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📗 読まずに死ねない本がある 前田速夫『老年の読書』インタビュー 202301

2023-01-22 23:01:00 | 📗 この本

読まずに死ねない本がある 前田速夫『老年の読書』インタビュー
 Wedges より 230122  足立倫行


『老年の読書』(新潮選書)。前田速夫(まえだ・はやお)。1944年、福井県生まれ。東京大学文学部英米文学科卒業。68年、新潮社入社。95年から2003年まで文芸誌「新潮」編集長を務める。
 87年より白山信仰などの研究を目的に「白山の会」を結成。著書に『異界歴程』『余多歩き 菊池山哉の人と学問』(読売文学賞受賞)、『白の民俗学へ 白山信仰の謎を追って』『古典遊歴 見失われた異空間を尋ねて』『白山信仰の謎と被差別部落』『「新しき村」の百年 〈愚者の園〉の真実』『海人族の古代史』『谷川健一と谷川雁 精神の空洞化に抗して』『未完のユートピア 新生・新しき村のために』など。

 著者の前田速夫さんが『老年の読書』(新潮選書)を書く契機は、2013年に突然、68歳で末期がんの宣告を受けたことだった。
 前田さんは60歳で出版社を退職後、在野の民俗学徒として精力的に調査・執筆活動を続けていたが、体調不良で受診するや「ステージ4」の大腸がんと判明したのだ。
 大腸と肝臓、2度の大きな手術を受け、「奇跡的に」命を取りとめた。そして生命の危機との直面は、当然死生観を揺るがせた。
 「末期がん宣告で自分の死と老いを身近に感じたため、改めて、古今の名著から偉人・達人の境地に近付きたいと願ったわけですね?」

 「ええ。もう後がないとわかったので、民俗学研究の資料を除いて、死ぬまでにもう一度読んでおきたいと思った本以外は、膨大な図書を思い切って処分したんです」
 いつでも再読できるように厳選して書棚に残された書物。それが、古代ローマのキケロ『老年について』から山田風太郎『人間臨終図巻』まで、本書掲載の50余冊である。

⚫︎遅咲きの人生
 「日本人の老年期の志向には、昔から、鴨長明『方丈記』や松尾芭蕉作品のような隠遁志向と、コラムの井上ひさし『四千万歩の男』で描かれた伊能忠敬のような”遅咲きの人生“志向があります。前田さんは、どちらでしょう。やはり遅咲き派ですか?」

 「世捨て人にはなれませんよね。私も基本が年金生活だから隠遁はしておれない。自分自身が遅咲きなので遅咲き派に共感しますけど、でもあくせく仕事に忙殺されるのは御免ですね。最初の方でローマの哲人セネカも言うように、目先の何かに忙殺されず、自分にゆったりと向き合って過ごしたいです」

 本書の読書案内で圧倒的に異色なのは、女性作家とその著書を紹介した一章である。
例えば、文芸誌編集者時代の前田さんが担当で自宅を訪れたことのある宇野千代。

 「当時70代の宇野さんの著書『幸福』の中に、風呂上がりの自分の裸がボッチチェリのヴィーナスに似ている、とあります。また85歳の作『生きて行く私』では、”自分が不幸が好きなときは不幸だし、幸福が好きなときは幸福だ„と。瀬戸内寂聴さんもすごい。男を成長の糧としてきた岡本かの子や伊藤野枝などの評伝を幾つも書き、出家後も執筆、説法、人生相談とばく進し続けましたね」

 「女性にはかなわないな、と思います」
 「女性作家が“老いていよいよ華やぐ„のは、生来の逞しい生命力のせいでしょうか、あるいは男性より強いナルチシズムのせい?」
 「強くないと生き残れなかったんじゃないですか。彼女たちの人生は闘いの連続だったから、でしょうね」

⚫︎農業共同体「新しき村」
 本書のもう一つの特徴は、トルストイの作品から、トルストイの「人類共生」の教えに影響を受けた武者小路実篤、その実践である農業共同体「新しき村」、そして前田さんの両親がその村外会員だった話への展開である。

