読み終わった。
で、実は珍しいことだけど、少し批判めいたハナシをすることになりそうだ。もっとも、本当につまらない本ならハジメから、黙殺だけど。
ストーリーは、夫の友人と不倫している主人公が別荘で逢引をしてる時に娘(5歳の女の子)が行方不明になる、ってハナシ。
乱暴に言えば、子供を放り出して、パチンコをしていたら、クルマの中で子供が死んでしまったってのと変らない(ある意味、もっとヒドイかも)。身勝手さの代償は大きかったってコト。
題名の「柔らかな頬」は、おそらく、行方不明になったこの女の子のことだろう。ふわふわとした、「どこに力点があるのか」分からないストーリーの中で、全編を通してのキーは唯一、この子の存在だから。
自分の中で、この本の評価は二転三転してる。
珍しく、読んだヒトの評価も見たけど、重い・暗い・よく分からない・最初の100ページは死ぬほどつまらない。
ってトコでしょうか。全てナットクだ。
読み始めはホントにつまらなかった。しかし、読み進めていく内におもしろくなっていく。
人物の造型がうまい。リアルで細やか。
で、登場人物の心理描写のはさみ込みがうまい。
実は昔(小学生の頃)、作家になりたかった。当時、数十枚の「SF小説」なるものをモノして、得意満面に先生に見せたものだ。
先生は赤字で巻末に感想を載せた「将来、きっと、いい思い出に」
当時の自分はフンガイした。「思い出だと!この作品は誇るべき第1作なのに。」
先生の予想は結果的に的中して、今はいい思い出だ。
当時、ノーベル文学賞を取りたかった自分(モノカキの最高峰と信じて疑わなかった)はさらに、イロイロ書こうとしていた。そんな自分が行き詰ったのは「誰の視点で書くのか?」「登場人物の心象はどこまで書くのか」。
主人公の気持ちを書く。まあ、それはアリだけど、犯人の気持ちを書いちゃうと手品の種明かしになっちゃう、とか、あんまり、みんなの気持ちを書いちゃうと安っぽくなったり、リアルじゃなくなったりする。
ヒトの気持ちが分からないから、主人公の行動が成功するかどうか分からないわけで、それは「現実」と同じ。
もし、それが見えちゃったら、ドキドキ感は半減する。読み物のおもしろさのほとんどは「ナゾ」が占めてる。
その点、「ウマイなあ」と思った。
じゃあ、ほめといてナンデ批判的になるのか。それは後半だ。
後半、現実と虚構(夢?心象?)が交錯し、果たして、誰の視点なのか、現実なのか、虚構なのかがさっぱり分からなくなる。
あるところで「あれ」と思ったんだけど、そこから、ストーリーの展開が全く変ってしまう。
「ナゾぶち壊し」な感じ。
もしかしたら、この後半の描写がウケて「直木賞」受賞になったのかもしれない。
でも、個人的な感想で言えば、途中までのリアルな描写やタンタンと書いてきた主人公の心理描写を後半が「ダイナシ」にしてしまったような気がする。
フリーシナリオっぽい感じ、言い方を変えると「読む方で勝手に考えて」って感じ。
ゲームでもよくある「フリーシナリオ」。あれはシナリオが無いのと同じじゃないかな。製作者がストーリー作りを「放棄してる」って思っちゃうんだよね。
ストーリーは一本で、「いかに、読者や視聴者の予想を裏切れるか」が製作者の技量の見せ所だと思う。何本もストーリー作るんじゃ、意外さもヘッタクレもない。物語は一本でも、人間のウラガワを感じさせたり、「ホントはこうだったんじゃないの」って、作家がはっきりとは書かないストーリーをウラ読みさせたりするのがテクだと思ってる。
だから「認められない」んだよなあ。
ここでは言わないけど、特にラストの数ページは「がっかりした」。
「何それ」って感じ。
これだけ、悪く言うと、「絶対、見ないで!」「つまらん」とか言いそうだけど、言いません。
面白いところもあったし、何より、ラストを体験して欲しい。今までにないラスト。確かに見たことはない。
もしかしたら、ヒトによっては最高のラストなのかもしれない。「6センス」好きなヒトもいるんだろーし。
この本は読んでよかったと思うけど、「同じような本」は二度と読みたくない。
アガサクリスティの「オリエント急行殺人事件」同様、オキテ破りは二度許されない。
