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水素も脱炭素も任せろ 東レの世界最高レベルのすごい膜  202109

2021-09-15 17:36:00 | ¿ はて?さて?びっくり!

水素も脱炭素も任せろ 東レの世界最高レベルのすごい膜
   EnergyShift編集部  より 210915 

 水素社会に向けて、日本企業が続々と動きを見せる中、脱炭素の実現には、日本の素材技術が欠かせないとして、世界の脱炭素ジャイアントが日本企業と提携した。それが東レとシーメンス・エナジーAGの提携だ。両社の提携が水素製造にどのような影響をもたらすのか。ゆーだいこと前田雄大が解説する。

エナシフTV連動企画

⚫︎日本の素材技術がなければ、脱炭素は加速しない
 半導体など日本がかつて強かった分野の多くが苦戦している中、いまだに強いのが「素材」分野だ。

 実は、いま世界を動かさんとしている脱炭素は、この素材分野が重要になっている。例えば、人工光合成では触媒や膜などの素材が肝になっており、そこで高い技術を示したのが、日本の素材技術だ。そう、日本の素材技術がなければ、脱炭素は加速しない。

 脱炭素は、世界を舞台に脱炭素ジャイアントが技術開発を競い合っている。そのジャイアントが水素製造には日本企業の素材が欠かせないとして、提携を申し出てきた。それが9月6日に発表された東レと世界的な再生可能エネルギー企業を傘下に持つシーメンス・エナジーの提携だ。

 そこで今回は、両社の提携を紹介したうえで、水素製造、脱炭素にどのような影響をもたらすのか。次の3つの論点を解説したい。

今回対象となったPEM型水素製造とは何か、なぜ素材が重要なのか
今回使われた東レの炭化水素系電解質膜とは何か
脱炭素に欠かせない、東レが持つ先進的技術とは
なぜ、シーメンス・エナジーは東レと提携したのか

 今回、東レと提携したのが、ドイツに本拠を置くシーメンス・エナジーAG。
 シーメンス自体は情報通信、交通、防衛、生産設備、家電製品等の分野で製造、およびシステム・ソリューション事業を手掛ける世界的企業だが、このエネルギー部門が分離して出来たのがシーメンス・エナジーだ。

 シーメンス・エナジーは傘下にシーメンス・ガメサという会社を持っており、このシーメンス・ガメサが、この脱炭素時代、そして風力発電が世界的に拡大するというこの時代において、風力タービンメーカーとしてはヴェスタスに次いで2位に位置している。
 そして、日本がこれから力を入れていく洋上風力については、ぶっちぎりでいま1位のタービン会社になっている。

 こうした特色を持つシーメンス・エナジーが、日本が力を入れている水素、このフィールドにも参入してきた。
 今回、シーメンス・エナジーと東レは、革新的なPEM型水電解を用いたグリーン水素製造技術の創出、これによってカーボンニュートラルな社会の実現に貢献するという名目で、両社の「戦略的パートナーシップの構築」に係る基本合意書を締結した。世界の脱炭素ジャイアントと、日本の東レがタッグを組んで、水素に取り組むというわけだ。

 この提携で何をしていくのか。洋上風力のように日本市場を奪いにきた、という話ではない。ともに世界を取りに行くぞ、という形になっている。つまり、東レの素材が世界で勝負、という展開だ。
 発表によれば、今後、飛躍的に拡大が予想される世界市場獲得に向けて、両社の水素・燃料電池関連技術・事業、グローバルネットワークを活かして世界各国・地域の顧客に最適なソリューションを提供し、再エネ由来グリーン水素の導入拡大、および戦略的なグローバル事業展開を共同で推進していく。

 いま、ようやくグリーン水素という文脈が世界で出始めてきた。水素は脱炭素が進展した次、つまり、次の次だ、という話は以前、解説したが、そこに、シーメンス・エナジーとしてはシェア拡大に向け、今から体制を構築したいという思惑がある。ただし、製造の肝となる技術、そこが足りない。そこで白羽の矢が立ったのが東レだった。

 発表においては、シーメンス・エナジーと東レは、再エネ等由来の電力を用いて、水の電気分解からグリーン水素を製造、そこで得られたグリーン水素を、大規模発電等の電力用途のみならず、熱・輸送燃料・産業用途で活用するセクターカップリングによって脱炭素を進展させていく、という。

