遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

プロテアソームの相互作用

2009-05-29 23:20:22 | BIONEWS
ごみ取り部分の形成過程解明=細胞内のリサイクル装置-都研究所と東大(時事通信) - goo ニュース
プロテアソームという巨大なタンパク質分解複合体の機能の研究です。この複合体は我々の細胞のいろいろな生理現象で重要な役割を果たす装置であります。プロテアソームには分解装置と制御装置の二つの複合体で出来ていまして、酵母を使った研究で制御複合体の構成プロセスが詳細に明らかにされました。
珍しいことに都立臨床研の論文の責任著者は二人います。一人はリストの最終著者T先生。このお方は臨床研の所長さんでして、昔、四国のT島大学医学部で長い間苦労されていました。当時すでに彼は世界でプロテアソーム研究第一人者として高く評価されていましたが、所属大学ではそのような評価を得られていたとは思えませんでした。彼が都立臨床研の所長として抜擢された時に、「実力実績ある人が頑張ってれば、いいことあるんだ」と感じたものです。
もう一人の責任著者は第2著者の元東大教授T先生。彼は定年退官するまでピペットを握り続けたほんもんの「実験屋さん」です。退官後も実験を継けることを願っていまして、臨床研究所でヒラの研究員になっちまいました。退官後どっかの私立大で教授をやれば、給料はいいし楽かもしれませんが、講義ばっかりでゼミにはむやみにたくさんの学生がいて実験を自分で自由にするわけにはいかなくなります。それがやだったんでしょう。そもそも人前でしゃべるのが好きじゃなさそうだし。(笑)
彼が雇われた臨床研の研究室には彼の元を卒業して研究者として働いていた若い人がいまして、自分に学位をくれた恩師が数年後『後輩』として自分の隣で働く羽目になったという希有な逸話があります。ご愁傷様です。(笑)
さて、この元東大教授のT先生、助教授時代はO大でして、彼がO大で始めた研究テーマを行うグループに僕は所属していました。そして、そこでの研究で僕は博士号をいただいたのです。大恩ある先生なのですよ。

この都立臨床研の論文と東京大学医学部のヒト腎臓がん細胞での仕事が科学雑誌CELL137巻で並べて掲載されていますが、実はこのCELLではプロテアソームネタが3つ連続して掲載されています。もう一つ関連論文があるのですな。この論文の筆頭著者も日本人。それが、このブログに時々コメントしてくれる方(一応、匿名ってことで・・・)なんですよ。彼は僕がQ大助手時代に大学院生として同じ研究室にいました。研究グループとしては違いましたが、酵母を使って研究しているってんで、仲よくなって良く屋台へ飲みに行ったものです。博士課程終了後、彼は単身米国に渡ってプロテアソーム研究で東大や臨床研を相手にガチンコでタイマンはってます。すごいですねー。当初はライオンにケンカ売ってるレイヨウみたいなもんだと思ってましたが、ライオン達をひとりでやっつけそうですよ。こんなすごいヤツが帰国先を探して路頭に迷いかかっていることが、日本の研究環境のダメさ加減を象徴してます。
がんばれっ! 何としても生き残れっ!!

彼はその論文の中で、プロテアソームの制御装置を構成させるタンパク質をひとつひとつを丹念に複合体再構成実験で役割を明らかにしています。優しい性格なのにしぶとくて妥協のない彼らしい仕事です。
ユビキチンやってるせーのさんは読むべしです! やばい後輩が台頭してきてますよ♪

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コメント (2)
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