 「中高生の頃は“仲良きことは美しき哉„などの実篤語録に反発していましたが、退職後ですね、本当の価値がようやくわかったのは」

 開村百年を前に宮崎県や埼玉県の「生き残り」村民を訪ね、後継者不足による村消滅の危機と「自他共生、人類共生」の理念の普遍性を再認識し、村の復興を決意したのである。

 「では現在、具体的な活動もしている?」
 「昨年から一般財団法人から公益財団法人に衣替えしている最中で、村内・村外ともに新しい会員を募集しています」

 「本書には、“今こそ「新しき村」の出番„とありますが、この意味は?」
 「100年前に実篤が共同体を作った頃は、現代とよく似た時代でした」

 その年、1918年にはスペイン風邪が猛威を振るい、シベリア出兵やコメ騒動もあった。

 「コロナとウクライナ戦争で分断された現代同様です。そんな時代には、小さな共同体の再生から始めるのが一番だと思います」

⚫︎ハイデガー『存在と時間』
 入院中に読み、特に感銘を受けた本に、ハイデガー『存在と時間』があった。

 「難解な哲学書ですが、前田さんは“良心の叫び声に応じ、死へと先駆する決意をすれば(死の不安がなくなる)„という箇所を特に取り出して解説を加えていますね」
 「受身のまま病床で死ぬのは避けたかったので、自分から死に近付き、飛び越して、死を引き寄せる、という部分に強く影響を受けました」

 「そして“死からの叫び声に応じる„ことは、前田さんが退職以来研究対象としてきた白山信仰と、実は同じである、と?」

 白山信仰は北陸の白山に対する山岳信仰で主神は菊理媛(瀬織津媛)。みそぎを勧める水神であり、死からの再生をつかさどる女神でもある。

 前田さんは2006年の著書『白の民俗学』(河出書房新社)で、「白は聖なるもの、清浄なるものの象徴であると同時に、魔と死の象徴」と記している。
 「白の神秘を直視して、白本来の輝きと戦慄を取り戻せば、死=再生だと思うんです。それはハイデガーの考えに通じるのでは、と」

山田風太郎『人間臨終図巻』
 もっとも、前田さんは本書の何カ所かで、「人は死ねばゴミになる」「死後何も残らない」「魂はない」と書いている。従って今回の50数冊のうち、例えば山田風太郎『人間臨終図巻』などが、今の自分の好みのタイプであると。

 山田は同書で次のような寸言を残している。

 〈死んでみりゃあ、はじめから居なかったのとおんなじじゃないか、みなの衆〉
 〈自分が消滅したあと、空も地上もまったく同じ世界とは、実に何たる怪事〉
 〈臨終の人間「ああ、神も仏も無いものか?」神仏「無い」〉

 「死を突き放して眺めていて、いっそすがすがしいですよね。私の感性になぜか合うんです」

⚫︎魂があってほしい、他界が存在してほしい、という願望
 しかし、「人は死ねばゴミ」で、消滅した後に何も残らない(魂もない)のであれば、民俗学の先達たちが繰り返し語ってきた「来世とのつながり」はどう考えたらいいのか。

 「前田さんが師と仰ぐ、民俗学者である、柳田國男は祖霊観、折口信夫はマレビト観、谷川健一は“明るい冥府„観、それぞれ来世の存在を前提としていますよね。前田さんの“白の信仰„の死=再生もそう。でも、そういう民俗学の世界は、“人は死ねばゴミ„観と矛盾するのでは?」

 「死ねば肉体も精神も無となることは科学的にハッキリしています。だけど、魂があってほしい、他界が存在してほしい、という人間の思い、願望までは否定できないと思います」

 死んだ人の思いを今も感じる。あの世に照らされて、この世がある。そうした思考法は、古今東西絶えることなく続いてきた。

 民俗学もその思考法を継承している、と言う。
 「それを全否定するのは、人間として余りに傲慢なのではありませんか?」

 従って「来世」は無いけれど、あるのだ。

 「これからは、どういう生き方を?」
 「やりたいことが余りにたくさんあるので(笑)。やりながらパタリと逝けば、それが本望です」

 本書冒頭にあったキケロ『老年について』の中の言葉が、思わず浮かんだ。

 〈研究や学問が幾らかでもあれば、暇のある老年ほど喜ばしいものはないのだ〉
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🚶‍♀️…右岸…宇治橋…左岸…隠元橋…🔄 230122

