ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

アヌシーの夢、アヌシ―の抗議。

2010-10-05 19:50:35 | スポーツ
ローヌ・アルプ地方、オート・サヴォワ県の中心地、アヌシ―(Annecy)。フランス東南部、アルプスに近く、ジュネーブとシャンベリーの間にある、人口5万ほどの歴史ある都市です。パリからはTGVで3時間半ほど。風光明美な自然、そしてウィンター・スポーツを存分に楽しめる施設、ということで、語学留学先としても人気がありますね。

この町が抱いて夢とは・・・2018年の冬季オリンピック(Jeux Olympiques d’hiver)を誘致することです。今まで、フランスは冬季オリンピックを3度、開催しています。1924年のシャモニー、68年のグルノーブル、そして92年のアルベールビル。特にグルノーブル・オリンピックは、その記録映画『白い恋人たち』(“13 jours en France”)で、今も多くの方の記憶に残っているのではないでしょうか。監督は『男と女』でも有名なクロード・ルルーシュ。そして、すぐ蘇ってくるフランシス・レイ作曲のテーマ曲。

しかも、競技面でも、ジャン=クロード・キリー(Jean-Claude Killy)がアルペンの3冠王に。フランス国内はもちろん、世界中で大きな話題となりました。

あの興奮を再び・・・という夢を抱いて、アヌシーが18年の開催地に立候補したのですが、もちろん、競争相手がいます。ドイツのミュンヘン、そして韓国の平昌(Pyeongchang)。アヌシーは選ばれるでしょうか。競争相手は、それぞれ手ごわいですね。

今までの開催した回数と獲得したメダルの数を国ごとに見てみると、面白い結果になります。

<冬季オリンピックの開催回数>
・4回:アメリカ
・3回:フランス
・2回:日本、イタリア、スイス、オーストリア、ノルウェー、カナダ
・1回:ドイツ、ユーゴスラビア、ロシア(2014年の次回大会)

<冬季オリンピックで獲得したメダル数>
・ノルウェー(303)・アメリカ(253)・オーストリア(201)・ソ連(194)・ドイツ(190)・・フィンランド(156)・カナダ(145)・スウェーデン(129)・スイス(127)・イタリア(106)

これら10カ国だけが100個以上のメダルを獲得しています。フランスは・・・94個でこれら10カ国に次いでいます。メダル獲得数では11位ですが、開催回数ではすでに3度の2位。4度目の開催、どうでしょうか・・・

その点、ドイツのミュンヘンは有利。ドイツは戦前(1936年)に1度開催しただけですが、競技面では実績十分。ぜひ、戦後初の冬季オリンピックを、という立候補理由は、説得力を持ちますよね。

また韓国は、アジアで2カ国目の開催を! スケートのショート・トラックを中心に、すでに45個のメダルを獲得し、アジアではトップの座に(2位は中国で44個、日本は3位で37個)。しかも、キム・ヨナ選手のフィギュアの金も記憶に新しいですね。さらに、日本以外のアジアの国々にも、スケート以外のウィンター・スポーツを広めたいというIOC側のマーケティング上の目論見もあるでしょう。

というわけで、アヌシーの夢実現には、強敵が立ちはだかっているのですが、今度はなんと、足元にも障壁が・・・9月25日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

600人を集めた開催反対のデモが行われた! デモを呼び掛けたのは、反オリンピック委員会(le comité anti-olympique:CAO)。環境保護団体、左派の政治グループ、農業団体などを中心とした委員会で、40台のトラクターを先頭に、600名が続くデモを実施したそうです。

反対理由は、オリンピック競技施設の新設・拡充により、ただでさえ減少している貴重な自然が破壊されてしまう! 山のリゾート地にこれ以上の設備は要らない! そして、横断幕に曰く、「コンクリートか、農民の生活か」・・・

コンクリートから人へ、という我が国・民主党の政策は、どうなってしまったのでしょうね。

さて、さて、オリンピック開催にあたっては、近年つねに環境保護との両立が大きな課題となっていますが、アヌシーも例外ではないようです。環境を守るべきか、オリンピック開催による経済の活性化や雇用の改善を選ぶべきか・・・日本でなら、どこかの研究所が経済波及効果はどれくらい、とすぐ算盤をはじいているところでしょうが、フランスでは公表されているのかどうか、この記事には出ていません。短期的には経済効果も大きいのでしょうが、長期的に見た場合はどうなのか。オリンピック開催を自分の実績として歴史に残したいとか、自分の任期中だけでも経済が活性すればそれでいい、というような首長でしたら、何が何でも開催へ向けて努力をするでしょうが、環境にも目配せできるような人なら、どうでしょうか、開催にこだわるでしょうか・・・

提案書の修正をIOCから指示されたアヌシー。冬季オリンピック開催という夢は、実現するのでしょうか。決定は、来年7月6日のIOC総会でなされます。

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