村上春樹の「ノルウェイの森」をやっと読み終わった。1980年代後半に一度購入して、数ページ読んで積読となっていた。気になっていても、いざ読む時になると、無意識の抵抗があるのか、読めない本というものがあるようである。
先日1Q84を読了し、勢いづいて、再度「ノルウェイの森」読んだ。来年映画化されるという情報を得て、次はこの本だと決めたこともある。
生き甲斐の心理学をU先生から学び初めて9年経つが、この勉強のお陰で、小説の心理描写などが良く判るようになってきている(良い小説は、生き甲斐の心理学の理論に沿った書かれたかのようで、不思議である)。あるいは、この年になって、小説の本当の面白さに目覚めたのかもしれない。
舞台は1969年、1970年。東大入試が中止になり、安田講堂など学生紛争が盛んな時代である。それまでの権威は否定され。三島由紀夫が家の近くの自衛隊駐屯地で割腹自殺をした時代。一方、月面着陸が成功し、大阪万博で日本中が沸いた、変に明るい時代でもある。
伝統、権威や昔からの神仏が困難な時代を迎え、物質的な繁栄が、それと反対に力を増していく時代である。そんな時代の中で、自分も含め、何かが見え始め、何かが見えにくくなってきたと思う。
「ノルウェイの森」のヒロイン直子は、幼馴染との事件などから、精神を病み、そして最後には自殺をしてしまう。そんな悲しい小説である。自分の1970年当時の身の回りでも、同様の悲劇(自殺)が起こっていた(勿論事情は異なるが)。決して、特殊な世界の話ではない。
そして、この傾向は、自殺者統計からもわかるとおり、一向に減少しない。
生き甲斐の心理学の中で、「愛の孤独感は人を死に追いやる」(凶器のようなもの)と学ぶ。そして、優れた小説のように、出口のない状況に置かれる人は、現実の世界に確実にいるようだ。
生き甲斐の心理学普及でもっと役に立てるのではないかと思う。難しい治療も大切だろうが、予防医学的な知識の普及はそれ以上に大切だと思う。
<異物 4/8>
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