2023-01-22 18:05:00 | 🚶 歩く
🚶‍♀️…右岸河川敷👀…宇治橋…左岸河川敷…隠元橋…右岸堤防道…🔄>
🚶‍♀️10867歩3kg19F↖︎5

🌤:隠元橋8℃風穏やか

 堤防坂道ダッシュ2本で体温急上昇
右岸河川敷:宇治川高架橋〜宇治橋間の川辺の木々ほぼ伐採(直径30cm前後多数有り)視界・足元スッキリ



右岸河川敷

同上

同上








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あなたの「五臓六腑」は健康?セルフチェックしてみよう 202301

2023-01-22 04:12:57 | 健康関連

あなたの「五臓六腑」は健康?セルフチェックしてみよう
 GINGER より 230122


 漢方には基礎となる考え方がいくつもあり、身体全体を総合的にとらえて体質や状態を判断していきます。
 今回は、前回解説した「五臓六腑」と不調の関係についてお伝えします。今身体がどのような状態にあるのかを判断する大きなヒントになるので、ぜひセルフチェックしてみてくださいね。
 (漢方専門家/わたし漢方 さっち先生)


⚫︎不調=「五臓六腑」のバランスが崩れているかも?
 陰陽五行説では相互のバランスが大切にされていますが、それは私たちの身体も同じです。
「五臓六腑」それぞれの働きが均衡を保って成り立った状態が健康ですが、どれかに偏ったり、崩れてしまうとさまざまな不調が出てしまいます。

 私たちの身体はとても敏感なので、生活環境や季節の変化、生活習慣の乱れなど、自分でも気づかないうちに不調になる可能性があります。当てはまる症状はないか、どう対処すればいいのか、ひとつずつ見ていきましょう。


▶︎「肝」が弱っているとき
こんな症状ありませんか?
・イライラ、怒りっぽい
・のぼせ、ほてり
・頭痛、頭がぼんやりする
・目の疲れ、充血
・倦怠感
・月経不順

どうすればいい?
 睡眠のリズムが乱れていると、肝が弱りやすくなります。できる限り同じ時間に就寝・起床することを心がけ、夜ふかしや朝寝坊はほどほどに。目との関係も深いので、パソコンやスマホなどを多く使用する方は適度に目を休める時間を設け、寝る直前にはなるべくブルーライトを浴びないようにしましょう。


▶︎「心」が弱っているとき
こんな症状ありませんか?
・動悸、息苦しさ
・憂鬱、不安感、焦燥感
・不眠
・発熱
・舌の炎症
・血圧の異常

 どうすればいい?
頑張りすぎてしまう人やストレスが溜まりやすい人は適度な運動、入浴、アロマテラピーなど自分に合ったリラックスの時間を持つようにしましょう。辛味のある食材は弱った体への刺激になるのでなるべく避け、香りの良い香味野菜やハーブなどの食材を取り入れてみてください。


▶︎「脾」が弱っているとき
こんな症状ありませんか?
・食欲不振、消化不良、胃弱
・吐き気、嘔吐
・下痢、軟便
・腹部の膨張感
・身体のだるさ
・不正出血

 どうすればいい?
消化器官の健康は栄養を食べ物から受け取る私たちにとってとても重要です。食事のリズムが不規則な方、暴飲暴食をしがちな方、食生活の偏りがある方は規則正しい食事を心がけましょう。冷たい食べ物や飲み物は体を冷やす原因になるので食べる量には注意。


▶︎「肺」が弱っているとき
こんな症状ありませんか?
・呼吸不全
・鼻水、鼻づまり
・咳
・口や喉の乾燥
・アレルギー症状
・汗トラブル

 どうすればいい?
免疫力とも関わりが深いので、特に乾燥やウイルスの流行する季節はうがいをしっかりしたり、加湿器を用いたりして乾燥を避けましょう。朝起きたら日光を浴びたり、自然のある場所へ出かけるなどもおすすめ。喫煙の習慣がある方は禁煙を。


