宮下昌也の近況報告    MASAYA MIYASHITA 's News

美術家・宮下昌也の展覧会、ライブペインティングなどの活動情報と
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生活と芸術ーアーツ&クラフツ展

2009-02-27 | 展覧会
最近はわざわざ東京へ出かけてまで見たい、という展覧会が滅多にない。日々の生活は忙しいし、充実しているし、日常的現実だけで充分刺激的なのだ。そんな中で久々に、見たい!と思える展覧会がありました。東京都美術館で開催中の「生活と芸術ーアーツ&クラフツ展」。生活と芸術.....これはまさに、ここ10数年の僕の創作活動のキーワードではないか。ウィリアム・モリスや民芸運動も、もう一度おさらいするいい機会だ。これはぜひ行かなきゃ!と心に決めた3日後に、なんと「ギャラリーえいじう」さんから招待券が送られて来たのだ!神は私にこの展覧会を見よとおっしゃている...!!!
という訳で、見てきました。


アーツ&クラフツは1880年代にイギリスで起こった芸術運動で、工業生産による製品デザインの弊害を憂いた人々によって始り、その理念は「伝統的な手工業や技法の復興」「よりシンプルな生活への回帰」「日常生活の質の向上」などで、装飾芸術に純粋芸術と同等の価値を見いだしている。また、田園における質素な生活が理念を最大限に現実化したものと見なされ、この辺は現代日本でも地方生活型クラフトマンが、無意識のうちにも連綿と続くこの運動の流れの影響を受けていると思える節もある。
僕自身、19年前今のライフスタイルを選んだのは、直接的には仕事より生活を優先したからだが、そこには個人のクリエイティビティを吸い上げ消耗品としてしまう都市の業界への反発があり、創作を家庭生活や友人達(今風に言えばコミュニティ)に還元して行きたいという想いが漠然とあった。そんな当時の夢も、どこかでかいま見たモリスや柳宗悦の思想に知らず知らずのうちに影響を受けていたのかもしれない。

ただ、こういった思想理念を起ち上げたり理解したりするのは一部のインテリ達であったり、運動から生まれた質の高い工芸作品を享受出来るのは都市の限られた富裕層であったり、いくら「生活の中に芸術を!」と言っても結局一般大衆には関係ないじゃ~ん...、という印象も展示を通して受けました。まあこのジレンマは、120年前から変わらないと言う訳でしょうが、もしかすると産業革命の成れの果ての現代において、ついにさけられない環境問題の結果、今までの産業界になかった閉鎖系、循環系という発想を取り入れて行った近未来のローカル社会でこそアーツ&クラフツの理念が本当に花開くのではないか?と言うヴィジョンも見る事が出来ました。

ともあれ今回は、素敵なシンクロニシティをくれた「えいじう」さんに大変感謝!
シンクロが起きると、自分が大きな流れに乗っている事を実感出来て嬉しいね。

宮下昌也と巡る悠久の旅