歪笑小説 (集英社文庫) | |
東野 圭吾 | |
集英社 |
今回は、東野圭吾『歪笑小説』を紹介します。いきなりの文庫化ですね。○笑小説シリーズ第4弾で、今回は文芸界に特化した内容になっています。ミステリーではないですね。最近の東野圭吾作品は駄作が多い中、本書は『新参者』と並ぶくらいの数少ない当たり作品で、面白かったですね。連作短編になっていて、最後の巻末広告は一番最後に読むとすごく面白い仕掛けに気づくかもしれません。出版業界に行きたい人や小説家になりたい人なんかには勧めたい。どういう業界なのかが分かりやすく書かれています。
文芸界に特化した話で、面白おかしく文芸界のことを皮肉っているけど、実際どうなんでしょうね。憧れだけでなく、新人賞を取ってからどう売り出すのかがものすごく大事なので、安易な専業小説家に対しての警告なのかな。新人作家は編集マンとの出会いによって売れる作家になるのか、そのまま消え去る事になるのか決まってくるからね。作家はプロデビューしてからがさらに大変になってくるという事なんだよな。
伝説の男:伝説の編集マン獅子取の武勇伝
夢の映像化:新人小説家の熱海の作品『撃鉄のポエム』映像化が決まる。熱海はあれこれと自分の理想の配役を考えるが、実際はどうなるか?
序ノ口:唐傘という有望新人作家が有名作家の接待ゴルフに誘われる。唐傘の居心地の悪さがよくわかる。
罪な女:作家が女性新人担当者に翻弄される。
最終候補:リストラ候補者が人生をかけて小説に応募して最終候補に選ばれた。会社を辞める選択をするのか、それとも会社に残るのかというジレンマを書いた章。これが一番興味を持った。
小説誌:中学校の職場見学で、小説誌のことをあれこれと突っ込まれるが、最後の青山の怒りの発言は必見かな。小説誌の実情を書いているような気がする。
天敵:作家の恋人が作家のファンということもあり、作風について口を出してくる。それも意図があったりするんだよね。キーワードは、ヒット作症候群。枠から飛び出る。
文学賞創設:新しく文学賞を創設する話。どういう思いで文学賞を創設したのか?受賞された方はうれしいんだろうな。
ミステリ特集:短編ミステリ特集を行うということで、10人の作家に分野がかぶらないようにして依頼していたが、一人が穴を開けることになったために、新人作家に本格ミステリを依頼しないといけない。そこで熱海に依頼するのである。
引退発表:しばらく作品を出していない作家の引退記者会見をやるのだが、感謝の気持ちを込めて引退小説を書くことに決める。
戦略:熱海の次作品『銃弾と薔薇に聞いてくれ』の売り出し戦略を考える。作風から奇抜なキャラクターに作り上げる。
職業、小説家:唐傘の恋人の父親が、娘が小説家と結婚するということで翻弄される話。