▶︎「腎」が弱っているとき
こんな症状ありませんか?
・関節痛
・足腰の弱り
・めまい、耳鳴り
・冷え
・むくみ
・頻尿

どうすればいい?
どうしても年齢とともに弱っていく部分なので、パワーを強めるというよりもなるべく弱らせないようにすることが大切です。下半身を冷やさないようにし、適度な運動で足腰を鍛えましょう。



◆「わたし漢方」で届く漢方薬のイメージ
執筆者/漢方専門家 さっち先生
LINEでいつでも相談・処方検討できる漢方薬専門店「わたし漢方」の漢方アドバイザー。「不調とともに生きる女性の毎日を快適にし、やりたいことに全力投球できる手助けがしたい」という想いをもとに、東洋医学に基づいた体質改善の秘訣や健康食の紹介、漢方を取り入れた養生法などを発信している。
わたし漢方
LINEで体の悩みを薬剤師に相談すると、自分にあった漢方薬を自宅に配送してくれるオンライン漢方相談サービス。カウンセリングはすべてLINE上で、最初の問診は24時間相談可能。漢方の専門家が直接お悩みに回答。初回の問診はすべて無料なので、気軽に相談できます。
https://www.watashikampo.com/
Instagram @watashikampo

TEXT=わたし漢方
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原子力発電所の原子炉を小型化する新時代の発電方式「小型モジュール炉」の計画が世界各国で進められている 202301

2023-01-22 04:05:00 | なるほど  ふぅ〜ん

原子力発電所の原子炉を小型化する新時代の発電方式「小型モジュール炉」の計画が世界各国で進められている
 Gigazain より 230122


 中国の 海南島では2021年7月から小型の原子炉の建造が開始されています。「 玲龍一号」と名付けられた小型の原子炉は、クリーンエネルギーが求められる時代における核分裂による原子力発電の新たなモデルになる可能性を期待されています。

The Future of Fission Reactors May Be Small - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/small-modular-reactors

 玲龍一号は2026年から稼働する予定で、稼働後には約40台の風力発電タービンに相当する125メガワットで発電することができます。しかし1000メガワットで発電することもある大型原子炉に比べると、玲龍一号の発電量は小規模です。それでも、設計者の多くは原子炉の小型化を望んでいます。

 理由の一つは、大型の原子炉は高価で、建造作業に遅延が発生しやすいためです。アメリカで建造中の ボーグル原発は予定より7年遅れの2023年第1四半期に稼働を開始する予定です。また、フランスの フラマンヴィル原子力発電所は10年遅れで稼働を開始しています。
 また、2009年から2019年までの約10年間で、原子力発電に必要なコストが約26%上昇した一方で、太陽光発電や風力発電に必要なコストは急落したとのこと。

 それでも、従来の火力発電や水力発電に比べると比較的環境に優しいとされる原子力発電を望む声は多いです。しかし、一部の原子力発電の支持者は、巨大な原子炉については否定的で、玲龍一号のような小型でモジュール化された原子炉を複数使用することで、クリーンエネルギーへの移行を適切に実現できる可能性があると予測しています。

 玲龍一号のような小型原子炉は 小型モジュール炉(SMR)と呼ばれ、建造が安価で、事故のリスクが低いと考えられています。

⚫︎新時代の発電方式として注目される「小型モジュール式原子炉」とは? - 

 記事作成時点でSMRは実験段階で、仮に玲龍一号が成功した場合、中国政府はその設計を利用して多くの建造プロジェクトや、海水を淡水化するプラントに電力を供給することを 計画しています。

 アメリカのスタートアップ「 NuScale Power」は77メガワットのSMRを開発しており、最大12基の原子炉をまとめて巨大な原子力発電所を建造することを想定しています。また、NuScale Powerは2030年までにアメリカ・アイダホ州にアメリカでの工場を建造することを計画しています。
  by Oregon State University

 しかし、SMRに対する疑問の声も上がっており、スタンフォード大学とブリティッシュコロンビア大学の 研究によると、SMRは従来の原子力発電所よりも多くの放射性廃棄物が発生するそうです。さらに、一部の原子力アナリストは悪意のある人物がSMRの設計を利用して、兵器に転用できるプルトニウムを作成する可能性があることを懸念しています。
 それでも、 アメリカ合衆国原子力規制委員会や イギリス原子力規制局、 フランス原子力安全局などの原子力規制当局がSMRを承認し始めています。

