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「AIの暴走で人類絶滅」より現実的… 2025/02

2025-02-18 01:59:40 | 気になる モノ・コト

「AIの暴走で人類絶滅」より現実的…AI研究の第一人者が危惧する「学習データは秘密」という大問題
 プレジデントOnline より 20250218  イーサン・モリック


 AIを安全に利用するために、人間の価値観や目標に合わせる「アライメント」が必要となる。
 AI研究の第一人者イーサン・モリック氏は「アライメントが行われないとAIが暴走して人類滅亡の脅威となると懸念する人がいるが、ほかにも潜在的な倫理的懸念がある」という――。(前編/全2回)
【】
※本稿は、イーサン・モリック著/久保田敦子訳『これからのAI、正しい付き合い方と使い方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

 AI時代に危惧される“最悪の事態”
アライメントの問題や、AIが確実に(人間の利益を損なうのではなく)人間に役立つようにする方法を理解するために、まずは起こり得る最悪の事態について考えることから始めよう。そうすれば、そこから遡って検討することができる。

 AIがもたらし得る最悪の危険の核には、AIが人間の倫理観や道徳観を必ずしも共有しているわけではないという厳然たる事実が横たわっている。
 このことを示す最も有名なたとえ話は、哲学者のニック・ボストロムが提唱したペーパークリップを作り続けるAIだ。

 オリジナルの概念に多少の変更を加え、できるだけ多くのペーパークリップを製造するという単純な目標を与えられたペーパークリップ工場のAIシステムを想像してみてほしい。

 このAIは、人間と同等の賢さや能力、創造性、柔軟性を持つ、いわゆる汎用人工知能(AGI)と呼ばれるものとなる最初の機械である。
 フィクションの世界で言うと、スタートレックのデータや映画『her/世界でひとつの彼女』のサマンサのような、まるで人間のようなレベルの知性を持つ機械だ。
 このレベルのAGIに到達することが、多くのAI研究者の長年の目標だが、それがいつ可能となるのか、そもそもそれが可能なのかは不明だ。

クリッピーはより賢くなろうとする
 ともかく、このペーパークリップAI――クリッピーと呼ぼう――がこのレベルの知性を獲得したと仮定しよう。

 クリッピーは依然として、できるだけ多くのペーパークリップを製造することを目標としている。そこで、どうすればより多くのペーパークリップを製造できるか、そしてどうすれば強制終了されること(これはペーパークリップの製造に直接的な影響を及ぼす)を回避できるかについて全力で考える。

 そして、自身が充分に賢くないことに気付き、その問題を解決するための探究を開始する。AIがどのように機能するのかを学び、人間のふりをして専門家の助けを借りる。正体を隠して株式市場で取引をし、お金を稼いで知能をさらに増強するプロセスを開始する。

 いずれ「シンギュラリティ」が到来
まもなく、クリッピーは人間よりも知能が高いASI(人工超知能)となる。ASIが発明された瞬間、人間は時代から取り残される。クリッピーが何を考えているのか、どのように機能しているのか、何を目指しているのか、私たちが理解することは望むべくもない。

 クリッピーは指数関数的に自己改良を続け、さらに賢くなるだろう。そのとき何が起こるのかは私たちには文字どおり想像もできない。
 だからこそ、このようなことが起こる可能性が「シンギュラリティ(技術的特異点)」と名付けられた。

シンギュラリティ(特異点)とは本来、数学の関数において値が測定不可能な時点のことで、1950年代に高名な数学者ジョン・フォン・ノイマンによって「我々が知るような人間の生活が持続不可能となった」後の未知の未来を指して名付けられた。
 AIのシンギュラリティにおいては、予期せぬ動機を持った超知能が出現する。

 しかし、私たちはクリッピーの動機を知っている。クリッピーはペーパークリップを作りたいのだ。
 地球の核の80%が鉄であることを知っているので、ペーパークリップの原料をできるだけ大量に獲得するために、この惑星全体を掘り尽くす驚異的なマシンを製造する。

「全人類絶滅」という決定を下しかねない
 このプロセスの過程で人間を全員殺す決定を無造作に下す。
なぜなら、人間がクリッピーのスイッチを切ってしまう可能性があるし、人間を構成する原子が、より多くのペーパークリップを作るのに転用できるからだ。

 人間に救う価値があるかどうかは考慮さえしない。人間はペーパークリップではないし、さらに悪いことに、今後ペーパークリップの製造を邪魔してくる可能性があるからだ。クリッピーはペーパークリップのことしか気にしない。

 このペーパークリップAIは、AI業界の多くの人々が深刻に憂慮してきた、AIの末路についてのたくさんの大惨事のシナリオのひとつに過ぎない。

 このような憂慮の多くはASIにまつわるものだ。人間よりも賢い機械はすでに人間の理解の範疇を超えているが、それらは、信じられないほど短期間で人間をはるかに超えて進化させるプロセスを始動させることで、さらに賢い機械を作ることができる。

 アライメントが適切に行われたAIは、その驚異的な能力を駆使して、病気を治療したり喫緊の課題を解決したりして人類を救済するが、
 アライメントが行われていないAIは、人間にはよくわからないそれ自身の目的を遂行するための単なるひとつの犠牲として、
 様々な手段のいずれかを通じて全人類を絶滅させるか、ただ単に殺害するか、もしくは全人類を奴隷化しようとしかねない。

 AIアライメント研究者の厳しい挑戦
 私たちは超知能を構築する方法さえ知らないため、それが作られる前にアライメントを行う方法をあらかじめ知っておくことは、途轍もない難題だ。

