新渡戸稲造記念 さっぽろがん哲学外来

さっぽろがん哲学外来の活動予定や活動の様子などを
皆さんにお伝えします。皆さんの参加をお待ちしています。

がん哲学校たより・60(0097)

2015年05月05日 | 樋野先生からのメッセージ
樋野先生からのおたよりです(2015.5.3配信)
第109回「がん哲学学校」
病理医の役割 ~ 純度の高い、悔いのない人生 ~

順天堂大学保健看護学部での、2コマ(90分 x 2コマ)の授業「ターミナルケア」(4年生)で、静岡県三島市に赴いた。「ターミナルで ありながら 自宅ですごされている がん患者さんの様子、がんばり等・・残りがすくなく なりつつなる中、最後まで 悔いのない人生を送ろうと 奮闘している がん患者さんと ご家族の様子や支援について お話いただけると幸いです。病院、緩和ケア病棟以外に、こんなターミナルの形もあるよ! ということを ご紹介いただければと思います。キーワードとすれば、がん終末期の患者さんの 生きがいや、価値信念、自己知覚と いったところでしょうか・・・」の要望には、出来るだけ、答えながら、全力を尽くした。教室では、多くの質問もあり、また、学生さんのコメント「哲学的な見地からの お話で面白かった」も、後日、送られて来た。

第104回日本病理学会総会(2015年4月30日~5月2日)が、名古屋国際会議場に於いて、高橋雅英会長(名古屋大学大学院医学系研究科 分子病理・腫瘍病理学 教授)によって開催された。大変、「純度の高い病理学」の最先端の発表を拝聴し、大いなる学びの時であった。まさに、「マクロからミクロ」であり、「DNAから臓器」であり、病理学の時代的要請を痛感した。第1日目の夕方、筆者が代表を務める「リンチ症候群研究会」で、コンパニオンミーテイング「リンチ症候群の展望と病理医への期待」を企画する機会が与えられた。日々勉強である。

最終日の市民公開講座「もっと知っておこう、子宮頸がん~あなたとあなたの大切な人のために~」(4:00 ~ 6:00 pm)では、女優:仁科亜季子氏「元気な明日のために~がんに負けない~」、井箟一彦先生(和歌山県立医科大学 産婦人科学)「子宮頸がんを予防しよう~女性の健康を守る~」、筆者「純度の高い専門性と社会的包容力~病理医の役割~」の講演と、高橋会長と吉川史隆先生(名古屋大学大学院医学系研究科 産婦人科学 教授)の司会による、パネルデスカッションが企画された。初めて、仁科亜季子氏と話す機会が与えられた。大変、感激した。拙著『いい覚悟で生きる』を謹呈させて頂いた。会場は、多数の参加者があり、大変、有意義な、心温まる講演会であった。まさに「夕暮れ時に、光がある」時であった。人生の想い出に残る名古屋での学会であった。


がん哲学外来について

患者さんが抱える悩みは病人としての悩みではない。人間としての悩みです。 がんという大病を得たとき、それを背負って人間としてどう生きるかという深い悩みです。それは「心のケア」というレベルではなく、自分という存在そのものを問う領域なのだと思います。ですから、「がん哲学外来」では、来られた方を「病人」の側面だけではなく、ひとりの人間としての悩みに焦点を合わせます。同じ人間として、対等の目線に立って、人間を学ぶ「人間学の場」でありたいと考えるのです …(提唱者であり当会の顧問である順天堂大教授・樋野興夫先生の著書より)

札幌の「がん哲学外来」(開設趣旨)

私達は樋野興夫先生の志に賛同し、車座になって意見交換をする運営をめざします。講演会スタイルではありません。参加者全員が同じ立場、同じ目線で耳を傾け、縁のあった方々に寄り添うことを願っています。