一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(113) ― R. シュトラウス

2006-03-29 10:13:28 | Quotation
「旋律が、目に見えない神から人間にもたらされたもっとも崇高な贈り物のひとつであることは、古典派のもっとも際立った音楽的創造物からリヒャルト・ヴァーグナーにいたるまでの音楽に明らかである。」
(『考察と回想』)

R. シュトラウス(Richard Strauss, 1864 - 1949)
ドイツの作曲家。ホルン奏者を父として、音楽的な環境のもとに育つ。18歳の時に作曲した『ヴァイオリン協奏曲』で賞賛を受け、21歳にしてマイニンゲンの宮廷音楽長に就任。ミュンヘンやヴァイマールのオペラ劇場の指揮者をつとめた後、ベルリンの宮廷オペラ劇場首席指揮者、同劇場音楽総監督、ウィーン国立オペラ劇場音楽総監督を歴任。1933年から35年まで、ドイツ音楽界の長老として帝国音楽局総裁に就き、戦後ナチスへの協力者として裁判にかけられるが、無罪となる。
交響詩『ドン・フアン』『英雄の生涯』『死と変容』『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』、オペラ『サロメ』『エレクトラ』『ばらの騎士』などの作品がある。

ハーモニーを持たない民族はあっても、メロディーやリズムを持たない民族は、まず考えられない。
ことほどさように、メロディーとリズムは、人間の(あるいはことばの)本質的な部分と密接に結びついているようだ。

しかし、リズムはともかくとして、現代音楽ではメロディー(旋律線)すらはっきりしない作品も数多く生まれている。
一つの原因として、A. シェーンベルクによる「十二音技法」の発明によって、音高システムが従来のものとはまったく異なったものになったことが挙げられよう。
「相互の間でのみ関連づけられた十二の音による作曲」というこの技法は、きわめて数理的な原理をもっているがために、かえって人間の耳には、旋律としては聴き取りにくいものとなった。

戦後現代音楽の旗手の1人だった E. ヴァレーズは、
「チャイコフスキーの愛好家に音楽とはなにかと尋ねてご覧なさい。そのあとに、ドビュッシーかベルリオーズの愛好家に同じことを尋ねてご覧なさい。ふたりはけっして同じ音楽について語りはしないでしょう。ひとりの人にとって音楽であるものは、もうひとりにとって音楽ではないのです。」
と語った。

同様の事態が、より細分化されているのが、現代の音楽事情ではないだろうか(そこでは、チャイコフスキーとドビュッシー、ベルリオーズは、むしろ同一グループに属している)。

参考資料 『作曲の20世紀 1』(音楽之友社)

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