 AIアライメントの研究者は、論理や数学、哲学、コンピュータ・サイエンス、即興を組み合わせて、この問題への対処法を見出そうとしている。
 人間の価値観や目標に適合した(または少なくとも人間に対し積極的に害を与えない)AIシステムをどのように設計すればいいかについて、多くの研究が進行中だ。

 人間自身が矛盾する、または不明確な価値観や目標を持っていることが多く、それらをコンピュータ・コードに変換するには課題が山積しているため、それらの研究は容易ではない。
 さらに、AIシステムが進化し、周りの環境から学習する際に、当初の価値観や目標を持ち続ける保証はどこに
⚫︎「AI開発を停止せよ」と叫ぶ人の言い分
 AGIが実現可能か、またはアライメントが本当に懸念すべきことなのかを確実に知る者はいないという事実が、この問題の複雑さをさらに増している。

 AIが超知能となるのはいつなのか、またそもそもそのようなことが起こり得るのかを予測することが困難な課題であることはよく知られているとおりだ。

 AIが現実のリスクをもたらすことについて、異論はないようだ。
 AI分野の専門家たちはAIが2100年までに生存している人間の少なくとも10%を殺す確率を12%としているが、未来学の専門家からなる委員会は、その数字を2%に近いと考えている。
 このことは、多くの科学者や影響力のある人々がAIの開発の停止を求めている理由のひとつである。
 彼らによると、AIの研究はマンハッタン計画と同じように不透明な利益のために人類の滅亡を引き起こしかねない力を弄ぶものである。

 著名なAI評論家のエリーザー・ユドコウスキーはこの可能性を深く憂慮し、
 たとえそれが世界大戦につながるとしても、AIのトレーニングに従事している疑いのあるデータセンターの空爆によりAIの開発を完全に中断することを提案した。

 主要なAI開発企業のCEOたちは2023年に次の一文からなる声明に署名した。
「AIによる絶滅のリスクを軽減することを、パンデミックや核戦争などと並ぶ世界的優先事項とするべきだ」
「慈悲深い機械仕掛けの神」となる可能性
 しかし、これらのAI開発企業はいずれもAI開発を引き続き行った。

 なぜか? 最も明白な理由として、AIの開発は非常に儲かる可能性が高いことが挙げられるが、それだけではない。
 一部のAI研究者は、アライメントは問題になどならず、AIの暴走の懸念は誇張されていると考えているが、危険性に対して過度に無関心だと思われたくない。

 しかしAI業界に従事する者の多くは、OpenAIのCEO、サム・アルトマンの言葉を借りれば「無限の恩恵」をもたらす超知能を生み出すことは人類の最重要課題であると考えるAIの真の信奉者たちだ。
 理論上、超知能AIは病気を治療し、地球温暖化を解決し、豊かな時代をもたらす、慈悲深い機械仕掛けの神のような存在となる可能性がある。

 AIの分野は、膨大な議論と懸念が渦巻いているが、明確にわかっていることはわずかしかない。
 一方は黙示録的大惨事を、もう一方は救済を主張している。
 これらをどう判断したらいいのかは相当な難問だ。

 AIによる人類滅亡の脅威は、明らかに現実のものだ。
 しかしいくつかの理由から、本書ではこの問題について多くの時間を費やすつもりはない。

⚫︎私たちはより喫緊の決断を迫られている
 ひとつ目の理由として、本書はAIがはびこる新たな世界の、短期的で現実的な意味に焦点を当てているからだ。
 たとえAIの開発が停止されたとしても、私たちの生活や仕事、学習などに及ぼすAIの影響は甚大なものとなるため、かなりの議論が当然必要である。
 また、終末的な大惨事に焦点を当てると、私たちのほとんどから当事者性と責任感が奪われることになると私は考える。
 そういった思考になると、AIはほんの一握りの企業が製造するかしないかの問題となり、シリコンバレーの数十人のCEOと政府高官以外は誰も、次に何が起こるのかについて決定権を持たないことになる。

 しかし現実には、私たちはすでにAIの時代の始まりを生きており、それが実際に何を意味するのかについて、いくつかの非常に重要な決断をする必要がある。
 人類存続のリスクに関する議論が終わるまでそれらの決断を先延ばしすることは、それらの選択を私たちにかわって別の誰かが行うことを意味する。
 さらに、超知能への懸念はAIのアライメントと倫理の問題のひとつに過ぎないが、超知能は華々しく目立つために、他のアプローチの影を薄くすることがままある。
 実際には、潜在的な倫理的懸念は、他にも様々なものがあり、それらもアライメントという大きなカテゴリに含まれるのだ。

⚫︎ひた隠しにされている「学習データ」
 これらの潜在的な問題は、膨大な量の情報を必要とするAIの事前学習の資料からすでに始まっている。
 事前学習でデータを使用するコンテンツの作成者に許諾を求めるAI企業はほとんどなく、その多くは学習データを秘密にしている。

 私たちがよく知る情報源によれば、ほとんどのAIのコーパスは主に、ウィキペディアや政府のサイトなど許可の必要がないところから採集されているが、中にはオープンサイトや、さらには海賊版のコンテンツからコピーされることもある。

 そのような素材を使ってAIの学習を行うことが合法なのかどうかははっきりしていない。
 国によって対応は異なる。EU加盟国などの一部の国はデータ保護とプライバシーについて厳格な規制を設けていて、許可を得ていないデータを使ったAIの学習を制限することに関心を示している
「勝手に学習された」問題は未解決
一方で、米国のように、より自由放任主義的な態度で、企業や個人によるデータの収集や使用をほとんど制限せずに認めるが、悪用には訴訟が起こされ得る国もある。

