ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

さあ、新しい日本へ!

2010-07-09 19:20:48 | スポーツ
サッカーW杯も、いよいよ3位決定戦と決勝戦を残すのみとなりました。どちらが勝ちそうかという予想は、タコのパウル君に任せるとして、残念というか、悲しかったのは、フランスチーム。

内紛、監督批判、追放、練習ボイコット・・・挙句にグループリーグ敗退。バシュロ・スポーツ相(Roselyne Bachelot-Narquin)が南アフリカ滞在を延長して選手と会談したり、帰国後も、中心選手の一人、アンリがエリゼ宮に直行してサルコジ大統領と会ったり、キャプテンのエブラが記者会見を開いたり、ベテラン選手のギャラスが誌上で監督批判を繰り広げたり、そして、フランスサッカー連盟(Fédération française de football)のエスカレット会長(Jean-Pierre Escalettes)が辞任を発表(辞任は7月23日付け)・・・後任監督のローラン・ブラン(Laurent Blanc)がどう立て直すかが、今後の課題になるわけですが、今までの騒動を見ていると、いかにも個人主義のフランス、という感じがします。

もちろん、選手やマスコミとのコミュニケーションで問題があっといわれるドメニク前監督(Raymond Domenech)が選手たちをまとめ切れなかった責任が大きいのでしょうが、その選手たちも、どう見ても一体感を持ってチームとして戦ったとは見えませんでした。

でも、これも仕方のないこと。何しろ、フランス人といえば、エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)が言うように、その基本価値は自由と平等。言いたいことは言うでしょうし、自己犠牲なんて思いも浮かばないのではないでしょうか。一つのチームにまとめ上げるには、かつての、プラティニ、デシャン、ジダンといったカリスマ性のある選手がいないと難しいのかもしれないですね。

反対に、団結力で予想外の活躍を見せたのが、我らがジャパン。トッド曰くは、日本人のもつ基本価値は権威と不平等、そして秩序と安定を好む・・・監督の権威のもと、自己犠牲もいとわず、安定した戦いを進める。こんな国民性がなかったら、選手登録を終えた後、W杯開幕まで1カ月という時期に戦術を変え、託せるセンター・フォワードがいないと見るや中盤の本田をワントップに起用・・・こんなチーム作りが機能するとは思えないないですよね。たまたま本田のワントップ起用が当たったという幸運があったにせよ、選手一丸となったチームワークがなかったら、ベスト16入りは難しかったのではないでしょうか。後任の代表監督には、火事場の馬鹿力と団結力だけに頼らない、しっかりしたチーム作りを進めてほしいものです。

その後任監督ですが、チリ代表を指揮したアルゼンチン人のビエルサ氏が有力とか。ほかにも鹿島のオリベイラ監督など候補がいるようですが、どういう基準で選んでいるのでしょうか。日本サッカー協会の犬飼会長は、哲学がある・日本が好き・頑固じゃない・マスコミとうまくやれる・カリスマ性がある、という5つの条件を挙げているようですが、どれも人物評であって、どういうサッカーをする監督かという点が欠けているような気がしてなりません。日本はどんなサッカーを目指していくのか、あるいは指向しているのか。

今までの監督を振り返っても、よく見えてきません。加茂、岡田、トルシエ(フランス)、ジーコ(ブラジル)、オシム(旧ユーゴスラビア)、岡田・・・どこを向いているのでしょうか。ブラジルサッカーが好き、あるいはジーコが好き。今、選手たちはスペインサッカーが好き・・・でも、好き嫌いよりも、向き不向き。日本人プレーヤーはどこのサッカーに向いているのか。スペインで活躍できた選手は一人もいない。中田が活躍したのもペルージャ時代、松井がル・マンの太陽と称賛されたのは2年間、中村がレギュラーを取れたのはセルティック時代。他の多くの選手は、スポンサー付きで行ったにせよ、実力で行ったにせよ、夢半ばで帰国しています。

