あの頃の誰か (光文社文庫 ひ 6-12)東野 圭吾光文社このアイテムの詳細を見る |
今回は、東野圭吾『あの頃の誰か』を紹介します。本書もいきなり文庫ですね。今まで刊行された短編集に収録されずに残ったものを集めた「わけあり物件」です。初出が全て10年以上前のものだから、わけありなんでしょうか。それとも、単にボツ案件なのか。まあ、単行本だったらいきなり買わないかもしれないという出来だと思います。
各短編の紹介をします。
シャレードがいっぱい(コットン'90年11月号):ダイニングメッセージもの+遺産相続のもつれですかね。雰囲気は『ウインクで乾杯』見たいな感じですね。掲載誌を出版していた出版社が倒産したから、この短編は宙ぶらりんになっていたみたいだ。
レイコと玲子(コットン'91年6月号):結果的には多重人格者を利用した殺人。掲載誌を出版していた出版社が倒産したから、この短編も宙ぶらりんになっていたみたいだ。
再生魔術の女(問題小説'94年3月号):子どもが出来ない夫婦(特に夫の根岸峰和)と養子を見つけてくれた女性(中尾章代)の話。中尾章代が根岸峰和を追い詰めていくシーンはぞっとする。この話がいちばん面白いですね。短編集『怪しい人びと』に間に合わなかったために宙ぶらりんになっていたみたいだ。
さよなら『お父さん』(小説宝石'94年7月号):『秘密』の原型になった作品。いうならば、『秘密』の短編版。平介が最後に2発殴るシーンは気持ちがよくわかる。
名探偵退場(『やっぱりミステリーが好き』新潮社'90年6月刊):『名探偵の掟』という作品を書くきっかけになった作品。名探偵にとって、ミステリーというか謎に囲まれて死んでいくのは本望なんじゃないかな。
女も虎も(IN★POCKET'97年7月号):運命の選択ですね。美女か人食い虎か開けてからのお楽しみの3択。お題拝借ミステリーショートショート競作において太田忠司氏が出した題名「女も虎も」に基づいたものらしいです。
眠りたい死にたくない(小説新潮'95年10月号):うーん。この短編は何が面白いんだろうか?主人公が最後どうなったのかは気になるところですけど。
二十年目の約束(別冊小説宝石'89年12月号):村上昭彦は結婚相手の亜沙子に子どもを作らないと告げた。亜沙子は昭彦の様子がおかしいということで、昭彦のあとをつけることにした。調べていくうちに、20年前の出来事に起因することがわかった。東野氏曰く、この作品が一番のわけあり物件だそうだ。