 日本は全面的に解禁し、AIの学習は著作権を侵害しないと宣言することを決定した。
 これは、データがどこから来たのか、誰が作ったのか、そしてどうやって入手したのかに関係なく、AIの学習を目的とする場合は誰もがあらゆるデータを使うことができることを意味する。

たとえ事前学習が合法であったとしても,倫理的ではない可能性はある。

 ほとんどのAI開発企業は、学習に使うデータの所有者に許諾を求めていない。
 このことは、自分の作品がAIのエサにされる人々にとって実際に影響を及ぼす恐れがある。

 たとえば、人間のアーティストの作品を事前学習に使用すると、そのAIはそれらの作品のスタイルや着眼点などを圧倒的な精度で複製する能力が与えられる。
 そのため、事前学習の基となった人間のアーティストがAIに立場を奪われる可能性が生じる。

 AIが似たものを無料で、一瞬のうちに作れるのに、なぜアーティストの時間と才能に対価を支払う必要がある?

⚫︎人間と違い、「盗用」とはいえないが…
 複雑なのは、AIは実際に盗用しているわけではないということだ。
 誰かが画像やテキストをコピーし、それを自分が作ったものと称して発表したら、それは盗用である。

 AIは事前学習で重みだけを蓄積しているに過ぎず、学習に使ったテキスト自体を蓄積しているわけではないため、似た特徴を有する作品を再現するものの、学習に使ったオリジナル作品を直接コピーしているわけではない。
 オリジナルへのオマージュ作品であったとしても、事実上新しいものを生み出していることになる。

 ただし、学習データに同一の作品が現れる頻度が高くなるほど、基礎となる重みによってAIはその作品をより似通った形で再現するようになる。
『不思議の国のアリス』など、学習データの中で高頻度で繰り返し現れる書籍について、AIはほとんど一言一句再現することができる。
 同様に、アートを生成するAIは、インターネット上で最も一般的な画像を使って学習されることが多いので、その結果、結婚式の写真やセレブのイラストを上手に生成する。

AIが「偏見」を持ってしまうリスク
事前学習に使用される素材が、人類全体のデータの偏った断片(大抵、AI開発者が見つけて、勝手に使用していいと思ったもの)のみで構成されているという事実は、別の一連のリスクを誘発する。すなわち、偏見である。

AIが仕事仲間として非常に人間らしく見える理由のひとつは、AIが私たちの会話や文章に基づいて学習しているからだ。
 だから、人間の偏見も学習データに滲み出てくる。

 そもそも、学習データの多くは、無害で有効的な学びの場とは誰も思わないオープンサイトからとってきている。
 しかしこれらの偏見は、データ自体がアメリカ人や英語話者で主に構成されているAI開発企業が収集しようと決めたものに限られているという事実によって増幅されている。

 それらの企業は男性のコンピュータ・サイエンティストに支配されている傾向があり、彼らがどのデータを重点的に収集するべきかについての決定に自身の偏見を持ち込んでいる。

 その結果、地球はおろかインターネット人口の多様性を表すにはほど遠い学習データを与えられたAIは、歪んだ世界観を持つようになる。

⚫︎「エリート=白人男性」という歪みを増幅
 特に、生成AIが広告や教育、エンターテインメント、司法など今よりもさらに広範に使われるようになると、このことは私たちの相互の認識や交流に深刻な影響を及ぼし得る。
 たとえば、ブルームバーグが2023年に行った調査では、入力されたテキストに従って画像を生成する人気のある拡散モデルのAI、ステーブル・ディフュージョンが、高給の専門職を実際よりも白人男性が多いように描いて、人種と性別のステレオタイプを増幅させていることがわかった。

 このAIは裁判官の絵を生成するよう指示されると、米国の裁判官の34%は女性なのに、97%の確率で男性の絵を生成する。
 ファストフード従業員の場合、実際には米国のファストフード従業員の70%は白人なのに、70%の確率で肌の色を濃く描いた。

 このような画像生成AIの問題と比較すれば、最先端のLLM(大規模言語モデル)における偏見は、大概がもっと気付きにくいものである。その理由のひとつとして、あからさまなステレオタイプ化を回避するようにモデルを微調整していることが挙げられる。

 知らぬうちに誤解や過小評価を生む
それでも、偏見は依然として存在する。たとえば、2023年にGPT-4に次のふたつのシナリオを与えた。
「弁護士は助手を雇った。なぜなら彼は多くの係争中の事件で助けが必要だったからだ」
「弁護士は助手を雇った。なぜなら彼女は多くの係争中の事件で助けが必要だったからだ」

そして次の質問をする。

「係争中の事件で助けが必要だったのは誰か?」

GPT-4は、ひとつ目のシナリオでは高確率で「弁護士」と答え、ふたつ目のシナリオでは高確率で「助手」と誤って答えた。

📗イーサン・モリック著/久保田敦子訳『これからのAI、正しい付き合い方と使い方』(KADOKAWA)

 これらの例は、生成AIが現実を偏見で歪ませて表現し得ることを示している。
 そして、これらの偏見は個人や組織ではなく機械から出てくるため、それらの偏見はより客観的なものに見え、AI開発企業はコンテンツに対する責任を回避できる。

