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「科学による人類滅亡」はSFではない,遺伝子改変によるデザイナーベビーのリスク 2023/09

2023-09-21 01:24:21 | 気になる モノ・コト

「科学による人類滅亡」はSFではない 遺伝子改変によるデザイナーベビーの量産リスク
  AERAdot より 小川和也


 ゲノム編集技術が、著しいペースで進化を遂げている。狙った遺伝子を改変させることが可能なこの技術は、医療分野や農水産業などでの活用が期待されている。
だが一方で、リスクもある。
 北海道大学客員教授の小川和也氏は、著書『人類滅亡2つのシナリオ AIと遺伝子操作が悪用された未来』(朝日新書)の中で、将来的に、ゲノム編集技術によって親が望む容姿や能力を備えた「デザイナーベビー」が量産されるリスクについて警鐘を鳴らしている。本書から一部抜粋して紹介する。

*  *  *

■ゲノム編集技術を未来永劫、〝理想的〞に扱うことはできるのか
 威力のある技術は新しい時代を作り、未来を紡いできた。ゲノム編集技術の獲得は、人間自らがヒトの誕生と成長を合理的に操作できる力を初めて手にしたことを意味し、人類の歴史上、大きな転換点をもたらすインパクトを持っている。
 人間の尊厳、人間の生殖、人間の機能、人間の能力など、人類の根源に触れる比類なき諸刃の剣である。

 しかも、次世代から次世代へと影響を連鎖させるのが生殖に関するゲノム編集技術だ。
 生まれてくる子だけではなく、さらにその子の子孫にも影響を波及させる。現世代の意思決定、価値観、倫理、ルールだけを前提にしても不十分なのだ。
 現世代が未来への責任を負い、善処に努めているからといって、変動要素の多い社会・地球環境の中で、次世代を理想的にデザインできると考えることは驕りである。次世代のその先の世代となると、さらに未知数だ。

 それを踏まえたときに、人間が未来にわたりゲノム編集技術を正しく扱えるという絶対的根拠など本当にあるのだろうか。
 現世代がゲノム編集技術を濫用したならば、次世代もその影響を必ず受ける。もし、現世代が濫用せずに済んだとしても、さらに技術力が上がり、人間の能力を拡張したり、デザイナーベビーを生み出す欲や必要性が増したとすれば、次世代では抑制できなくなるかもしれない。
 ひとたびデザイナーベビーの存在が許されてしまえば,小さな一歩が少しの束になり,少しの束がなし崩しに大きな束になりかねない。
 大きくなった束は、デザイナーベビーか否かで人間の優劣が際立つ世界を徐々に形成し、差別意識が継承されることで世代を超えて社会的分断が進む恐れがある。

 そして、デザイナーベビーとして生まれてくる子どもは意思決定に関与せず、自分以外の誰かの意思によって勝手に操作されることになる。
 これまでのヒトの生殖プロセスを人為的に変える行為であり、プロセスの一部だけを切り取って操作しても、何の歪みも生じないことを証明するのは困難だ。
 生命操作が一つのシステムだとすれば、バグが絶対に発生しないシステムは幻想に近い。予想しなかった病気や障害が生じることや、Dこともある。

 ゲノム編集技術を未来永劫、完璧に扱い、安全性を永遠に担保できるという発想は、願いの範囲を出ない。

 2015年12月に行われたヒトゲノム編集国際サミットで採択された声明では、ヒトの生殖細胞系列へのゲノム編集は、次のような6つの問題をもたらすと指摘している。

 1.オフターゲットやモザイクといった技術上の問題

 2.遺伝子改変がもたらす有害な結果を予測する困難

 3.個人のみならず将来の世代への影響を考える義務

 4.人間集団にいったん導入した改変を元に戻すのは困難

 5.恒久的エンハンスメントによる差別や強制

 6.人間の進化を意図的に変更することについての道徳的・倫理的検討

 これらの問題は、技術の進化によって解決できるものもある一方で、人間の思想、倫理、行動については、最良な全体合意、選択がなされるとは限らない。
 技術だけは立ち止まることなく進化しながら、6つの問題の解決を阻むのは、統一感のない意思、そして理想である。しかも、その意思や理想は、置かれた環境によって流動的である。

 人間の価値観は曖昧な上、人間それぞれの価値観には相違があることは一般的に認められている。それゆえ、倫理的問題に対する答えは異なりやすく、異なれば現実的な不一致が生じる。
 人間の価値観はまとまりがない上に、世の中の事象が複雑で矛盾を多く含むことが、不一致の問題をこじれさせる。
 不一致の問題は解決し難く、誰かが、どこかの国が、このギャップを悪用できる状態にある。

 自然が作った生命を、人間がデザイン、操作する営みは、前代未聞、未知の世界だ。
 時間と共にデザイン技術は進化し、量子コンピュータ、人工知能の進展などがそれを加速させる。技術的に操作できることと、実際にすることは別次元であり、「できるから」といって、生命をシステム化の領域に移行させた場合の不具合は、取り返しのつかないものとなる。

 倫理学者のマイケル・サンデルは、「遺伝子操作は『世界そのもののnature(本性)の根本的な改変』であって,『与えられたもの(the given)』,すなわち思い通りにならない世界のnatureそのものを『激しく罵ろうとする衝動』に基づいている」と述べている。
 自然な生命を人間がデザインすることは、まさにこれに該当する。

 不可能だったことを技術の力で可能にし、生き永らえ、社会を発展させてきた人類にとって、ゲノム編集技術もその延長にあると捉えるかもしれない。
 しかしながら、生命をデザインする行為は、本当にその延長線上にあるのか。
破滅へ導く可能性を排除できるのか。

 ゲノムテクノロジーという光が強烈であるほど、強烈な影を作り、科学の二面性のコントラストを強める。
 全人類が、ゲノムテクノロジーを倫理的に望ましく、理想的に扱うことを期待したいが、その期待を保証する科学的根拠は現時点では見当たらない。

《『人類滅亡2つのシナリオ AIと遺伝子操作が悪用された未来』(朝日新書)では、制度設計の不備が招く「想定しうる最悪な末路」と、その回避策を詳述している》


●小川和也(おがわ-かずや)
北海道大学 産学・地域協働推進機構 客員教授。グランドデザイン株式会社CEO。専門は人工知能を用いた社会システムデザイン。人工知能関連特許多数。フューチャリストとしてテクノロジーを基点に未来のあり方を提言。著書『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)は教科書や入試問題に数多く採用され、テクノロジー教育を担っている。

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