 さっそく東レとシーメンス・エナジーは、8月に採択されたNEDOのグリーンイノベーション基金事業「再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造プロジェクト」に参画。このプロジェクトで、国内最大級10MWクラスのPEM型大型水電解装置の技術開発、建設、実証を共同で推進していくとした。

 このプロジェクトで今回採用された水素装置がPEM型である。PEM型とは何か、気になる読者も多いはずだ。そこで、PEM型水素製造とは何か、なぜ素材が大事なのか、解説していきたい。

⚫︎PEM型水素製造とは何か
 今回、作るのはもちろん、再エネ由来のCO2フリーのグリーン水素だ。

水に電気を流し、電気分解して水素と酸素に分離する水電解、これが一般的な製造方法であり、3つ手法があるとされている。


 一つ目が、水に導電性のカリウムイオンなどを溶かしたアルカリ水電解法だ。

 アルカリ水に接するように陽極と陰極があり、その間を電気が流れ、その時にアルカリ水が分解して酸素と水素が生成される、という従来から使われている方法になる。
 そして、上図の一番右のものが高温水蒸気電解と呼ばれるものだ。水蒸気を電気分解する形で、通常の状態で水の電気分解を行うよりも高い効率で水素が製造されると考えらえている。現在、この高温水蒸気電解は原子力発電の排熱とセットで、と考えられているが、まだ研究開発段階にある手法になる。

 対して、今回、採用されたのが、上図真ん中のPEM方式。PEMというのはPolymer Electrolyte Membraneの略で、日本語名称は固体高分子膜。PEM方式では、まず、陽極で酸化反応が起き、そこでプロトン(H+)が発生する。そのプロトンがPEMを通って陰極に移動するときに還元反応が生じる。このときプロトンが水素になる、という手法だ。

⚫︎PEM方式、2つの特徴
 このPEM方式の特徴が、アルカリ水電解と比較すると設備の専有面積が小さく、また製造される水素の純度が極めて高いために精製を必要としないといった点があげられる。こうした特徴があるものの、水素製造はまだ先進的な取り組みが始まったばかり。
 アルカリ水電解がいいのか、それともPEM方式がいいのか、そこはまだ結論は出ていない。そうした中、アルカリ水電解は、旭化成が取り組んでいる。PEM、アルカリ水電解、両にらみで、日本勢が競い合いリードしていって欲しい。

 このPEM方式、先述したとおり、膜を通って還元反応で水素が発生する。つまり、この膜が非常に肝になるわけだ。そして、膜といえば素材分野。日本企業が強い分野だ。

 そして、この膜、これまでは電解質膜にはフッ素系イオン交換膜等が使用されてきたのだが、近年登場して、ブレークスルーの予感を感じさせているのが、より電解効率の高い炭化水素系膜だ。

今回のPEM方式で使われたのが、そう、東レの炭化水素系膜。曰く、「独自開発の低ガス透過性の膜によって高効率化を実現した」とのことだが、この膜が非常に優れている。

そこで、次に今回使われた東レの炭化水素系電解質膜を解説していきたい。

⚫︎炭化水素系電解質膜とは何か
 東レの炭化水素系電解質膜の取組みは、脱炭素以前からはじまっており、2006年に開発し、実用化している。
 曰く、「東レは、2006年11月3日、ナノレベルでの分子構造制御技術を駆使し、水素を燃料とする燃料電池自動車などに適した炭化水素系電解質膜の開発に成功した」という。
 そしてこの時点ですでに、従来使われているフッ素系電解質膜は、高コスト、環境汚染の懸念、化学的耐久性が不十分などの課題があるので、炭化水素系の膜を開発した。

 これがどれくらいすごいのか。炭化水素系の膜の開発については、山梨大学がNEDOの支援を受け、燃料電池向けの高性能な非フッ素系電解質膜の開発に成功、という発表が一部ウェブメディアなどで報道されたのだが、それが2017年のこと。
 それに先駆けること10年以上前から,東レはこの炭化水素系電解質膜を開発していたわけだ。