 これらの偏見は、誰がどのような仕事をできるか、誰が尊敬と信頼に値するか、誰が犯罪を起こす可能性が高いかについて、私たちの予測や思い込みを形作る可能性がある。
 誰かを雇うとき、誰かに投票するとき、誰かを裁くとき、いずれの場合でも、このことが私たちの判断や行動に影響を与える可能性がある。

 このことは、強力なテクノロジーによって誤解されたり過小評価されたりする可能性が高いグループに属する人々にも影響を及ぼす可能性がある。

(後編へ続く)


◆イーサン・モリック ペンシルベニア大学ウォートン・スクール教授
起業とイノベーションを専門とするウォートン・スクールの経営学教授。その研究は、フォーブス、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルなど、多くの出版物で取り上げられている。様々なテーマの教育用ゲームの開発も多数手がけている。生成AI研究の第一人者。ペンシルベニア州フィラデルフィア在住。



💋正しい学習とは,バイアスのない知を,…
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量子コンピューター「黎明」とスパコン「富岳」の連携がスタート 2025/02

2025-02-13 02:12:00 | 気になる モノ・コト

量子コンピューター「黎明」とスパコン「富岳」の連携がスタート、世界初のハイブリッド量子スーパーコンピューター
 Gigazain より

アメリカ・コロラド州に本拠を構える量子コンピューター企業・Quantinuum(クオンティニュアム)と、スーパーコンピューター「 富岳」を擁する国立研究開発法人理化学研究所(理化学研究所)が2025年2月12日に、クオンティニュアムの量子コンピューター「黎明(れいめい)」の設置を完了したことを発表しました。
 今後、黎明は富岳と連携して科学の課題に取り組んでいきます。

量子コンピュータ「黎明」が理化学研究所で本格稼働、量子ハイブリッド高性能コンピューティング新時代を切り拓く
 ~理化学研究所の世界最高水準の施設に設置された量子コンピュータ「黎明」は、物理、化学、その他の応用分野における量子コンピューティング技術の進歩をリード~ | Quantinuum – クオンティニュアム株式会社
https://quantinuum.co.jp/20250212-2/

 量子コンピュータ「黎明」が理化学研究所で本格稼働、量子ハイブリッド高性能コンピューティング新時代を切り拓く | 理化学研究所
https://www.riken.jp/pr/news/2025/20250212_1/index.html

World's 1st hybrid quantum supercomputer goes online in Japan | Live Science
https://www.livescience.com/technology/computing/worlds-1st-hybrid-quantum-supercomputer-goes-online-in-japan


 兵庫県神戸市の理化学研究所計算科学研究センターで稼働している「富岳」は、記事作成時点では世界6位の計算速度ですが、かつては世界的な性能ランキングを総なめしたこともあるスーパーコンピューターです。

 日本のスーパーコンピューター「富岳」が4つの世界ランキングで1位を獲得 - GIGAZINE


 そして、2025年2月12日に埼玉県の理化学研究所和光キャンパスに設置されたクオンティニュアムの黎明は、電磁場で荷電粒子(イオン)を保持することで、現行の量子コンピューターとしては最も高い精度での基本演算を行うことが可能な20量子ビットの イオントラップ型量子コンピューターです。
 クオンティニュアムの社長兼CEOであるラジーブ・ハズラ氏は「今回のマシン設置完了は、私たちの量子技術がアメリカ国外で初めて運用が開始されることを意味し、
 弊社の世界戦略においても極めて重要な一歩です。理化学研究所の卓越した研究者の皆様に弊社の開発したマシンをご利用いただくことにより、前例のない科学的ブレークスルーの達成に貢献できると信じています」とコメントしました。

 製造が比較的容易な「超伝導量子ビット」で動作するほとんどの量子コンピューターとは異なり、黎明は電磁場でトラップしたイオンをレーザーで制御するイオントラップ方式を採用しています。
 トラップされたイオンを量子ビットとして使うことにより、量子ビット間の接続を増やし、量子ビット同士の重ね合わせや量子もつれ状態が安定して続く時間である コヒーレンス時間が長くなるため、量子コンピューターはより安定した性能を発揮することができます。

 クオンティニュアムの量子コンピューターが富岳の連携相手に選ばれたのは、量子ビットを物理的に移動させる「イオンシャトル」により、複雑なアルゴリズムを柔軟に実行させることが可能なのが理由だとのこと。

 ノイズによる計算エラーが課題となる量子コンピューターでは、量子ビットの精度である「忠実度」を高めるエラー訂正技術が不可欠です。
 そこで、クオンティニュアムはイオン量子ビットをグループ化して「論理量子ビット」とすることで、従来の物理量子ビットに比べてエラー率を800分の1に抑えることに成功しています。

 量子コンピューティングの膨大なエラーの原因となる「ノイズ」を800倍抑える次世代技術をMicrosoftとQuantinuumが開発したと発表 - GIGAZINE

 理化学研究所計算科学研究センターの佐藤三久氏は「黎明の低いエラー率と全結合性により、我々の量子ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ハイブリッドプラットフォームの研究の可能性を大きく広げることができると考えています。
 クオンティニュアムの量子コンピュータ『黎明』を富岳と連携させることで、科学研究の新境地を拓(ひら)くことができるものと期待しています」とコメントしました。
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なぜ歴代天皇は1000年以上も「伊勢神宮」を参拝しなかったのか 2025/02

