石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

日本経済の将来~外需主導か内需主導か

2009-07-26 18:54:30 | 政策
今月号(8月号)の中央公論(中央公論社)は、「日本経済の生き残る道」という刺激的なタイトルで特集を組み、日本経済がこれから進むべき道筋について、経済学者やエコノミストからの様々な分析と提言を示しています。

様々な提言を読み比べてみると、いくつかの重要な対立軸、いわゆる方向性の違いが読み取れるのですが、その中の一つに、(A) 日本経済が今後も引き続き外需主導型の成長モデルを続けるのか、はたまた(B) 内需主導型の成長モデルへと転換する必要があるのか、という大切な論点があります。

例えば本書の中で、慶應大学の竹森教授は「医療、介護、農業で稼ぐというのは幻想で、やはり日本は製造業で伸びていくしかない」と主張されています。氏は、医療や介護中心の経済では、中長期に日本の成長率を高めることにはつながらず、「自動車を中心とする製造業の代替にはならない」と言うのです。「医療や介護に依存して高度成長を遂げた国はない」し、「医療サービスの充実は、自動車を中心とする機械産業の成長があって初めて可能である」と。なるほど。

ただ、竹森教授が批判しているのは、医療や介護を成長産業として育てていこうという考え方そのものではないと私は理解しました。氏が批判しているのは、「医療や介護に市場メカニズムを取り入れる」ことによって供給不足を解消しようという一部の主張なのでしょう。今、医療や介護の崩壊(深刻な供給不足)が起きているのは、自民党政権が財政再建至上主義によって大幅な社会保障費抑制を強行してきたためで、市場メカニズムが導入されていないからではないとの立場なのです。

一方で、早稲田大学の野口教授らは、「アメリカの消費はもう2007年以前の水準に戻ることはない」ので、「これまでのようにアメリカの過剰消費に依存した輸出頼みの成長は期待できない」ため、「経済構造を内需中心のものに転換する必要がある」と主張しています。そしてそのためには、「介護、医療、教育、農業、都市開発などにおける政府の介入を排除」して、「市場メカニズムによってこれらの分野に労働力や資源が流れ込むような制度を作る必要がある」と言うのです。

確かに、過度に輸出に依存した成長モデルから、内需主導モデルへの転換というのは、私たち労働界もかねてから主張してきた方向性です。ただ注意が必要なのは、それはもう輸出をあきらめて、製造業や「ものづくり」をないがしろにするなどという議論とは全く違うことと、国内にもっともっと市場メカニズムを導入してすべて市場(民間)に任せれば内需主導がうまくいくなどという議論とも全然違うことでしょう。その点を考えると、上記の二つの立場では、一見、私たちは野口教授らの意見に近いようですが、実は、竹森教授の意見に近いのかも知れません。皆さんはどう思われますか?

歴史的に見ても、日本の成長というのは大体いつも外需(輸出)主導であったのだと理解しています。ただ以前は、その外需主導で得られた成長の成果を国内で広く公平に分配することによって、内需の拡大と生産性の向上につなげてさらなる成長を実現したという、好循環システムが作られていたのですね。その好循環システムを支えていたのが、税制であり、社会保障制度であり、雇用制度であり、労働組合(労使関係)でした。自民党の改革、特に小泉・竹中構造改革は、その好循環システムを破壊してしまった、そのために成長モデルが揺らぎ、社会に歪みが出ているのですね。

私は結局、このテーマに関しては外需主導か内需主導かという二者択一的な議論ではなくて、外需と内需を車輪の両輪としてバランス良く前に進んでいく、そのシステムをきちんと創ることこそが政治の役割なのではないかと思うのです。

長くなってしまったので、この続きはまた今度に。皆さんからの意見をいただきながら、さらに考えを深めて行きます。



最新の画像もっと見る