ただし、ここから生産開始までが長かった。東レの資料には次のような形で記載されている。

出典:東レ

 サラッと炭化水素系電解質膜については2019年に生産を開始と書いてある。今回の実証ではまさにこの2019年生産開始の膜を使ったわけだが、2006年の開発からかかること10年以上。これだけの時間がかかった。

 この膜、さぞすごいのだろう、世界最高レベルではないかと探ったものの、東レが控えめなのか、あまり出てこない。
 単なる高効率な膜なのか? それでも探したところ、やはりあった。電力中央研究所が今年4月にまとめたこのレポートにしっかり書かれていた。
「PEMWEの材料面では、東レ株式会社が低コストで環境性に優れる炭化水素系電解質膜の開発に成功しており、その膜を用いた水電解は世界最高レベルの性能を示している」

 世界最高レベル。シーメンス・エナジーもそれを求めての連携だろう。
やはり凄かった、東レの素材。東レももっとアピールすべきではないか。

 今回の事業では、この世界最高レベルの東レの「炭化水素系電解質膜」をシーメンス・エナジーに供給。両社で協力して、シーメンス・エナジーのPEM型大型水電解スタック・装置「Elyzer」への搭載・実証・事業化を推進するとともに、グリーン水素の利活用分野へのコラボレーション拡大についても検討していく、という形になっている。

「やっちゃえ、東レ」、という感じだ。

 しかも東レ、水素文脈だけにはとどまらない。そこで、最後に脱炭素に関する東レの先進的技術について、紹介したい。

⚫︎脱炭素に欠かせない、東レの先進的技術とは
 水素は気体だ。東レが膜に強いと聞くと、水素を取り出す膜がすごいのではないかと思うだろう。そのとおり、非常に優れている。

 東レもしっかりアピールしている。その名も水素高選択透過高分子分離膜。
東レは、半世紀にわたり逆浸透膜に取り組んできたのだが、そこで培った精密界面重合技術を深化させ、混合ガスから水素を選択的にかつ高透過可能な、世界最高レベルの高分子系分離膜の創出に成功した。

 分離膜構造は次の図のようになっており、ポリアミド製のものが使われているが、ここもポイントだ。このポリアミドが水素高選択透過分離機能層となっており、水素の高選択・透過性を実現しているというわけだ。



出典:東レ

 それだけではなく、他社は、パラジウム膜、ゼオライト、炭素膜、高分子製ではポリイミド膜が市販または研究されているが、そのどれよりもポリアミド製の方が安い。
 つまり、世界最高レベルなのに安価というわけだ。

 さらに、高耐熱高分子素材×精密相分離によって耐熱・耐圧多孔質支持膜を設計。実は、水素の透過性・選択性を高めると耐熱性、耐圧性が下がってしまう、この両立も課題だった。しかし、東レは耐熱・耐圧の膜とポリアミドの層と複合することによって、耐熱性、耐圧性、高水素選択分離性を有する新規分離膜の創出に成功した、という格好だ。

 熱かろうが、圧が高かろうが、水素を含む混合ガスから水素を世界最高レベルで取り出すことが可能になる、そういう膜になっている。

 ちなみに、水素でいけるなら、CO2の分離もいけるのではないか? 脱炭素時代にCO2の分離は重要になるのではないか? と思われた読者も多いだろう。鋭い!

 東レは、同じようにCO2分離膜を開発している。その名も革新CO2分離膜。


出典:東レ

 CO2分離性能と高耐久性を兼ね揃えており,かつ,柔軟で非常に細いため,通常の繊維と同じように連続生産が可能で、高密度充填できることからモジュールの小型化が可能だとする。
 優れものすぎる。
 まだ、開発に成功した段階で、社会実装はこれからだが、東レの膜なしに脱炭素時代は考えられない、と言えるのではないだろうか。

今回はこの一言でまとめたい。 『凄すぎる東レの膜技術 これは世界で勝負できるぞ』

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🧬mRNA技術で95%のマウスから「がん細胞を完全消滅」させることに成功! 202109

2021-09-15 17:14:00 | なるほど  ふぅ〜ん

mRNA技術で95%のマウスから「がん細胞を完全消滅」させることに成功!
   ナゾロジー より 210915  川勝康弘

 がん治療の未来はmRNAが握っているかもしれません。

 9月8日にBioNTechの研究者たちにより『Science Translational Medicine』に掲載された論文によれば、同社のmRNA技術を用いた治療薬により、20匹中19匹のマウスの黒色腫(皮膚がん)を完全消滅させることに成功したとのこと。

圧倒的な効果をみせたmRNA治療薬は、いったいどんな仕組みで、がん細胞を死滅させたのでしょうか?