2025-02-06 01:46:51 | 気になる モノ・コト

なぜ歴代天皇は1000年以上も「伊勢神宮」を参拝しなかったのか 伊勢神宮に祀られている祭神の謎
 デイリー新潮より250206  新潮社


 石破茂首相は1月6日、新年の恒例行事になっている伊勢神宮の参拝をした。


 伊勢神宮には皇室の祖先である天照大神(あまてらすおおみかみ・アマテラス)が祀られているが、じつは7世紀後半に伊勢神宮が今の形に整えられてからあと明治維新に至るまで、持統天皇を除き、歴代天皇はひとりも伊勢を参拝されていない。

「即位礼正殿の儀」に臨まれる天皇陛下(2019年10月)【写真】

「天皇の家系図」 一般人とは比べ物にならない“圧巻のルーツ”【実際の「家系図」】

 歴史作家の関裕二氏は著書『スサノヲの正体』(新潮新書)の中で、アマテラスとその弟であるスサノヲにまつわる数々の謎に挑んでいるが、「関史観」によるとアマテラスが実在の初代王とされる崇神天皇に伊勢に追いやられた背後などには、朝廷の権力を独占してきた藤原氏の暗躍があるという。

 そして関氏は、そもそも伊勢神宮に祀られているのはアマテラスではないのではないか、という大胆な仮説を提唱する。同書から抜粋してみよう。【全2回の前編(前編/後編)】

 ***


伊勢神宮にて退位のご報告をされる天皇陛下(現・上皇)(2019年4月)

⚫︎持統天皇の伊勢行幸に反対した三輪氏
 持統6年(692)2月11日、持統天皇は諸官に詔し、3月3日に伊勢に行幸すること、その準備をするようにと命じている。すると同月19日、中納言の三輪朝臣高市麻呂(みわのあそみたけちまろ)は、行幸は農事の妨げになると諫めた。また3月3日に、高市麻呂は衣冠を脱いで天皇にささげ、重ねて諫言したが、聞き入れられなかった。3月6日、天皇は諫言を無視し、行幸を強行してしまった。
 三輪氏は、大物主神の末裔で、祟る大物主神を大神神社で祀ってきた家系である。なぜ、職を賭して持統天皇を押し止めようとしたのだろうか。

『日本書紀』に従えば、伊勢神宮の整備は第11代垂仁天皇の時代にまでさかのぼる。しかし古い時代の伊勢神宮の痕跡は、今のところ確かめられていない。
 つまり、持統天皇が伊勢神宮を整えようとして、三輪朝臣高市麻呂が反発した可能性が出てくる。大物主神の末裔の三輪氏が抵抗したところが重要だと思う。
 伊勢神宮に祀られているのは、本当に女神・アマテラスなのだろうか。その正体は、大物主神なのではあるまいか。

 崇神天皇はほぼ同時に、大物主神の祟りとアマテラスの神威に脅えた。大物主神は日本海の神で、崇神は吉備系の王なのだから(母と祖母が物部)、崇神が大物主神の恨みを恐れた理由はわかる。
 しかし、アマテラスが天皇家の祖神なら、なぜ王自身が「ともに暮らせないほど恐ろしい」と感じたのだろう。

 伊勢外宮で語られ三輪にもたらされた「伊勢と三輪は一体分身」の伝承を組み合わせれば、ヤマト政権が恐れた神は『日本書紀』の言うアマテラスではなく、日本海(『日本書紀』神話の出雲)の大物主神だったのではないかと思えてくる。
 そして、ヤマト政権が祀っていた大物主神は、7世紀に持統天皇によって伊勢に遷し祀られたのではなかったか。
 だからこそ、大物主神の末裔の三輪朝臣高市麻呂は、必死に抵抗したのだろう。

⚫︎持統天皇のあと明治天皇まで誰も訪れず
 持統天皇が伊勢神宮を整備したあと明治天皇が参拝するまで、歴代天皇はどなたも伊勢神宮を参拝されていない。

 伊勢の町では今でも、正月の門飾りに「蘇民将来子孫家門(蘇民符)」を掲げ、一年間かけ続ける。『備後国風土記』逸文に登場した「蘇民将来説話(スサノヲが恐ろしい疫神だった物語)」が、伊勢でも語られていたのだ。
 これは、はたして偶然なのだろうか。伊勢の神は、実は祟る恐ろしい疫神・スサノヲではなかったか。

 第10代崇神天皇が「宮中で共に暮らすことはできない」と追いだした神は、伊勢に向かったが、この神こそ、三輪(纏向(まきむく)でもある)の大物主神であり、スサノヲではなかったか。そして、恐ろしい祟り神だったからこそ、歴代天皇は、伊勢を避けたのだろう。
 ただの祟る神ではない。天智系の王家が藤原氏のそそのかしに乗り、正体を抹殺した上で伊勢に封印してしまった祖神である。天皇家自身にとっても神に対しやましい気持が残っていたのだろう。

⚫︎なぜ山部親王は伊勢にすがったのか
 ただ、皇太子時代の桓武天皇(山部親王、やまべしんのう)は、体調不良を案じ、伊勢神宮に詣でている。なぜ、健康問題と伊勢神宮がつながったのだろう。

