石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

大学の後輩と保育所と待機児童問題について議論 その2

2010-01-17 22:05:19 | 政策
その1から続く)

自治体が財政難の故、認可保育所に対する支出を増やしたくないことの一因に、認可保育所には「お金がかかる」という理由があるようです。週刊東洋経済の2009年11月7日号の記事『なぜ増えない保育所~待機児童対策は適切か』では、その理由の一つとして、公立保育所に勤める公務員の保育士の給与水準が高いことを挙げています。公立は年功制賃金で、民間に比べて勤続年数が長いため、人件費にかかる部分が相当に大きいのだと。

この点は、K君も認めるところ。だいたい保育所の運営経費の約7割が人件費なので、この部分が大きくなればそれだけ全体の経費が大きくなってしまうということです。そのために、私立保育所では、その人件費部分を圧縮するためにいろいろな手段を講じるのだとか。最低基準ギリギリで回す、保育士を賃金の安い若い保育士のみ採用する、派遣さんに頼る、などなど。いずれも、子どもを預けている親にしてみたら不安の増す話だと思いますが、そうでもしなければ、定期的に必要な設備投資に回す資金さえ貯蓄できないのが実態のようです。

都市部では、予算を増やさずに待機児童問題を解決する手段として、公立保育所の民営化を進めています。今回、厚生労働省が、保育所設置基準の緩和容認を一部の都市部で認めたことも、結局はいかにお金をかけずに受け入れ可能児童数を増やすか、という点に主眼が置かれているわけです。

ただ、こういう「切り下げ」の方向性が果たして本当に良いのかどうか・・・私とK君の議論でも最後はそこに行き着きました。

人件費の部分で言えば、すでに私立保育所の保育士さんたちはぎりぎりのレベルの給与で仕事をしています。保育士の数が抑えられる中で、個々の保育士さんたちの負担は増えており、むしろ私立保育所の保育士さんたちの労働条件の向上と、それによる保育の質の向上が検討されるべきでしょう。担い手の皆さんの生活や働きがいのことを考えないのでは、保育の場が医療や介護と同じ状況に陥りかねないからです。つまり、公立保育所の民営化などで、単純に公務員の保育士の給与水準を今の私立の保育士の水準まで切り下げて原資を確保する、というやり方には賛同できません。

そしてもう一つ大事なことが。

保育所の数(受け入れ可能児童数)やサービス(早朝・延長・休日・病児保育など)を上げていくというのは、緊急避難的には必要なことなのですが、それが中・長期的にめざすべき方向なのかというと、それには大いに疑問があるということです。

この点で私たち二人の結論は、大切なのは子どもが親と一緒に過ごす時間(近くに居られる時間)をどれだけ増やしてあげられるか、ということであり、保育所というのはあくまで補完的な役割を果たし続けるべきだ、というものです。つまり、保育所(保育士)が親を置き換えてしまうようなことはむしろ避けるべきで、そうならない政策の方を充実させていくべきだという考えです。

例えば、◎ワークライフバランス(=労働者がどういう生き方&働き方をするか選択できること)の確立、◎育児休業制度の充実(生活可能な給付レベルに)と取得の促進(育休切りなどの差別禁止と男性による取得促進)、◎各種休暇の取りやすさの促進、◎職住接近(住宅政策の見直しと一極集中の解消)の促進、などの政策こそ、積極的に推進されるべきでしょう。今回の育児・介護休業法改正で、短時間勤務制度が義務化されたことなどは歓迎すべき方向性です。

親が、仕事と子育てを難なく両立できる、両親が協力し合える、子どもとの時間を確保しながらもきちんと生活ができる、そして仕事を失ったりキャリアを犠牲にすることがない-----そういう社会こそ私たちがめざすべき社会であり、保育所のあり方というのも、そういう総合的な政策の中で、より深く検討されていくべきなのではないでしょうか。

以上、ずいぶん長くなってしまいましたが、保育所と待機児童問題についての考察でした。




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