■目次
マウスの20匹中19匹で腫瘍が完全に消滅した
mRNAによって作られたサイトカインは免疫にがん細胞を密告する
人間での臨床試験も始まっている

⚫︎マウスの20匹中19匹で腫瘍が完全に消滅した
 mRNAとは細胞に対して特定のタンパク質を作るように指示する分子です。
 新型コロナウイルスのワクチンに含まれるmRNAも、ウイルスの体の一部(スパイク)を作る指令が含まれており、体内に注射されるとウイルスの断片を生産し、免疫の訓練を促します。
 そこで今回、BioNTechとファイザーの研究者たちはmRNAの持つ命令能力を、がん治療に転用する方法を開発しました。
 mRNAに、がんとの闘いを有利にするタンパク質の生産命令を乗せることができれば、治療に大きく役立つと考えたからです。

 研究者たちは様々なタンパク質の生産命令を込めたmRNAを、がんになったマウスに注射し、効果が現れるかを確かめていきました。

 結果、サイトカインの一種である4つのタンパク質(インターロイキン-12単鎖、インターフェロン-α、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、およびIL-15‐sushi)の生産命令(mRNA)が、がん細胞に対して有効であると判明します。

 またこの4種類の生産命令(mRNA)を混合して、黒色腫(皮膚がん)になったマウスの腫瘍に注射したところ、20匹中19匹(95%)において、40日以内に腫瘍が完全に消滅したことが確認されます。

 これまで様々ながん治療方法が開発されてきましたが、これほどの高い確率で腫瘍を完全に消滅させた例は非常にまれです。

 さらに、mRNA混合物を注射されたマウスには副作用が示されず、治療期間中に体重が減少することもありませんでした。

 この結果はmRNA技術が、体に負担のないがんの根治(完全治療)に有効であることを示します。

しかし、なぜサイトカインの生産命令(mRNA)を注射しただけで、がんが消滅したのでしょうか?

⚫︎mRNAによって作られたサイトカインは免疫にがん細胞を密告する
 なぜサイトカインの生産命令(mRNA)カクテルが、がんを消滅させたのか?

 答えを探るため、研究者たちは治療中のマウスの体内を調べました。
するとマウスの体内では、免疫システムに対して腫瘍への攻撃を促す「腫瘍内インターフェロンガンマ」、「抗原特異的T細胞」、「グランザイムB+T細胞浸潤」が増加しており、がん細胞に対する免疫記憶も形成されていました。

 私たちの体から生まれたがん細胞には、体の一部になりすますことで免疫をかわす能力が備わっています。

 一方で、腫瘍に注射されたサイトカイン生産命令(mRNA)が実行され、実際にサイトカインが生産されはじめると「ここに敵がいる」という警報を免疫システムに向けて発することが可能になります。
 そして警報によって駆け付けた免疫細胞に、がん細胞を改めて敵として認証するキッカケを与えていたと考えられます。

極言すれば、腫瘍の内部にチクリ屋を入れた……とも言えるでしょう。

⚫︎人間での臨床試験も始まっている
 今回の研究により、サイトカインの生産命令を含んだmRNAが、マウスのがんに対して非常に効果的であることが示されました。

 サイトカインによる警報は非常に強力であり、新型コロナウイルスの感染では、過剰な警報が肺をボロボロにしてしまうことが報告されています(サイトカインストーム)。

 腫瘍内部にサイトカインの生産命令(mRNA)を入れることで、サイトカインの攻撃力を腫瘍に向けることが可能になります。

 なお現在、動物実験での有望な結果を受けて、人間を対象としたフェーズ1の臨床試験が開始されているとのこと。

 中間報告によれば、mRNAの投与によって命にかかわるような副作用は生じていないとのこと。
(※フェーズ1は安全性の確認が目的)