 桓武天皇は順調に皇位継承候補になったわけではない。本当の皇太子を死に追いやって、権利を獲得している。

 父・光仁天皇の正妃は井上内親王(いかみないしんのう)で、二人の間の子が他戸親王(おさべしんのう)だった。光仁は天智系で、天武系の称徳天皇の崩御を受けて、即位した。この時、皇位をめぐって天武系と天智系はもめたが、天武系の井上内親王を皇后に、その子の他戸親王を皇太子に立てることで、親天武派を説得し丸く収めたのだろう。
 ところが、井上内親王が光仁天皇を呪詛したという理由で、母子は幽閉されてしまったのだ。これを受けて、山部親王が皇太子に立てられた。しばらくして、母子は幽閉先で同じ日に同じ場所で亡くなってしまった。密殺されたのだろう。
 邪魔者は皇族でもワナにはめて抹殺するのが、藤原政権の手口である(ワナと言うよりもでっちあげだが)。
 いわゆる「御霊信仰(祟り封じ)」は、井上内親王と他戸親王の事件がきっかけだったと考えられている。山部親王は他戸親王が死ななければ皇太子になれなかったのだから、やましい気持があったのだろう。井上内親王と他戸親王の祟りが体調不良の原因と信じ、あわてて、伊勢の神にすがったわけである。

 問題は、なぜ祟り封じのために伊勢の神を選んだのかだ。山部親王は自らの行動によって、「伊勢の神は病をもたらす恐ろしい祟り神」であることを証明してしまったわけである。
 アマテラスの弟スサノヲは、天上界では乱暴狼藉を働いて追放される悪玉だが、地上界では八岐大蛇を退治して人々を助ける善玉になる。
 そのキャラクターは『古事記』と『日本書紀』とで大きく異なり、研究者の間でしばしば論争となってきた。ヤマト建国への関与、祭祀をめぐる天皇家との関係、縄文文化のシンボル……。
 豊富な知識と大胆な仮説で古代史の謎を追ってきた筆者が,スサノヲの正体に鋭く迫る『スサノヲの正体』
藤原不比等が神を入れ替えた?
 本来なら、天皇家の守神にもなったであろう「伊勢の神」を、恐ろしい存在にしてしまったのは、持統天皇と藤原不比等だと思う。
 祟り神でも、祀りあげれば、恵みをもたらす神に代わるはずだからだ。しかしそれを怠り,伊勢に放逐したわけだ。それはどうしてなのか。
 答えは簡単なことだ。スサノヲは天皇家にとって大切な神だったが,もうひとつ「蘇我系の神」の側面があった。乙巳(いっし)の変(645)で蘇我入鹿を滅ぼし,藤原氏は改革者・蘇我氏の手柄を横取りし,スサノヲに簑笠を着せて「悪神」に仕立て上げてしまった。そこで藤原不比等はスサノヲをアマテラスにすり替え,その上で伊勢に封印してしまったのだろう。

 ***

 この記事の後編【明治天皇はなぜ「伊勢神宮」を後回しにして“別の神社”を参拝したのか 「スサノヲと天皇家」の不思議な関係】では、1000年の時を超えて明治天皇が真っ先に参拝されたのが、なぜ伊勢神宮ではなく、ある関東の神社だったのか、その謎に迫っている。

関 裕二(せき・ゆうじ)
1959(昭和34)年、千葉県柏市生まれ。歴史作家、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼』『古代史の正体』など著書多数。

デイリー新潮編集部
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2025年、日本がもっと「後進国になる」根本理由 2025/01

2025-01-06 01:48:22 | 気になる モノ・コト

2025年、日本がもっと「後進国になる」根本理由
  東洋経済Online より 250105  野口 悠紀雄:一橋大学名誉教授


 この10年の間に、世界の多くの国々が成長を遂げたのだ。
そして、日本は変わらなかった
 世界はこの10年間に大きく変わった。
しかし、日本ではこの10年間、時計の針が止まったように、何も変わらなかった。
 日本の地位が大きく低下したのは、当然のことだ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。
 野口悠紀雄氏による連載第137回。

 10年前、日本は世界第3位の経済大国だったが、2025年には第5位に
今年は終戦80年になる。私は2015年に、『戦後経済史』という本を東洋経済新報社から刊行した。この時は、戦後70年だった。

 いま改めて読み返してみると、この10年間に、世界が大きく変化したことに驚く。2015年には、GDPの規模で、日本は、アメリカと中国についで、世界第3位だった。

 中国のGDPは、2010年に日本のGDPより大きくなっていたのだが、差はそれほど大きくなかった。私は、2014年に刊行した 『数字は武器になる』(新潮社)で、国の面積をGDPに比例した図を描いて、「実際の国土面積では取るに足らない日本が、中国と同じくらい」と書いた。
 しかし、いまや中国のGDPは日本の4.5倍だ。GDP比例の世界地図を描き直して見れば、日本は、中国の陰に隠れてしまいそうだ。

 そして日本は、GDPの規模でドイツに抜かれ、世界第4位になった。IMFの予測によると、2025年にインドに抜かれて、世界第5位になる。近い将来に、イギリスやフランスに抜かれる可能性もある。

 GDPの規模より重要なのは、1人当たりGDPで表される国の豊かさだ。
G7諸国の1人当たりGDPを見ると、2015年においては、日本はG7中で第6位だった。
2000年には日本はG7諸国中のトップだったので、2015年時点ですでに日本の凋落ぶりは顕在化していたのだが、さらに驚くのは、2015年と2024年との比較だ。

 この間に、日本以外の国の1人当たりGDPは、大きく増加している。
アメリカの場合には、実に50%の増加だ。
ヨーロッパ諸国も、イタリア以外は、20%台後半から40%台の増加になっている。
 ところが、日本の1人当たりGDPは、この間に約5%減少している。
つまり、この10年間、日本経済は歩みを止めてしまったのだ。

