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日銀に破綻はあるのか

2013年09月02日 | 経済

 日銀に破綻はあるのか       2013年9月1日(月)

 

  日銀がデフレ脱却を悲願にした経済政策の中心的プレーヤー になっています。あまり過大な役割を押し付けると、中央銀行としての健全性が失われ、経済、金融にとって逆効果になることはないでしょうか。

 

  財政については、主だった国は日本を含め、健全化の目標、基準を設けるようになっています。中央銀行はどうなのでしょうか。役割に限界があるということはよくいわれます。中央銀行としての健全性、信頼性を失わせないために、どのような規律が必要なのか、漠然とした言葉でなく、精緻な議論、基準の考察をしておくべきだとわたしは思うのです。

 

  金融政策に詳しい学者、エコノミストは多くいます。なぜかれらはこの問題でもっと発言しないのでしょうか。わたしは金融の専門家ではありません。漠然とした危機意識はもっていても、精緻な議論はできません。是非、金融政策を専門とする人たちの考えを聞きたいのです。

 

  市場経済の安定にとって、財政と金融は車の両輪でした。ある時は財務省が主力バッターとなり、ある時は日銀が主力バッターとなりました。ポリシー・ミックスといって、両者が主役を務めたこともしばしばありました。

 

  財政は多くの国で、これまでの過大な要求の積み重ねで、過大な債務、借金を背負い、もう主力バッターではなくなりました。そこで日本でも、米欧でも中央銀行の出番が多くなり、大胆な金融政策を発表して、経済、金融危機からの脱出を図るようになりました。黒田総裁の異次元緩和が登場したのも、その流れです。

 

  マネー市場がパニック状態に陥った金融危機の際は、中央銀行が緊急出動をして、それこそ「無制限に金融を緩和する」と誇張しなければならない時はあります。市場の動揺が収まり、金融機関の経営が正常化すれば、拠出した資金は回収できるようになります。

 

  最近はどうでしょうか。中央銀行の出番が多くなった背景には、経済危機、金融危機が存在します。問題は、短期、中期で解決できそうな危機と、構造変化、構造のゆがみから発生している危機との区別を真剣に考えなくなったことにあるように思えてなりません。実際は、後者の危機の比重が大きいようにみえます。こうした危機に中央銀行が深入りしすぎると、中央銀行としての体質が悪化し、信認が低下しかねません。

 

  「金融緩和の隠れたコスト」という題名のコラムを読んだことがあります。2013年末における試算で、金利が1・5%上昇、日銀の国債保有残高を140兆円すると、損失は15兆円になりうる。長期的には、日銀の損失は政府への納付金の減少としてあらわれてくる、というのです。

 

  こういう試算も大事でしょう。もっと大切な問題は、中央銀行の信認が低下すると、経済、金融市場のそのような悪影響が生じるかということです。市場経済を安定させる最後の砦は、財政と金融であり、このうち財政はすでに危機的状況に陥っています。このうえ、中央銀行の信認が低下してしまったら、経済、金融危機を安定軌道に戻す役割はどこが果たすのでしょうか。

 

  財政が破綻し、国家も破綻する時代です。日銀が破綻したらどうなりますか。そんなことはありえないよと、割り切るのでしょうか。市場に対するコントロールを財政に続き、金融政策も失ったらどうなりますか。市場放任の時代に逆戻りです。それを期待しているのだというファンドや機関投資家がいることは間違いありません。



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