 現在の大型の原子炉のほとんどは ウラン235を3~5%含む燃料を使用していますが、SMRはウラン235を5~20%含む燃料が必要になるとのこと。 高含有低濃縮ウラン(HALEU)と呼ばれる後者の燃料は、記事作成時点でロシアの Techsnabexport(TENEX)の1社の販売にとどまっています。

 アメリカの2022年の インフレ削減法では、アメリカ国内でHALEUを製造・輸送する研究を行う企業に約7億ドル(約910億円)が投資されているように、世界中でロシアに依存しない、地政学の影響を受けにくいグローバルなHALEUサプライチェーンを確立することが課題とされています。
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老化をコントロールする方法「リプログラミング」とは 2023/01

2023-01-22 04:02:40 | ¿ はて?さて?びっくり!

老化をコントロールする方法「リプログラミング」とは
  Wotopi より 230122 


 老いを“病気”ととらえ、適切な選択をすることで老化は新たなフェーズへ——。今、世界中で「長く健康に生きる」ための研究が行われています。

「健康長寿」を目指しながら、年齢を巻き戻す「エイジングケア3.0」という新しいフェーズを提案する「fracora(フラコラ)」は、運営するYouTube番組「生命科学アカデミー」で、最先端の生命科学の知識を紹介しています。

 今回は「老化」の秘密に迫るため、近畿大学の客員教授で、日本抗加齢医学会理事長の山田秀和先生をお迎えし、アンチエイジングについてたっぷりと語っていただきました。

⚫︎老化の特徴
──世界的に「老化の原因は9つある」という風に言われていて、私も著書なんかでも拝見していて、ベストセラーになっている本がありますよね。最近の研究のなかではいかがですか。

山田秀和先生(以下、山田):2013年に『Cell(セル)』という有名な雑誌(アメリカの学術雑誌)に、C・ロペス=オーチン先生(Carlos López-Otín/スペインの生化学者)たちのグループが、「9つの老化の特徴(証)」というのを出されました。
 その後、研究がどんどん進んで、いくつか特徴が増えてきました。去年のヨーロッパの会議で、「さらにこれぐらいまでは、老化に関係する特徴として言ったほうがいいんじゃないか」という要素が、5つ出ています。

いわゆる「オートファジー」の問題。それから、
「スプライシング」といって、メッセンジャーRNA(mRNA)ができてくるまでの調節機能があるかどうかということ。そして、いわゆる
「腸内細菌」層が関係するという部分。
「DNAの立体構造そのものに対する影響」の問題。最後に、
みなさんもよく言うように、老化は慢性炎症だと言われるわけですが、「炎症」の問題。
 その5つが、つい最近雑誌に発表されたというのが、いまの現状です。

 あとは、そこに載っていないもので我々が重要視しているのは、
「コラーゲンがだんだん硬くなってくる」という特徴があります。
私たちは、それがすごく重要な老化の要因ではないかと思っています。さらに、ちょっとややこしい話で申し訳ないのですが、「レトロトランスポゾン」といって、我々は、昔から進化の過程のなかで色々な他の遺伝子の断片をいっぱい抱えています。それが動き出すことです。

──断片を抱えている?

山田:その断片が「レトロウイルス」といわれているものです。太古の時代からあった生命体というか、そういうものが体のなかにいて、それによって老化が促進する。多くが免疫機能の異常だと言われていますが、免疫力に異常が起こると「レトロウイルス」が動き出します。そして、色々な疾患が起こってくる。そのため、それも老化の大きな特徴ではないかと考えられています。

──それは、みんなが持っているのですか。

山田:みんなが持っています。けれど、レトロウイルスは進化に影響しているかもしれないので、必ずしも悪い話だけではありません。だから、ややこしいですよね。その研究は、今後どんどん進むと思います。

◆まとめ
・老化の原因に追加された5つ
①オートファジー
②スプライシング
③腸内細菌
④DNAの立体構造に対する影響
⑤炎症
 山田先生はさらに、コラーゲンが硬くなってくるという特徴と「レトロトランスポゾン」に注目している