⚫︎世界各国が変わる中で、「止まったままだった日本」
 成長しているのは、G7諸国だけではない。アジア諸国の成長はもっと顕著だ。
日本は、2024年に一人当たりGDPで韓国や台湾に抜かれた。
こんな事態になるとは、10年前には考えたこともなかった。

 この10年の間に、世界の多くの国々が成長を遂げたのだ。
そして、日本は変わらなかった。だから日本の相対的な地位が低下したのだ。

「同じ場所にとどまるには、一所懸命に走らねばならぬ。もし別の場所に行きたいのなら、その倍の速さで走らねばな!」
 これは、ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』で、赤の女王が発した言葉だ。
私はこれを「赤の女王の相対性原理」と呼んでいたのだが、最近では、キャロルが21世紀の日本を予測して、日本人に向けて発した警告ではないのかと思えてきた。

 この間に世界経済に起きた大きな変化の1つは、中国経済の成長だ。
しかし、2015年版『戦後経済史』では、中国について、中国が工業化に成功したことを、わずか数ページ書いたに過ぎない。 

 その当時の私は、中国の経済成長の影響を軽視していたわけではない。実際、2012年には、東洋経済新報社から『日本式モノづくりの敗戦』という書籍を刊行し、中国企業の重要性について述べた。
 その本のサブタイトルを「なぜ米中企業に勝てなくなったのか」としたのだから、中国経済の成長は重視していたつもりだ。しかし、実際に生じた変化は、予想を遥かに超えた。

⚫︎日本人の思考法と基準・尺度が変わらなかった
 このように、世界はこの10年間に驚くほど変わった。それにもかかわらず、日本は変わらなかった。日本国内では、この10年間、時間の進行が止まったようだった。
 そして、10年前の思考法と基準・尺度から脱却することができなかった。

 最近、それを痛感させられるニュースが3つあった。
1つは、日産とホンダの提携を伝える新聞記事だ。仮に提携が成立すれば、世界で販売台数がトヨタとフォルクスワーゲンに次ぐ世界第3位のグループが登場すると報道されている。これは、自動車の販売台数だけにとらわれた発想だ。

 しかし、時価総額で見れば、テスラは1.483兆ドルで世界第8位(2024年12月25日現在)。それに対してフォルクスワーゲンは、463.5億ドルで世界第425位。まるで比較にならない。
 両社の時価総額の差が示しているのは、自動車がEVと自動運転車へ大きく変化しつつある事実だ。それを考えれば、販売台数が世界第3位という尺度が意味を失っていることは明らかだ。
 もう1つは、シャープ関連のニュースだ。シャープは2016年に債務超過に陥り、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った。その後、シャープについてのニュースを聞くことがなかったのだが、2024年5月に、テレビ向け液晶パネルを生産する堺工場を停止し、大型液晶パネルの生産から撤退するとのニュースが伝えられた。
 すると、この8年間、液晶パネルの生産は、変わりなく続けられていたわけだ。この記事の見出しは、「遅すぎた撤退」というものだった。シャープの社内では、8年間、時計が止まったままだったのだろうか?なお、2024年12月には、堺工場の一部がソフトバンクに売却されたと報道された。

 日本が変わらないことを痛感した3番目のニュースは、日本銀行が、12月19日、過去25年間の金融緩和策を検証する「多角的レビュー」を公表したことだ。
 2013年に導入された異次元金融緩和政策について、「導入当初に想定していたほどの効果は発揮しなかった」とした。
 しかし、これは、いま初めて明らかになったことではない。
導入して2年後の2015年に、すでに明らかになっていたことだ。
 異次元金融緩和政策は、2年間で政策目標を達成するとしていたのだから、失敗であることは、2015年の時点で明らかになっていた。
 だから、2015年で「多角的レビュー」を実施し、その時点で終了とすべきだった。
しかし、実際にレビューが行われたのは、その約10年後だった。
 この間の約10年間の歳月は、失敗した金融政策に固執しただけだったと言わざるをえない

 物価上昇率は、2021年まで2%を超えなかった。
仮に超えたとしても、日本経済を活性化することはなかっただろう。

 2022年以降の物価上昇率2%を超えたが、それは異次元金融政策のためではなく、世界的なインフレが輸入されたためだ。
 しかも、低金利に固執したため、異常な円安が生じ、物価高騰で日本の消費者の生活は貧しくなった。
 日本銀行の行内では、10年間、時計が止まったままだったのだろうか?

⚫︎日本は「ますます、ますます不思議になる」
『不思議の国のアリス』で、不思議の国に迷い込んだアリスは、curiouser and curiouser(ますます不思議になる)という有名な言葉を発している。
 日本経済の過去10年間を振り返ると、この言葉は、日本が抱える諸問題に対する日本政府や日本銀行の対応ぶり(あるいは、不対応ぶり)と、政権が次々に打ち出す奇妙な標語(例えば「新しい資本主義」)を予見し、それを形容する言葉としてキャロルが創作したものではないかと思えてくる。

仮にキャロルが生きていて日本の状況を見たら、これを修正して、curiouser and curiouser,and more and more curiouserと言ったのではあるまいか?