そうした中で、長年活躍したのが奥寺であり、活躍を続けているのが長谷部。いずれもドイツ、ブンデスリーガです。奥寺康彦こそが海外でプレーする日本人選手のパイオニアであり、トップリーグで最も長く活躍を続けた選手です(ケルン、ヘルタ・ベルリン、ブレーメンで9年余り)。今は横浜FCの会長職をやっていますが、ドイツでの経験をどんな立場にせよ日本代表のために生かせていないのが残念です。サッカー協会内の人間関係によるのか、日本でプレーしたのが短かったことがハンディなのか・・・いずれにせよ、奥寺康彦に活躍の場が少ないのが残念です。

そして、長谷部。ヴォルフスブルクでの活躍はご存じの通り。契約も延長しました。ますますの活躍を期待したいものです。そして、今年、ドイツに活躍の場を求めたのが、シャルケ04へ入団する内田、ドルトムントへ香川、2部のコットブスへは相馬、北朝鮮代表ですが在日3世のチョン・テセ(鄭大世)がボーフムへ。これだけドイツへと渡る選手が多いのは、たまたまなのでしょうか。ドイツ人監督たちが、日本人選手の勤勉さ、持続力、フォア・ザ・チームの精神を高く評価していることが一因とも言われています。

そう、ドイツとは、合うのですね。またまたエマニュエル・トッドですが、日本人とドイツ人は、トッドの家族分類では同じグループに入っています。直系家族(la famille souche)。その特徴は、権威、不平等、秩序、安定、自民族中心主義、教育熱心、政権交代が少ない・・・

サッカーでも、その付き合いは、実は長い。東京オリンピックが決まって、サッカーも開催国にふさわしい実力をつけようと、コーチとして招聘したのがドイツ人のデットマール・クラマー。その指導は4年後のメキシコ大会での銅メダルに結実しました。「日本サッカーの父」とも言われています。

気質が合い、しかも長い付き合いがあるドイツ。ブンデスリーガがかつての輝きを失っていたからとはいえ、どうして代表監督に呼ばなかったのでしょうか。ブラジルがいい、アルゼンチンがいい、スペインがいい・・・その時その時のブランドで選んではいませんか。候補に名の挙がっているブッフバルトが最適かどうかは別として、ぜひドイツ人監督のもとでの日本代表を観てみたいものです。

この点、自分たちの追い求めるサッカー像がはっきりしていて、ブレないのが、お隣、韓国代表です。98年以降の代表監督は、ホ・ジョンム(許丁茂)、ヒディング、コエリョ、ボンフレール、アドフォカート、ファーベーク、ホ・ジョンム。コエリョ(ポルトガル人)の2年間以外、外国人監督はすべてオランダ人。韓国人のホ・ジョンムにしても現役時代、オランダのPSVアイントホーフェンで4年ほどプレーしています。目指すは、オランダサッカー! はっきりしていますね。しかも、そのオランダは今回のW杯で決勝戦へ進出!

韓国のこの潔さというか、明確な方向性、別な言い方をすれば、選択と集中、さまざまな分野で発揮されています。空港は仁川空港、海運は釜山港、クルマは現代と起亜、家電はサムソンとLG。しかも決断が速い。財閥系のためか、トップダウン。政治も、大統領の決断一つで動きが速い。FTAをはじめ、さまざまな経済協力関係が、多くの国々と結ばれてきています。

そして、我が身を振り返れば・・・その時その時の「風」を読んで、右顧左眄。ボトムアップと言えば聞こえはいいが、決断を下す人がいない。社長も現場に最も近いことが自慢。名選手、必ずしも名監督ならず、とも言います・・・

国際大競争の時代、ぜひ旧弊を取り除いて、しっかりとしたポリシーのもと、明るい未来へ、まずはサッカー界から歩み始めてほしいものです。今回のW杯、予想以上の大きな盛り上がりを見せ、日本人としての一体感を感じた人も多かったのではないでしょうか。サッカー日本代表、ぜひ21世紀の「新しい日本」を代表するシンボルになってください。期待しています!

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