ゆめ未来     

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ミステリガール/悪徳小説家/生か、死か/

2016年10月15日 | もう一冊読んでみた
 今週は、この3冊。
 ミステリガール/悪徳小説家/生か、死か/

ミステリガール/デイヴィッド・ゴードン

デイヴィッド・ゴードンの『二流小説家』が、面白かったので、続いて『ミステリガール』を読む。

コミカルな展開を見せているかと思えば、突然、哲学的に変調したり、似たような女が三人入れ替わったりダブったり、そして長い(二段組みp528)、なかなか読むのに苦労した。

 真の信仰とは、無私無欲を指す。より崇高なる善、より偉大なる善を前にして、自己を放棄し、さしだすことであると。それに対して、魔術というものは、自己の利益のために世界を操らんとする試みでしょう? おのれの力を増大せんとする試み、言うなれば……自己増大せんとする試みだわ。祈りは自己を小さくするもの。魔術は自己を大きくするもの。利己的なもの。そして、利己心な苦悩を生み出す。

 誰ひとりとして、自分の不幸の責任を他人に負わせることはできないのだから。みずから招いた不幸から自分を救えるのは自分だけなのだから。


 じつを言うと、あの男にはいわゆる3Pや三角関係に異様な執着を燃やす性癖があってな。まあ、男なら誰でも一度や二度の経験があるもんだが、いずれは体力の限界を感じたり、嫌気がさしたりするもんだ。そうだろ。

 人間の行動に、意味のないものなどひとつもない。偶然などという不条理も存在しない。

 ああ……そうか。そうだったな。
時の経過ってのは、無慈悲な追いはぎみたいなもんだ。まずは友を、次には敵を、ついには記憶までをも奪い去っていく。

くすっと笑い、考え込んだことも。

両手の小指を切断してしまい、手術で縫合するとき、取り違えて左右あべこべにつなげてしまったら、どんな感じになるのだろうか。

 『 ミステリガール/デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴訳/ハヤカワ・ミステリ 』



悪徳小説家/ザーシャ・アランゴ

最近、小説家が主人公のミステリをよく読む。
これも、その一冊。

そう来たか」、と声を出した。
面白かった。

ヘンリーは、確かに悪党に違いないが、どこか憎めないところがある。
一瞬、心豊かな主人公の話かと錯覚させる行動も取れる。
オプラディンとの友情なんて、男ならあこがれてしまう。
「宝くじ」の話なんて、心憎いではないか。
ぼくも言えるようになりたいな。言ってみたいな。「元気でな、友よ」。
もし、「聖レナータ」の「二段ベットの上に寝ていた」ヘンリーだけなら、後味の悪いミステリで終わっただろう。

 欠乏して初めてものの価値が分かる。金は有り余ればその意味を失う。すべてが正論だ。だが、無気力も無関心も、それが裕福で贅沢な生活の代償なら、それほど悪いものでもないし、少なくとも飢えと苦しみとぼろぼろの歯よりましではないだろうか? 確かに、幸せであるために有名である必要はない。人気があることと重要であることは、あまりによく取り違えられる。

 人は、体験したことのないことがらについては、よく間違った想像をするものだ。だが、やがて実際に体験してみると、それは驚くほどよく知った、慣れ親しんだものだとわかることが多い。

 罰を恐れるのは弱い者だけだ。


 性善説は反論しがたい偏見である。

ヘンリー君、人間の心は、複雑だねえ。

 「他人の創造的仕事を自分のものだと偽るなんてことが、どうしてできるんだ。」

 『 悪徳小説家/ザーシャ・アランゴ/浅井晶子訳/創元推理文庫 』



生か、死か/マイケル・ロボサム/strong>

 人生は短い。愛は果てしない。あすがないつもりで生きよ。

このような状況下でも、この信念を貫けるか。

 ひょっとしたらオーディも悪魔の帳簿のつけまちがいか人選のまちがいで地獄から送り返されたのではあるまいか。もしそうなら、桁ちがいにむごたらしい光景をみてきたのだから、刑務所暮らしをありがたく思っても不思議はない。

 運命は星々に綴られていると信じる者もいるが、それがほんとうなら自分は悪い星のもとに生まれたにちがいない。


それでも、ロブサムは励ます。

訳者あとがきに、「刑務所がらみのミステリとラブストーリの両方の要素を持つ作品を書きたかったとも語っている。」とあるが、ロブサムの愛のかたちは、こんな想いか。

 愛は人を愚かにも壊しもしないが、もろく傷つきやすくする。人を人にする。真の姿にする。

刑務所とは、こんな所。

 刑務所には、自分の頭のなかの世界しか信じない者たちがおおぜいいる。壁の外の人生を思い描けないから、自分だけの世界を作りあげる。

ほんの少しだが、救いはある。

 おれたちは弱い人間で、けだものみたいに扱われているが、それ以上のものになれると教えてくれたんだ


FBI特別捜査官、デジレー・ファーネスの「健気に生きる姿勢」に、ついつい声援を送りたくなってしまった。

読みやすく、面白いマイケル・ロボサムの一冊でした。


 『 生か、死か/マイケル・ロボサム/越前敏弥訳/ハヤカワ・ミステリ 』


コメント
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