⚫︎老化をコントロールする「リプログラミング」
──若返りの研究のなかで、「リプログラミング」というワードがありますが、その言葉について教えていただけますか。

山田:私たちの共通認識としては、山中(伸弥)先生がiPS細胞をつくられたときに、「山中4ファクター」といわれる4つの調整する遺伝子を入れて、それで皮膚の繊維芽細胞を若返らせました。その応用編ができていて、いま現在、少なくとも3つくらい有名な研究があります。そのうちの2つはもうネズミ(研究用のマウス)を用いて終わっています。山中先生の4ファクターのうち、3因子だけを放り込んで、ずっとそのままにしておくと、ネズミが完全に戻ってしまいます。

──ネズミの皮膚の老化が、でしょうか。

山田:全体の老化です。なので、途中で止めないといけません。僕らは「寸止め」と言いますが、ある年齢までその遺伝子を働かせて止める。すると、そこまで老化が巻き戻って、そこからもう一度動き出します。そういう研究があります。

──止めなければ、若返り続けるのですか。

山田:それこそ、卵に戻ってしまいます。「養老の滝」の話と一緒です。

 ご存知だと思いますが、「養老の滝」というのは、なかなか帰ってこない夫を妻が待っていた。しばらくすると夫が帰って来て、えらく若返っていた。妻が「どうしたの?」と聞いたら、「そこの山奥に滝があって、その滝の水を飲んだらこうなった」と言う。妻は喜んで、すぐに飛んで行ったわけですね。今度は、夫が家でいくら待っていても、妻が帰ってこない。それで、夫がその滝へ行った。すると、妻は赤ちゃんになっていた。

 これは奥の深い話で、要するに、なんでも「過ぎたるは及ばざるがごとし」というわけですね。

──要は、昔聞いたその神話が、現実化しているということなのですか。

山田:そうです。ドイツやアメリカにも、「若返りの泉」というような話がずっと昔からあります。それらは基本的には同じで、ある温泉だとかに入って水を飲むと若返るとか、そういう話が昔からどこの国にもあります。面白いですよね。

⚫︎老化の計測について
──他にはどういったお話がありますか。

山田:3つぐらいありまして、ひとつは『LIFESPAN(ライフスパン)─老いなき世界』(東洋経済新報社)という本を書いたデビッド・シンクレア(David A. Sinclair/オーストラリアの生物学者)が一世を風靡しました。彼は、「老化は病じゃないか」という立場を非常に鮮明にしている人です。彼が言っていることとしては、まず、緑内障になると神経細胞がやられてしまって視力が落ちるわけですね。

──それは、老化によってですね。

山田:はい。そのモデルに、先ほど言った山中先生の3ファクターを入れて(老化を)止めてやると、視力が戻ったというのがひとつめの主張です。

 その前に、ファン・カルロス・イスピスア・ベルモンテ(Juan Carlos Izpisua Belmonte/アメリカの発生生物工学者)という先生が、早老症のネズミを使って実験をなさいました。ある程度加齢が進んだネズミがリプログラミングによって若くなったと。だから、最初の段階から使うのではなく、歳がいったネズミに山中ファクターを入れて、適切な位置で止めると、いわゆる「若返る」と。ここまで来ているということ。

 現実には、いまネズミを用いる実験まで来たので、さらにもうちょっと大きな高等動物に使えるか? というのが次の30年、というのが問題です。僕の立場は、まだWHOは言っていませんけど、きっと「ICD-12」ができるだろうと考えています。いまから30年先というと、2050年の世界なわけですよ。「ICD-12」ができるときに、疾患の一番トップに「エイジング(aging)」、つまり「老化」を入れたいというのが、僕の一番の目的です。

──30年は長いですから、先生には早く研究を進めていただきたいです(笑)。

山田:30年間のあいだに、ネズミだとか、あるいは他の動物で基礎研究はできますので、そこまでいっておく必要は当然あるわけです。

もうひとつは、「老化の計測」が一番難しい。つまり、何をもって「若返った」と証明するか。それを「エンドポイント」といいますが、そのポイントを探す作業をしないといけない。なので、みんなで一緒に「老化の計測」ということにエネルギーを注いでいるわけですね。

──どこからどこまで戻すのか。それは人によって違いますから。

山田:統計的有意差が出ないと、実験としては認められない、承認されないということなんです。

──すごい研究ですね、先生。

山田:それを僕がやるわけではないけれど、世界中の研究者たちがやって、みなさんで意見を合わせて、それを世界的に承認していくという作業が必要じゃないかと思いますね。

◆まとめ
・リプログラミングによって、ある年齢まで3つの遺伝子を働かせて止めると、老化が巻き戻ることが可能に!

