goo何気無い日々が心地よい安寧

何気無い日々が続く様に。生きていく事の大変さがカナン。ある種空気の様な存在になりたいもの。

COP26でも高まらなかった原発「復権」の機運  202111

2021-11-22 10:19:00 | なるほど  ふぅ〜ん

COP26でも高まらなかった原発「復権」の機運
  Wedge より 211122   岡崎研究所


 英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1・5度に抑える努力を追求する、石炭火力発電を段階的に削減するなどの内容を含む「グラスゴー気候協定」を採択し、閉幕した。
 しかし,温室効果ガス削減に資するはずの原子力発電の「復権」の機運は高まっていない。

 11月4日付けのウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された論説‘Nuclear Power Is the Best Climate-Change Solution by Far’は、「原子力発電が気候変動への最善の解決策である。その全体的な温暖化ガスの排出は石炭の700分の1であり、太陽光の4分の1である」と指摘する。
 この論説の筆者の一人フィラットは技術ベンチャーキャピタルや情報技術会社で働いた電気工学のエンジニアで、もう一人のミラーは物理学者・分子生物学者だそうである。

 この論説は、次のように具体的数値を交えつつ、原発利用の有効性を説く。

・MITの核工学の教授、Jacopo Buongiornoの計算によれば、建設、鉱物採取、輸送、稼働、廃炉、廃棄物処理を含む原発のライフサイクルを通じて、温暖化ガスの排出は石炭の700分の1、ガスの400分の1、太陽光の4分の1である。

・電力1単位あたりの原発建設のための必要な原料の量は同等の太陽光や風力よりずっと少ない。

・核廃棄物は明らかに処理が困難であるが、廃棄物の量は太陽光の1万分の1、風力の500分の1である。

・大規模原発の100億ドル、10年の計画・実施サイクルは小型モジュール反応炉で半分に減らせ、マイクロ反応炉でさらに半分にできる。

・マイクロ反応炉は5年から10年に一度燃料を供給するだけで1-20メガワットの発電(500-2000世帯に十分な電力供給ができる)が可能だ。これらは空気冷却でき、放射線を出すリスクなしに速やかに閉鎖可能で、小さなスペースしか必要としない。

・政治的ハードルを越えられるならば、マイクロ反応炉を電気自動車のための充電ステーションや大きな商船の推進力などいろいろな分野で使いうる。米海軍は50年以上問題なく船上核反応炉を使ってきた。

・原子力発電は安く、効率的で、非常に信頼性があり、ほぼ炭素排出しない。小型反応炉を含む新設計は大規模放射能汚染のリスクを大きく下げる。

 上記論説は、ご紹介した要点からも明らかな通り、脱炭素戦略で原発が果たすべき役割を強調し、特に小型原発を多く作り、炭素排出なしに電力を供給しうるようになれば、脱炭素化を痛みなく実行できると説いている。

 2050年におけるカーボン・ニュートラルを目指す電源構成では、原子力の部分をより大きくすることは今後の小型原子炉の技術開発状況によっては十分可能であると考えられる。

⚫︎原発事故と気候変動による災害どちらが危険か
 福島の原発事故は原発への逆風を強めたが、カーボン・ニュートラルを実現するためには、二酸化炭素をほとんど排出しない原子力発電を増やすのが最も有効なやり方であるというこの論説の趣旨には賛成できる。
 二酸化炭素排出削減と電力需要を両立させるためには、原子力発電が最も有効性が高いことを、この論説の数字は示している。原発反対論は根強いが、感情的な議論である面が強く、これは克服していくべきであろう。

 米国を含む各国での技術開発状況については、敏感になって情報収集を行っていくべきであろう。米海軍が50年以上問題なく船上核反応炉を使ってきたことは十分留意すべきことであると思われる。

 地球規模での気候変動が森林火災や台風の強大化などで人類の生存にもたらす危険と、原子力発電事故への恐怖は冷静に比較衡量すべきであり、発電をより多く原子力に頼る方が地球温暖化を許容する結果となるよりもずっといいように思われる。

 再生可能エネルギーがもてはやされているが、上記論説も指摘する通り、実のところは大きな環境負荷をもたらす。
 昨今の議論ではこの点にほとんど目を向けていないように思われる。なお、再生可能エネルギーでは太陽光発電が一番安いということであるが、このための敷地の確保は森林法上の規制もあり、日本ではそう簡単ではない。

 なお、最近、フランスのマクロン大統領は、エネルギー安全保障と脱炭素には原発が必要であるとして、同国内における原発の建設を再開することを表明している。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東大、光量子計算の万能プロ... | トップ | フライトの脱炭素化を実現す... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