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能登地震で「アラブの人々」が悲しむ意外なワケ、被災地と世界をつなぐ“光”とは? 2024/01

2024-01-14 03:58:48 | ¿ はて?さて?びっくり!

能登地震で「アラブの人々」が悲しむ意外なワケ、被災地と世界をつなぐ“光”とは?
  ダイヤモンドOnline より 240114姫田小夏

  

 能登半島地震は甚大な被害をもたらし,輪島市の朝市通りにあった永井豪記念館が全焼した。
 実は、永井豪ファンの聖地の全焼に落胆したのは、日本のアニメファンだけではなかった。数々の英字メディアもこれを伝えたが、アラブニュース・ジャパンはその筆頭だった。(「China Report」著者 ジャーナリスト 姫田小夏)


⚫︎アラブで圧倒的な人気を得た永井豪氏のアニメ
 1月2日、アラブニュース・ジャパンは、「X」に投じられたダイナミックプロ(永井豪氏らのマネジメント会社)の公式コメントを紹介しつつ、痛ましい被害の現状を伝えた。
 アラブニュースとは、1975年に誕生したサウジアラビア初の英語新聞で、その後2019年にアラブニュース・ジャパンが創刊された。

 アラブニュース・ジャパンのロゴは、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『UFOロボ グレンダイザー』の3部作などで知られる、石川県輪島市出身の漫画家・永井豪氏の手描きによるものだという。

 アラブ世界で圧倒的な人気を集めたのは、『マジンガーZ』以上に『UFOロボ グレンダイザー』(以下、グレンダイザー)だった。日本で放送されたのは1975~77年だったが、1980年代には国境を越え、レバノンのテレビ局を皮切りに、シリア、ヨルダン、イラク、エジプト、クウェートなど中東一帯で『GOLDORAK』という名称で放映された。

 シリアで生まれ育ち、その後カナダに移民したカナダ国籍の実業家エリックさん(仮名、46歳)は「グレンダイザーは中東の子どもたちにとってのヒーローで、私自身も無我夢中でこれを見ていた」と話す。

 宗教色の強い中東で放送に前向きだったのは、「ベガ星連合軍に追われて地球にやってきた主人公がロボットに乗って戦う」という単純なストーリーが、「祖国防衛、敵に立ち向かうという価値観」(アラブニュース・ジャパン)に合致したからだとも受け止められている。

 その一方でエリックさんは「当時はディズニーなどの米国のアニメも放送されていましたが、日本のアニメには正義と勇気、そして強い愛を感じた」と回想する。

⚫︎欧州の書店では日本のマンガコーナーが人気
 日本のコンテンツは中国や香港、台湾などアジア圏で長年人気を博してきたが、欧州でも年々その熱量が高まっている。

 筆者は2023年末にドイツとイタリアを訪れた。フランクフルト・ツァイル通りの大型書店・Hugendubelにある日本のマンガコーナーは、想像を超えた充実ぶりだった。

「ドイツ人は無類の読書好き」ともいわれ、店内は客でごった返しており、地下の一角では『NARUTO』や『ワンピース』や関連のアニメグッズが陳列され、壁面の棚にもぎっしりと日本のマンガが詰まっていた。「新興マーケットを開拓したい」という店側の意気込みと、これに群がる若者の熱気が渦巻き、独特の空気を醸し出していた。

 また、ローマでは、フランクフルトを上回る品ぞろえを目の当たりにした。『NARUTO』『鬼滅の刃』など「週刊少年ジャンプ」のビッグタイトルに加え、『20世紀少年』が目立つ位置に置かれていた。

{日本のマンガについては売り場面積も広いローマの書店}

 永井豪氏の作品では『ダイナミックヒーローズ』(『マジンガーZ』や『キューティーハニー』などのキャラクターが勢ぞろいして共闘する作品)、松本零士氏の作品では『クイーン・エメラルダス』も目を引いた。

 最も驚かされたのは、水木しげる氏の『コミック昭和史』が扱われていたことだ。水木氏の天才的描写力により、時代の裏を隅々まで視覚的に訴える作品は、当地の読者にとっても貴重な史料だということなのだろうか。

 さらに度肝を抜かれたのは、つげ義春氏(かつて水木氏のアシスタントだった)の『退屈な部屋』を表紙にした作品集を立ち読みしている男性がいたことだ。しかも棚には弟のつげ忠男氏による、分厚くて重い『舟に棲む』もある。イタリアには相当コアな日本のマンガファンがいるもようだ。

 イタリアにおける日本のアニメ・マンガ研究が進んでいることは、雑誌「ANIME CULT COLLECTION」(A4サイズで114ページ)の継続的な発行からも推察することができる。