エイジングケアは「受精の瞬間」から考えるべき?
──いままでのお話から、私たちはどれくらいからエイジングケアをすればいいと判断したらいいでしょうか。

山田:30歳くらいまでが健康のピークだと言われていますので、そのくらいから老化に対応していくというのもひとつの考え方です。ですが、「エピジェネティクス」という、免疫とかそういうことを全部含めている環境の大きな考え方があります。
 そういう立場でいうと、実際は「受精の瞬間」ぐらいから老化について考えていく必要がある。だから、「どういう受精環境でこどもができるか」ということを含めて考えないと、老化をコントロールするのは難しいのではないかという考え方です。

──だいぶ無意識の世界のお話ですね。自分たちがこども、子孫を残すときからケアしておいてあげなければいけないということでしょうか。

山田:そうなんです。

──これはすごいお話ですね。具体的には、どういうことをケアしたらいいのでしょうか。

山田:この話のスタートは、第二次世界大戦のときになります。ドイツがオランダの村を封鎖したのですが、そのときに一万何千人もの方々が、不適切な栄養だとかの環境下に置かれました。この方々の調査が、ずっとされています。その村は、周囲の人たちと民族的にはほぼ同じだとされている。なので、周囲の村との差が出てきました。

 色んな疾患、心血管イベント、精神的な病気などが、そこのグループ(村)で多発したことがわかってきました。
 一代目は、単に妊娠中に(不適切な栄養などの)酷いことが起こったという理由があった。それでは、その次の世代はどうか。
 二代目を見ると、やっぱり疾患が発生するなどの頻度が少し高かった。これはなぜか? と。一代目は環境が悪かったけれど、二代目は解放されているから、関係ないんじゃないの? と。
 ところが、さらに三代目が出はじめて、その世代でもやっぱり周囲と差が出るんです。周囲の村との遺伝的バックグラウンドは一緒なはずなんですよ。ところが、一回の妊娠なり、その時点での環境暴露の変化が、三世代にわたってキャリーしているという問題が出てきました。

 その理由は全然わかっていない時期が長く、まだまだ解決しているわけではありません。しかし、いまの立場に当てはめると、エピジェネティクスになにかレギュレーションが起こっている可能性があると考えられます。考え方の違う研究者もいるかもしれませんが、我々の立場としては、遺伝的というのは「DNAに乗っている」と思っていた。
 けれど、そういう意味でいうと、「DNAの化学修飾」であるエピジェネティクスにも影響して、それが次の世代へ、次の世代へとキャリーしているのではないかと、みんなが心配しはじめています。

──細胞レベルでキャリーしているわけですよね。

山田:そうなんです。だから、細胞のなかのDNAの化学修飾が、次の世代に残るということです。だから(オランダの村のようなことが)起こったと考えるのが、いまは一番合理的なのではないかと。そうすると、いま僕たちがやっている「老化の計測」というときに使っている方法と同じことを起こしているわけですよね。

──そこになにかしらの作用をしてあげることで、若返るかもしれない。

山田:はい。それがリプログラミングそのものなんですよ。だから、まったく全部同じ世界なので、これは老化をコントロールする素晴らしい方法ではないかと、みんな思ってきたわけですよね。

──科学は深くて広い、まるで宇宙のようです。次回は、腸と脳と、そして皮膚が、老化に重大な影響を及ぼしていたという研究について、引き続きお話をうかがっていきたいと思います。

◆まとめ
・老化は受精の瞬間から考えていく必要がある
・環境暴露の変化がエピジェネティクスに影響を与え、何世代にもわたりキャリーされてしまう
・リプログラミングによって、老化をコントロールすることができるようになってきた
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