で、実は珍しいことだけど、少し批判めいたハナシをすることになりそうだ。もっとも、本当につまらない本ならハジメから、黙殺だけど。
ストーリーは、夫の友人と不倫している主人公が別荘で逢引をしてる時に娘(5歳の女の子)が行方不明になる、ってハナシ。
乱暴に言えば、子供を放り出して、パチンコをしていたら、クルマの中で子供が死んでしまったってのと変らない(ある意味、もっとヒドイかも)。身勝手さの代償は大きかったってコト。
題名の「柔らかな頬」は、おそらく、行方不明になったこの女の子のことだろう。ふわふわとした、「どこに力点があるのか」分からないストーリーの中で、全編を通してのキーは唯一、この子の存在だから。
自分の中で、この本の評価は二転三転してる。
珍しく、読んだヒトの評価も見たけど、重い・暗い・よく分からない・最初の100ページは死ぬほどつまらない。
ってトコでしょうか。全てナットクだ。
読み始めはホントにつまらなかった。しかし、読み進めていく内におもしろくなっていく。
人物の造型がうまい。リアルで細やか。
で、登場人物の心理描写のはさみ込みがうまい。
実は昔(小学生の頃)、作家になりたかった。当時、数十枚の「SF小説」なるものをモノして、得意満面に先生に見せたものだ。
先生は赤字で巻末に感想を載せた「将来、きっと、いい思い出に」
当時の自分はフンガイした。「思い出だと!この作品は誇るべき第1作なのに。」
先生の予想は結果的に的中して、今はいい思い出だ。
当時、ノーベル文学賞を取りたかった自分(モノカキの最高峰と信じて疑わなかった)はさらに、イロイロ書こうとしていた。そんな自分が行き詰ったのは「誰の視点で書くのか?」「登場人物の心象はどこまで書くのか」。
主人公の気持ちを書く。まあ、それはアリだけど、犯人の気持ちを書いちゃうと手品の種明かしになっちゃう、とか、あんまり、みんなの気持ちを書いちゃうと安っぽくなったり、リアルじゃなくなったりする。
ヒトの気持ちが分からないから、主人公の行動が成功するかどうか分からないわけで、それは「現実」と同じ。
もし、それが見えちゃったら、ドキドキ感は半減する。読み物のおもしろさのほとんどは「ナゾ」が占めてる。
その点、「ウマイなあ」と思った。
じゃあ、ほめといてナンデ批判的になるのか。それは後半だ。
後半、現実と虚構(夢?心象?)が交錯し、果たして、誰の視点なのか、現実なのか、虚構なのかがさっぱり分からなくなる。
あるところで「あれ」と思ったんだけど、そこから、ストーリーの展開が全く変ってしまう。
「ナゾぶち壊し」な感じ。
もしかしたら、この後半の描写がウケて「直木賞」受賞になったのかもしれない。
でも、個人的な感想で言えば、途中までのリアルな描写やタンタンと書いてきた主人公の心理描写を後半が「ダイナシ」にしてしまったような気がする。
フリーシナリオっぽい感じ、言い方を変えると「読む方で勝手に考えて」って感じ。
ゲームでもよくある「フリーシナリオ」。あれはシナリオが無いのと同じじゃないかな。製作者がストーリー作りを「放棄してる」って思っちゃうんだよね。
ストーリーは一本で、「いかに、読者や視聴者の予想を裏切れるか」が製作者の技量の見せ所だと思う。何本もストーリー作るんじゃ、意外さもヘッタクレもない。物語は一本でも、人間のウラガワを感じさせたり、「ホントはこうだったんじゃないの」って、作家がはっきりとは書かないストーリーをウラ読みさせたりするのがテクだと思ってる。
だから「認められない」んだよなあ。
ここでは言わないけど、特にラストの数ページは「がっかりした」。
「何それ」って感じ。
これだけ、悪く言うと、「絶対、見ないで!」「つまらん」とか言いそうだけど、言いません。
面白いところもあったし、何より、ラストを体験して欲しい。今までにないラスト。確かに見たことはない。
もしかしたら、ヒトによっては最高のラストなのかもしれない。「6センス」好きなヒトもいるんだろーし。
この本は読んでよかったと思うけど、「同じような本」は二度と読みたくない。
アガサクリスティの「オリエント急行殺人事件」同様、オキテ破りは二度許されない。