 また腫瘍に対する調査では、マウスに似たインターフェロンガンマとCD8+T細胞浸潤の増加が確認されたようです。

 今後、全てのフェーズがクリアされ、mRNAによるがん治療が実現すれば、人類の死因の上位から、がんが消える日が来るかもしれません。


⚫︎元論文
Local delivery of mRNA-encoding cytokines promotes antitumor immunity and tumor eradication across multiple preclinical tumor models https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abc7804
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「権威主義者」は極左も極右もよく似ているという研究結果  202109

2021-09-15 17:03:00 | なるほど  ふぅ〜ん

「権威主義者」は極左も極右もよく似ているという研究結果
  GiGAZine より 210915 

 権威に服従するという社会のあり方を肯定する権威主義は,極左も極右も行動と心理的特徴が驚くほど似通っているという研究結果をアメリカ.エモリー大学の研究者が発表しました。
 権威主義は一般的に右派と結びつけられている概念ですが、左派の権威主義者の理解が肝要になると研究者は主張しています。

Clarifying the structure and nature of left-wing authoritarianism. - PsycNET
https://doi.apa.org/record/2021-74485-001

Left-wing authoritarians share key psychological traits with far right, Emory study finds | Emory University | Atlanta, GA
https://news.emory.edu/stories/2021/09/esc_left_wing_authoritarians_psychology/campus.html

 エモリー大学で心理学について研究しているトーマス・コステロ氏が行ったのは、政治的左派における権威主義に関する調査です。
 コステロ氏によると、権威主義に関する心理学的研究は1930年代の ファシズムの台頭に際した「ファシズムを支持する人々についての心理学」に端を発しており、現行の権威主義の度合いを測る調査においても1930年代のファシズム研究時に開発されたファシズム支持の度合いを測定する「ファシズム尺度」がそのまま流用されているとのこと。

 ファシズム尺度は政治心理学の発展に貢献しましたが、ファシズムは極右に分類されるイデオロギーであるため、ファシズム尺度を引き継いだ現行の権威主義研究は右派に限定されてしまうという副次的な問題を生み出しました。
 そのため,コステロ氏は改めて権威主義の度合いを測定する概念的なフレームワークを作成し,この概念的なフレームワークをオンラインで集められた被験者に対して適用しました。

 オンライン調査支援ツール Prolificで集められたアメリカの年齢・人種・性別など人口統計に合致する被験者1000人に対して調査を行ったところ、政治的暴力に関与したと回答した被験者は12人で、いずれもコステロ氏が作成した権威主義スケールで高得点を獲得していたと判明。
 分析の結果、7段階評価において最高評価を獲得した被験者は、「過去5年間に政治的暴力に関与したことがある」と回答する可能性が2~3倍高くなることがわかりました。

 今回の研究に関する特筆すべきポイントとして、コステロ氏は「左派の権威主義者と右派の権威主義者は心理的特徴と行動において驚くほど似ている」という点を挙げています。
 権威主義の特徴ともいえる確立された階層社会に関して、右派の権威主義者は積極的に支持し、左派の権威主義者は積極的に否定するという逆の選好が存在するものの、いずれの権威主義者も権威者と思われる人々には服従し、権威主義に反対する人々に対しては支配的かつ攻撃的な姿勢を見せ、グループ内における規範には注意深く従うという特徴が共通していたとのこと。
 ただし、左派の権威主義者は世界を危険な場所だと認識し、ストレスに対して激しい感情や制御不能だという認識を抱く傾向が強いのに対して、右派の権威主義者は新しい経験を受け入れないという傾向や科学を信じない傾向が強いという点では異なりました。

 コステロ氏は右派の権威主義も左派の権威主義も鏡像のような関係にあると指摘し、心理学的にはイデオロギーの選択より前に権威主義になるかどうかが決まると主張。
 現行の権威主義研究に関して、「権威主義が右派的な概念だと考えるのは間違いです」とコメントしています。
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「重力蓄電」が今注目される理由  202109

