした。宮城、茨城、栃木などでも汚染土壌が発生しているが、それぞれの最終処分場に持ち込み、中間貯蔵施設にはあくまで福島県外からの汚染土壌は持ち込まないとした。

 2012年1月、当時の野田佳彦首相は佐藤知事と直接会い、双葉郡内での建設受け入れを要請。その後、大熊町、双葉町、樽葉町の3か所に建設する方針が明らかにされた。だが、建設候補地が明らかにされてから、建設が正式に決まるまで2年以上の月日を要することになる。当初の政府の計画では2012年度内に建設地を決め、2013年度内に用地取得を完了、2014年夏から本格工事を開始。2015年1月から中間貯蔵施設への搬入を開始する青写真を描いていたが、このスケジュールは大幅に遅れることになる。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「第二の沖縄」」は、次回に続く

2016/8/11(木)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~たまるフレコン~> ※33回目の紹介

2016-08-09 22:35:43 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。33回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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第3章 復興が進まないワケ

たまるフレコン

 テレビのニュースで、山積みにされた黒い土嚢袋の映像を目にしたことのある人も多いだろう。この土嚢袋の中には、放射線量の高い土やがれきなどが入っている。土嚢袋はフレキシブル・コンテナバッグという名称で、通称「フレコン」と呼ばれている。このフレコンの山が、原発事故の避難者の帰還に最も大きく影響している。

 除染とはあ、放射性物質を取り除いたり、遮蔽したりすることで、具体的には、土の表面を取り除いたり、道理の表面を水で洗い流したり、削り取ったり、屋根の川rを水拭きしたりする作業などが行われる。主に建設業者が請け負っている。

 除染は避難指示区域だけでなく、福島県内の広範囲の地域で行われている。そのうち、避難指示区域の除染は国が直轄事業として行っている。(中略)

 避難指示区域以外の除染は市町村が行っている。住宅の除染の進捗率は2015年8月時点で約70%と遅れており、県民からは除染が遅いという不満が根強い。

 除染が進まない最大の理由は、除染で出るごみを置く場所が見つからないことだ。石原伸晃・元環境大臣の金目発言で話題になった中間貯蔵施設が、除染で出たゴミを貯蔵する施設で、福島第一原発がある大熊町、双葉町に建設されることが決まった。

 中間貯蔵施設ができるまで、除染で出たゴミはフレコンに入れられて、仮置き場という一時保管施設に運ばれる。仮置き場は建物ではなく屋外施設で、農地や空き地などにフレコンが山積みされていくだけだ。

 だが、地権者はもちろん、周囲の住民が仮置き場の設置に反対して、用地取得がなかなか進まないケースが多い。また、中間貯蔵施の建設が始まらないと、いつまでもフレコンは仮置き場に保管されたままになる。このため、仮置き場を増やせず、除染ごみの持っていき場がないため、除染をスピーディーに行えないのだ。除染を進めて避難指示を解除して、避難者が帰還できるようにするためには、中間貯蔵施設の早期建設が重要となる。

 ※次回は「第3章 復興が進まないワケ「第二の沖縄」」

2016/8/10(水)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~復興が進まないワケ~> ※32回目の紹介

2016-08-08 22:00:00 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。32回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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第3章 復興が進まないワケ

避難者は戻れるのか

 避難指示区域の住民については、避難指示区域外の県内の市町村に建設する復興公営住宅に入居できるよう、準備が進められている。復興公営住宅は、建設費は国が負担するが、福島県が建設する県営の住宅団地で、いわき市、郡山市、福島市など県内各地に4890戸が建設される予定だ。家賃の例は、夫婦とも国民年金で年収115万円の場合、2LDKで月7000円程度。夫が会社員、妻が専業主婦、中高生の子供1人ずつで年収343万円の場合、3LDKで月5万円程度となっている。

 だが、建設用地の土地取得手続きに時間がかかったり、入札不調が相次いだりするなどして、建設は遅れている。建設予定の4890戸のうち、2015年8月時点で建設が完了したのは14%にあたる687戸にすぎない。2017年度後半に入居開始予定の物件もある。

 2013、2014年度の福島県発注の公共工事の入札不調発生率は21%と高水準で、そのうち応札ゼロが約7割を占める。建設業者の多くは市町村発注の除染を受注しており、除染に人手を取られているのが原因だ。「建設業者へのアンケートでも、除染が増えてきて通常工事に手が回らないという回答が散見される。ダンプも不足しており、1日当りの作業量が低減している。物理的な絶対量が不足してくると、制度の談話で解決するのは難しい」(福島県入札監理課)という。(中略)

 いわき市の借り上げ住宅で暮らす富岡町の男性(55歳)は、「3月12日にあの道路を使って避難した。避難で大渋滞して通常20~30分のところ、何時間もかかった。」と言う。

 郡山市の仮設住宅で暮らす別の男性(70歳)も、「狭いしカーブが多い。一時帰宅の時も、何かあったら心配だといつも思っている。原発事故の時は、すごい行列で車が動かなかった。(略)

 ※次回は「第3章 復興が進まないワケ「たまるフレコン」」

2016/8/9(火)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~放射線と避難者~> ※31回目の紹介

2016-08-04 22:26:13 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。31回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

放射線と避難者

(前回からの続き) 