 筆者は池田理代子氏の『ベルサイユのばら』の特集号を購入したが、巻頭のCEOメッセージからは、アニメーションのレベルの高さ、作品が与えるメッセージの現代性(主人公オスカルが女性であるという点)、また欧州では人によっては語ることをためらう「フランス革命」を題材にしていることなど、複数の点において強い衝撃を受けている様子が伝わってきた。

 欧州では日本のマンガが相当のインパクトを持って受け入れられているようだ。

⚫︎日本の背中を追い、国産アニメに自信をつける中国
 2021年8月、ドイツ最大といわれる日本のアニメ・ジャパンエキスポ「ドコミ」がデュッセルドルフで開催された。「ドコミ」とはドイツ・コミック・マーケットの略称で、アニメ、マンガ、ゲーム、コスプレなど、“日本ファン必見のイベント”として欧州全域から参加者が集まる。

 この年、「ドコミ」ではある変化が起こっていた。参加した欧州在住の大内奈々さん(仮名)によると、「かなりの数の欧州人が、“原神(げんしん)キャラのコスプレ”で来場していた」というのだ。『原神』は、中国のゲーム会社miHoYo(ミホヨ)が開発するオンラインゲームだ。日本でもクオリティーの高さとともに支持層を広げているが、欧州でも爆発的な人気を博している。

 前述のフランクフルトの書店には、大ヒットした中国のBL小説『魔道祖師』の作者で知られる墨香銅臭氏による『天官賜福』が平積みされていた。

 最近はアニメ『リンケージ』が話題で、2019年にシーズン1を出して後、中国のビリビリ動画で6億1000万回以上の再生回数をたたき出した。このアニメは「中国産アニメの光」として中国内で高く称賛されている。

 同アニメは、黙示録的ファンタジーで、前例のない災害で地球の生物圏が滅亡の危機に瀕し、人間は空中都市「灯台」で生活しているというストーリーだ。この作品について、中国の英字紙チャイナデイリーは「テクノロジーと倫理の複雑な相互作用について思考を促し、視聴者は中国的SFと中国文化の神髄に没入できる」とした論評を掲載している。
 世界で愛される日本のコンテンツだが、その背中を追う中国のアニメも日進月歩だ。近い将来、中国に取って代わる日が来るのだろうか。
 ちなみに『リンケージ』については、2023年11月にシーズン2の予告編がリリースされたが、まだ公開されていない。中国における政権の方向性がクリエイティブな活動にもたらす影響が案じられる。

⚫︎人生の選択や行動に大きな影響を与える日本のアニメ
 日本のアニメは、日本人のみならず外国人の人生の選択や行動に大きな影響を与えている。
 たとえば、中国人留学生に日本を選んだ動機を尋ねると、「『名探偵コナン』に出てくる日本の名所に引かれたから」といったコメントが返ってくることがたびたびある。
 近年は日本の美大を志す中国人留学生が増えているが、その根底には「『ウルトラセブン』に衝撃を受けた」などの子どもの頃の原体験があったりする。王智龍さん(仮名)は日本の“怪獣文化”に深いメッセージ性や独特の思考を見いだし、アナログの特撮技術を学びたいと日本での滞在を決意したという。
 中国人留学生の中には、日本の福祉関係の大学に進学した劉英傑さん(仮名)もいた。京都アニメーションが制作するアニメ作品の熱狂的ファンだった劉さんは、2019年に起こった放火による全焼と多くの死者を出した“京アニ事件”に強いショックを受けた。そんな彼がたどり着いたのは、福祉の道だった。心身の不安定が犯罪に結び付かないことを願ってのことだった。

 冒頭で紹介したエリックさんについて言えば、『グレンダイザー』に陶酔した少年時代から月日は流れ、2011年に悲願かなって商用で東京を訪れた。「大人になったら絶対に日本に行く」と心に決めた訪日1日目に秋葉原へ直行し、『グレンダイザー』のフィギュアを探し回った。
『グレンダイザー』の熱狂的なファンのエリックさん(仮名、シリア出身)は2023年のトルコ・シリア大地震に今回の能登半島地震を重ねている
 そして2024年。エリックさんはコロナ禍明けの訪日旅行を楽しみにしていた。もちろん、永井豪記念館はそのハイライトだった。しかし今はもうない。
 エリックさんは「永井豪氏にとっても、記念館にとっても、さらにはこの町や地元の人々にとっても大変なことが起きたことを知って心を痛めている。人々の生活が元に戻るには長い時間がかかるかもしれないが、町や記念館が再び力強く立ち上がることを祈りたい」と話していた。

 石川県輪島市は人口約2万3000人の小さな地方都市だ。その地方都市がアニメを通して世界にもつながっている。
 先が見えない不安の中でわずかな光があるとすれば、私たち日本人だけでなく、世界各地の永井豪ファンもまた被災地に思いを寄せてくれているということも、その一つではないだろうか。
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