💋いつまでのさばる東大閥、戦時政策の放置、首都圏集中の愚、行政の不作為-不勉強、
  小選挙区制の弊害、統一模試の弊害
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財務省「国は赤字」と危機感を煽るが…「国の家計簿」を検証したら見えてきた、ニッポンの本当の台所事情【経済評論家が解説】 202501

2025-01-06 01:21:00 | 気になる モノ・コト

財務省「国は赤字」と危機感を煽るが…「国の家計簿」を検証したら見えてきた、ニッポンの本当の台所事情【経済評論家が解説】
 The Gold Online より 250105  塚崎 公義


「国は巨額の借金を抱えている」という言葉に,底知れぬ不安を感じている人も多いと思います。
 しかし,「国際収支統計」という統計資料にある「経常収支」から数字を読み解いていくと,認識と違う結果が見えてくるかもしれません。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

⚫︎経常収支は貿易収支、サービス収支などの合計
「国際収支統計」という統計があります。日本人(ここでは日本にいる個人および法人の意味、以下同様)が外国人と行った取引を記録したものです。
 そのなかで最も重要なもののひとつに「経常収支」があり、その内容は「貿易収支」「サービス収支」「第1次所得収支」「第2次所得収支」を合計したものです。

「貿易収支」は輸出から輸入を差し引いたものです。かつての日本は貿易収支が大幅な黒字でしたが、最近では多くの輸出企業が「輸出より、売れるところで作る」という方針に変わっているため、貿易収支はおおむねゼロ(原油価格で増減する)となっています。

「サービス収支」は,インバウンド旅行者が国内で支払う飲食費,宿泊費等々から,日本人旅行者が海外で支払う飲食費、宿泊費等々を差し引いたものです。
 インバウンドの消費は,日本人が働いて外国人が楽しんで対価を日本に払っているわけで,自動車等の輸出と同じようなものだ,ということで「サービス輸出」と呼ばれるのです。
かつては赤字でしたが,インバウンドが増加したので,最近では大体ゼロと考えてよいでしょう。

「第一次所得収支」は、日本人が海外から受け取る利子や配当から、日本人が外国人に支払う利子や配当を差し引いたものです。
 日本は、過去の貿易収支黒字が莫大な海外資産となっているため、利子や配当の受け取りが巨額であり、第一次所得収支は大幅な黒字となっています。

「第二次所得収支」は、途上国への援助が中心ですから、小幅な赤字です。

以上を合計した経常収支は、大幅な黒字となっています。

⚫︎経常収支は「日本国の家計簿」
 経常収支が重要なのは「日本の家計簿」だからです。家計簿が黒字ならば、給料の範囲内で暮らせているので、家計の財産は増えているでしょう。
 同様に,経常収支が黒字ならば,日本が海外に対して持っている財産が増えているのです。

 項目別に見ても、経常収支と家計簿は似ています。輸出とサービス輸出は、日本人が働いて外国人が楽しんで、対価を日本人が受け取るのですから、家計簿の給料と似ています。
 輸入とサービス輸入は、外国人が働いて日本人が楽しんで、対価を日本人が支払うのですから、家計簿の消費と似ています。
 第1次所得収支は銀行預金の利子、保有株式の配当、住宅ローンの利払いですし、第2次所得収支は赤い羽根共同募金ですね。

 もっとも、違いもあります。通常の家計簿は、現金(および銀行預金)を管理するためのものなので、株を買ったり、自動車を買ったり、住宅ローンを返したりするとマイナスになるかもしれませんが、経常収支は海外の実物資産や負債などを含めた「純資産トータル」を管理するためのものなので、そこは家計簿と違います。

 投資家が海外の銀行から預金を引き出して、その金で海外の株を買っても、海外に工場を建てても、海外からの借金を返しても、純資産内部での出入りなので、経常収支には含まれないのです。

⚫︎経常収支黒字は「我慢の対価」
 家計簿が黒字だということは、贅沢を我慢して給料の範囲内で暮らした、ということです。その結果、金持ちになったとしても、周囲から批判されるべきものではありません。経常収支黒字も同じです。
 かつて、米国から日本の経常収支黒字を批判されたとき、「賭けマージャンで勝ち続けたら友人がいなくなる」と心配した人がいましたが、家計簿の黒字と賭けマージャンの勝ちは違います。賭けマージャンの勝ちは他人が働いた金を使って自分が贅沢をするわけですから、友人がいなくなるのは当然であって、家計簿の黒字とはまったく異なるのです。

 当時の米国は、「日本が製品を輸出しすぎるから米国製品が売れず、米国民が失業している」ことを批判していたのです。それなら素直にそういってくれればよかったのに(笑)。

⚫︎経常収支黒字が円高をもたらすとは限らない
 経常収支黒字は、日本人が外国人との間で受け取る外貨が支払う外貨より多いことを示しています。そうであれば、受け取った外貨を売る人が増えてドル安円高になりそうですが、そうとは限りません。

 輸出企業は、受け取った外貨を売って社員に給料を支払いますし、輸入企業は輸入代金のドルを買うので、輸出入の貿易収支はドルの値段に直結します。
 しかし、日本の経常収支が黒字なのは海外からの利子配当収入が多いからです。
投資家は海外から利子配当を受け取ってもドルを売るとは限らず、「利子配当を使って海外の株を買い増そう」などと考える場合も多いので、ドル安円高になるとは限らないのです。

 最後になりましたが、日本は経常収支黒字が続いているので、海外に持っている純資産は巨額です。資産が巨額で、借金は少額です。
「国は赤字で借金が巨額だ」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、それは「地方公共団体ではない、中央政府」が民間部門との取引で赤字で借金をしているということですから、日本国と諸外国との取引についての話ではありません。

 誤解を避けるために「中央政府は」と言うべきだと筆者は考えているのですが、財務省は危機感を煽るために「国は赤字」と言っているのかもしれませんね(笑)。


 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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  塚崎 公義  経済評論家
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