2021-09-15 16:50:00 | 気になる モノ・コト

「重力蓄電」が今注目される理由
    TABI LABO編集部  より 210915 

 再生可能エネルギーへのシフトが加速するエネルギー業界において、今「重力蓄電」というエネルギーの貯蓄方法に注目が集まっている。

「重力蓄電」とは、文字通り重力を利用した蓄電方法。かのアイザック・ニュートンが17世紀に発見した、位置エネルギーを利用した“アナログな方法”だ。

 例えば、スイスのスタートアップ企業「エナジー・ボールト」が開発しているのは、35トンの安価なコンクリートブロックを使用して、重りを上げ下げするシンプルな方法(もっとも実際には最先端テクノロジーが利用されており、現代の技術力によって約85%という高効率を実現している)の「重力蓄電」。

 余ったエネルギーは重りを持ち上げる際に位置エネルギーに変換して保存し、エネルギーが必要な時には、重りを降ろすことで、取り出すことができるのだ。

 この「重力蓄電」が今、注目を集めるのにはいくつかの理由がある。

 まずは、再生可能エネルギーが持つ供給の不安定性。多くのクリーンな発電方法は、稼働時間にムラがあるが、電気はそのままでは保存することが出来ないため、これからより多くの蓄電施設が必要になると予想されている。

 さらにコストや環境保護の観点からも「重力蓄電」が支持されている。

 例えば、最先端のリチウム電池・水素電池は、コストも高く長期間の保存には向かない。また、同じ"位置エネルギー”を利用した揚水発電施設は、建設場所が限られるうえに、環境破壊との声も上がっているのだ。

 このような背景を考えたうえで、アナログな蓄電方法が注目を集めているのだが、確かに、これはとても堅実な選択肢かもしれない。

 ちなみに前述の「エナジー・ボールト」によるクレーン車は、1台で3〜4万人都市の電力需要をまかなえる容量を持つとのこと。

 また、英国の「Gravitricity社」は、街の地下に大きな蓄電エレベーターを製造する未来も構想しているらしい。

 少し先の未来の街では、もしかして「クリーンエナジー」と「重力蓄電」だけが使われていたりするのかも……。
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日立がシリコン量子ビットの開発に向け前進、超伝導量子ビットを超えるか  202109

2021-09-15 16:29:00 | なるほど  ふぅ〜ん

日立がシリコン量子ビットの開発に向け前進、超伝導量子ビットを超えるか
  MONO ist  より 210915朴尚洙

 日立製作所(以下、日立)は2021年9月14日、オンラインで会見を開き、同社が開発を進めている量子コンピューティング技術について説明した。2013年から研究開発をスタートした古典コンピュータを用いてアニーリング型の量子コンピューティングを行う「CMOSアニーリング」は2020年から事業化の段階に入っており、米国や中国で研究開発が進むゲート型についても、従来のシリコン半導体技術をベースとするシリコン量子ビットの製造プロセス「Q-CMOS」の開発で一定の成果を学会発表するなど、取り組みを加速させている。

⚫︎社会イノベーション事業に必要な量子コンピュータとは
 会見には、日立 研究開発グループ 基礎研究センタ 主管研究長 兼 日立京大ラボ長の水野弘之氏が登壇した。水野氏は「米国のGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon.com、Microsoft)、IBMなどが、エッジやクラウドに用いるCPUの自社開発に注力するようになっている。
 これまでの水平分業から垂直統合へ移行しているわけだが、量子コンピューティングの技術開発にもその影響が出ており、特にGoogleの取り組みは広く知られているところだ」と語る。

 日立も量子コンピューティング技術の開発を進めているが「これらグローバルの巨大IT企業とスタンスが異なる」(水野氏)という。これは、日立が注力する社会イノベーション事業における“コンピュータ”は、顧客にとってより良いソリューションの提供に役立つものである必要があり、そのためには現行の古典コンピュータと比較して圧倒的に高い価値を提供できなければ開発する意味は少ない。
 「量子コンピュータは、古典コンピュータでうまく扱えない大規模問題の解決が得意という特徴がある。このことを考えると、小規模の量子コンピュータを開発することは産業的にあまり意味がない」(同氏)という。

 量子コンピュータが古典コンピュータと比べて大規模問題の解決が得意なのは、古典コンピュータの基になるビットが0か1のどちらかを示すのに対して、量子コンピュータの基になる量子ビット(Qubit)が0と1の両方の状態を表現できるからだ。
 水野氏は「古典コンピュータの100ビットは2の100乗通りの中から1つを表現できるだけにすぎないが、量子コンピュータの100量子ビットは2の100乗通りの全てを表現できる。この量子ビットによって重ね合わさった状態から欲しい状態を観測する、取り出す方法としてアニーリング型とゲート型がある」と説明する。