 借り上げ住宅はピーク時の2012年4月時点で約2万5600戸あり、2012年3月時点で約6万4300人、2015年8月時点で約3万5200人が入居している。仮設住宅より物理的な居住環境はよいが、広い一軒家で長年暮らしてきた避難者にとっては狭く感じられ、お年寄りには階段の上り下りなど、不便なことも多い。仮設住宅と違って避難者同市のコミュニティーが少なく、孤立するケースも多い。

 県内避難者のほとんどが避難指示区域の住民なのに対し、県外避難者には郡山市や福島市など、避難指示区域外の住民も多く含まれる。子供への放射線の影響を考慮して、子供と母親が県外に避難し、父親は仕事のため県内に残る母子避難の世帯も多い。

 こうした自主避難者についても、福島県が家賃を負担する制度があるが、家賃は上限6万円(5人以上の世帯は9万円)、子育て世帯などの要件がある。このため、各自の貯金を崩しながら避難先で暮らしていたが、生活費が底をつき、福島県内に戻る自主避難者も増えている。

 だが、県内への帰還をためらう自主避難者は多い。事故から数年がたってもいっこうに事故前の水準に下がらない放射線量の問題のみならず、帰還をためらうもう一つの理由は、県内に残った住民との軋轢だ。

 県内に残った住民の中にも、本当は県外に避難したかったが、経済的な事情でとどまった人も多い。自主避難者は「福島から逃げたのに戻ってきた」と、ママ友の間で中傷されることを懸念しているという。

 ※次回は「第3章 復興が進まないワケ「避難者は戻れるのか」」は、次回に続く

2016/8/8(月)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~放射線と避難者~> ※30回目の紹介

2016-08-03 22:25:37 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。30回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

放射線と避難者

(前回からの続き) 

 避難先は、県内では福島第一原発から比較的近いいわき市が最も多く、約2万4000人が生活している。郡山市、福島市などにも1000戸を超える仮設住宅が建てられ、多くの避難者が暮らしている。原発被災自治体は事故後それぞれ、根拠となる避難先の自治体を定めて仮設場を置き、住民も仮役場のある自治体の仮設住宅に入居しているケースが多い。たとえば、大熊町は会津若松市、富岡町は郡山市、浪江町は二本松市を根拠としている。だが、拠点外の自治体に避難している住民もいるため複数の自治体に出張所を設置している。

 福島県外への避難先は北海道から沖縄までほぼ全都道府県にわたるが、2013年4月時点では山形県約9000人、東京都約7400人、新潟県約5600人など、近隣県と関東地方が多い。山形市や新潟市などには避難者同士のコミュニティーが作られている。

 避難者の多くはプレハブの仮設住宅か、自治体が民間のアパートやマンションを借り上げた住宅で暮らしている。プレハブの仮設住宅は福島県内に約1万6800戸あり、ピーク時の2012年7月には約3万3000人が暮らしていた。多くが学校の校庭など、公共用地に砂利を敷き詰めて建てられている。家賃は無料だが、2DK、約30平方メートル(9坪)の造りがほとんどで、狭く、夏は蒸し風呂状態、冬は結露がひどく、壁が薄いため隣の住民の会話が丸聞こえでプライバシーがないなど、居住環境は劣悪だ。仮設住宅の供与帰還は2年が前提で劣化が進んでいるが、2015年8月時点で約2万500人が暮らしている。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「放射線と避難者」」は、次回に続く

2016/8/4(木)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~原発技術者~> ※29回目の紹介

2016-08-02 22:01:54 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。29回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第2章 原発と生計

原発技術者

(前回からの続き) 

 2002年に発覚した東電のトラブル隠し。原子炉の炉心隔壁にひび割れが複数個所見つかった事実を、東電が記録を改ざんして隠ぺいし、内部告発によって明らかになった事件だ。東電は当時、安全上問題はないとしていたが、事実の隠蔽の仕方が批判された。発覚後、東電の原発は全基運転停止に追い込まれた。

「東電だけでなく、メーカーもデータを改ざんしていた。そのことを報告すると、逆に下請けの我々がしこたま怒られ、出入り禁止になる仕組みだった。そういう電力業界の体質はずっと変わらなかった」

 事実を報告しないまま放置する。それが、今回の原発事故につながったと広田さんは考えている。

「1Fの予備電源は地下にあり、大きい台風が来ると水がたまっていた。だから、電源喪失の事態は想定していた。事故は起こるべくして起きたと思っている」

「東電のことは、今まで世話になってきたので悪くは言いたくなかったが、考えが変わった。間違いのないデータをきちんと出しているのか、まだ以前の体質が抜けていないのではないか」

 全国の原発再稼働についての思いは複雑だ。「地域としては変わりのものがないから、新潟の状況もよくわかる。でも、同じような事故は起こしてもらいたくない」

第3章 復興が進まないワケ 放射線と避難者

 原発事故と東日本大震災による福島県の避難者は、2015年9月時点で約10万6000人に上る。このうち、福島県内への避難者は約6万1800人、県外への避難者は約4万4400人となっている。福島県外への避難者は、ピーク時の2012年3月の約6万2800人から約1万8000人減ったものの、なお10万人以上が福島県内外で避難生活を余儀なくされている。

 ※「第3章 復興が進まないワケ「放射線と避難者」」は、次回に続く

2016/8/3(水)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)