ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

日本は、おいしい。

2010-07-08 20:00:40 | 経済・ビジネス
6月の恒例行事、株主総会。今年からは1億円以上の高額所得者の公開が行われましたが、そのリストのトップに立ったのは、日産のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)社長。8億9,000万円。SONYのストリンガー会長とともに、群を抜いた高額所得でした。株主たちはどのような反応を示したのでしょうか。

ゴーン社長の高額給与には株主の間でも不満が出ていたようですが、しかし株主総会の後の懇親会では、ゴーン社長を写真に撮って大喜びの株主たち・・・まるで韓流スターに群がるファンのようなノリでした。

日本では好感をもたれている、反発は大きくならない。そんな計算があったからでしょうか、堂々の8億9,000万円。多すぎるのではないかという質問には、これがインターナショナルなスタンダードだ! 

確かに、日産は多くの国でビジネス展開しているインターナショナルな企業。でも、インターナショナルというとカッコいいですが、世界中共通と言い切れるのでしょうか・・・

ゴーン社長が会長を兼務しているルノー(Renault)。このフランスのカー・メーカーも立派なインターナショナル企業ですよね。では、ゴーン社長はルノーからも8億9,000万円もらっているのでしょうか・・・

ノン、そう答えはノーなんですね。ルノーからもらったのは、124万ユーロ。1ユーロ=110円として、1億3,640万円。たった1億ちょっと。日産からの給与の6.5分の1。日産のビジネスのために割いた時間がルノーへのそれより6.5倍あったのでしょうか。そうは思えませんよね、逆はあっても。

しかも、日産は、確か、無配だったんですよね。さらに、日本人COOより、二人の外国人副社長のほうが高給だった!

いいようにやられていませんか。わたしは幸いにも日産の株主ではないのですが、それでもこれはちょっとやりすぎじゃないかと思えてしまいます。国民も組合もうるさいフランスでは所得を抑え、その不足分を日本でごそっと取っていく。見くびられてはいませんか。日本人はおとなしいから。世界はこんなレベルだと言えば、勝手に納得してしまう。

『世界の日本人ジョーク集』(早坂隆著、中央公論新社刊)に、こんな話が載っていました。

ある豪華客船が航海の最中に沈みだした。船長は乗客たちに速やかに船から脱出して海に飛び込むように、指示しなければならなかった。
アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄ですよ」
イギリス人には「飛び込めばあなたは紳士ですよ」
ドイツ人には「飛び込むのがこの船の規則となっています」
イタリア人には「飛び込むと女性にもてますよ」
フランス人には「飛び込まないでください」
日本人には「みんな飛び込んでますよ」

付和雷同。周囲を見渡して、多数派の後を追う。そして、外圧に弱い日本人。見透かされていますね。世界はこうなんだ、と言い切ってしまえば、何となく納得してしまう・・・

ところで、ゴーン日産社長が8億9,000万円という高額な年収を得ているという情報はフランスにも伝わりました。すると、労働組合のCGT(Confédération générale du travail:労働総同盟)が、労使の話し合いをすぐにでも始めたいと言い始めたようです。CGTは、8億9,000万円ももらったということは、日産の業績が絶好調なのに違いない。ということは、コスト・カッターの異名をとるゴーン社長のコスト削減、たとえば人員削減や作業の効率化が貢献したに違いない。その余波がフランスへ・・・ルノーでも日産にならって作業現場でのプレッシャーが強くなるのではないか、雇用の将来が不透明になるのではないか、といろいろと不安を抱いているのかもしれません。でも、安心なされ。確か日産は、ようやく黒字に転換したとはいえ、株主には無配という状況。それでいて、8億9,000万円! フランスでは、考えられないことでしょうね。フランスでこんなことをしたら、終わりの見えないデモとストライキ!

わたしたちも、事なかれ主義はやめて、言うべきは言う。当たり前のことですが、相手が欧米人であろうと、しっかりと意思表示すべきですよね。来年こそは、がんばれ、物言う株主!!!

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