 アニーリング型は巡回セールスマン問題などに代表される組み合わせ最適化問題に特化している。一方、1985年に初めて理論が提唱された量子コンピュータと同様に、因数分解を解くなどより汎用的に利用できるのがゲート型だ。

 アニーリング型、ゲート型とも冬の時代を超えて、2010年代に入ってからは活発な開発が進められている。そして、アニーリング型の開発では日立を含めて日本企業の名前が多数見られる一方で、ゲート型の開発は米国や中国が大規模な投資を行っており、日本企業の存在感は希薄とされてきた。

⚫︎CMOSアニーリングの有用性の壁を「チクタク開発」で超える
 日立は、アニーリング型の量子コンピュータの実用化で世界に大きなインパクトを与えた2011年のD-Wave Systemsの発表を受け、大規模問題を扱えるとともに早期実用化が可能な古典コンピュータを用いるCMOSアニーリングの研究開発を2013年にスタートさせた。CMOSアニーリングは、量子コンピュータを使っていないこともあり「量子インスパイア型」と定義している。

 2015年には、ハードウェアとして第1世代となる20kビットのCMOSアニーリング独自チップを開発。2016年には第2世代に当たる市販FPGAシステムを用いたシステムを構築し、2018年には第2世代システムをクラウド化した。2018年には第3世代となるエッジ対応も可能な30kビット×2のCMOSアニーリング独自チップを開発し、2019年には第4世代となるクラウドシステムとして適用範囲を拡大している。
 そして、水野氏がCMOSアニーリングの研究開発で重視してきたのが、これらのハードウェア開発とソフトウェアやアプリケーションの開発を並行して進める「チクタク開発」だ。「新たなソリューションを創出するには、ハードウェアとソフトウェアそれぞれの開発成果を互いにフィードバックして前に進めなければならない」(同氏)。

 このチクタク開発は、企業における研究開発で最も問われる「有用性の壁(事業化の壁)」の問題も突破する原動力にもなった。例えば、損保ジャパン日本興亜は、再保険市場における損害保険ポートフォリオ最適化にCMOSアニーリングを採用している。2020年10月には、日立としてCMOSアニーリングをベースとする「勤務シフト最適化ソリューション」をリリースし、同ソリューションは三井住友フィナンシャルグループに採用された。

 現在、日立が提供するCMOSアニーリングマシンは、GPUを用いるシステムと、同社の独自チップ(ASIC)とFPGA用いるシステムを用意している。解ける問題の規模に相当するスピン数は最大で、目的に応じた使い分け、開発ができることが強みだ。

⚫︎ムーンショット型研究開発事業でゲート型量子コンピュータの開発へ
 CMOSアニーリングマシンで事業化を含めて一定の成果を得た日立が次に取り組みを始めた量子コンピューティング技術が、より汎用性が高いものの実用化のハードルも高いとされるゲート型量子コンピュータである。

 JST(科学技術振興機構)が2020年度から推進している「ムーンショット型研究開発事業」の研究開発テーマの一つとして、大阪大学 教授の北川勝浩氏がプログラムディレクターを務める「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」があり、日立は4つあるゲート型量子コンピュータのうちシリコン半導体技術をベースとする技術の開発に加わっている。

 水野氏は「かつては夢の存在だったゲート型量子コンピュータだが、近年研究開発が急ピッチで進み、古典コンピュータを超える『量子超越性の壁』はクリアできている。現在はNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum:ノイズあり中規模量子デバイス)のシステムが開発できており、次に突破すべき壁は『量子有用性の壁』になる。
 2020年代にクリアできる可能性があり、そこで量子化学や量子多体系、量子機械学習や最適化問題に適用できるようになるだろう。最終的には『誤り訂正の壁』を超えれば、真の汎用量子コンピュータを開発できるが、ムーンショット型研究開発事業では2050年の達成が目標になっている」と述べる。

⚫︎トップダウン型のシリコン量子ビットで超伝導量子ビットを超える
 現在、ゲート型量子コンピュータの性能競争で最も進んでいるのが超伝導材料を用いた回路で量子ビットを実現している「超伝導量子ビット」だ。商用機となる「IBM Q System One」を2019年1月に発表したIBMや、2019年9月に世界で初めて量子超越性を実証したと発表したGoogleのゲート型量子コンピュータは、この超伝導量子ビットを用いている。

 これに対して日立が取り組んでいるのが、古典コンピュータの技術進化に大きく貢献したシリコン半導体技術をベースに量子ビットを実現するシリコン量子ビットである。これまでのシリコン量子ビットの開発は、微細化した量子ビット素子を“裸のまま”使用するという方向性だったが、量子ビット素子の動作や制御が難しいという課題があった。
 水野氏は「回路として構成されている超伝導量子ビットは、1つ1つが大きいものの制御が容易だ。この特徴をシリコン量子ビットに応用し、素子の集積度を上げて量子ビット素子複数をまとめて回路として動作させるというコンセプトで開発を進めた」と語る。

 その開発成果の一つとなるのが「量子ドットアレイ」である。2021年9月開催の国際学会「SSDM2021(International Conference on Solid State and Materials)」では、電子1個だけを閉じ込めることができる箱をたくさん作る量子ドットアレイを形成し、これらの箱に電子1個1個を閉じ込めて制御するためのCMOS回路を同一チップに混載できる半導体プロセス「Q-CMOS」を発表している。

 量子ドットアレイの数は、128量子ビットに相当する128個だ。「現在は、必要な全ての条件下で、箱それぞれに電子1個1個が閉じ込められていることを確認している段階。この確認を完了できれば、箱に閉じ込めた電子1個1個を高精度に制御して量子ビットとして動作させるステップに進む」(水野氏)という。

 現在、開発で先行する超伝導量子ビットは、ヘリウムなどを用いた希釈冷凍機によって実現できる10mKという極低温環境に超伝導量子ビットの集積回路を配置する必要がある。この超伝導量子ビットの集積回路と、極低温環境の外側にある信号発生器や計測器をつなげて量子ビットの状態を観測することで量子コンピューティングを実現している。
 将来的に、量子ビットをより大規模にしていく場合には、現在外側に出している信号発生器や計測器の機能をシリコン半導体として集積し、極低温環境の内部に組み込む必要も出てくる。

 日立が現在開発中のシリコン量子ビットは、量子ドットアレイと周辺の高精度制御・読み出し回路を混載することで、超伝導量子ビットで将来的に想定される極低温環境への機能取り込みを先行して実現するものになっている。また、シリコン量子ビットが超伝導量子ビットと大きく異なる特徴の一つとして、100m~1.5Kという10mKよりもはるかに実現が容易なレベルの極低温環境で済むことが挙げられる。
 水野氏は「ホット量子シリコンビットとも言われており、希釈冷凍機の構成を簡素にできるし、量子ビットのさらなる大規模化にもつなげられる」と強調する。


超伝導量子ビットとシリコン量子ビットにおけるシステム設計の違い。超伝導量子ビットは、超伝導量子ビットの集積回路を10mKという極低温環境に置く必要があるが、シリコン量子ビットは100m~1.5Kで済む(クリックで拡大) 出典:日立製作所
 汎用量子コンピュータの実現に向けた超伝導量子ビットなどを用いる従来のアプローチを「ボトムアップ型」とすると、日立が取り組むシリコン量子ビットによるアプローチは「トップダウン型」になる。シリコンの集積性により量子ビットの大規模化が容易であり、古典コンピュータで開発が進むさまざまなデジタル技術も活用できるからだ。


「トップダウン型」のシリコン量子ビットで早期実用化を目指す(クリックで拡大) 出典:日立製作所
 水野氏は「シリコン量子ビットを用いた量子コンピュータの開発では、オープンソースソフトウェアのやり方に学んで“オープン量子”といえるようなオープンな体制で早期開発を目指す。
 また、量子有用性の壁を超えるためには、CMOSアニーリングと同様にソフトウェアやアプリケーションと連携したチクタク開発も重要になってくるだろう。
 2027年から始まる中計期間中には、シリコン量子ビットを用いた量子コンピュータの実験的なクラウドを公開したい」と述べている。

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