フランスに「社会連帯および都市再生法」(la loi de solidarité et de renouvellement urbain:SRU)という法律があります。2000年12月13日に成立した法律で、3,500人以上の人口を抱える市町村は公共の住宅を十分に供給する義務があり、その数は住居全体の20%以上でなければならないという内容です。しかも、20%を確保できない自治体は、その割合に応じた罰金を支払わなければならないという罰則規定まで設けられています。建前や絵に描いた餅、あるいは単なるお題目としての目標ではなく、公共住宅の十分な提供を各自治体に義務として課しているわけです。
公共住宅の比率20%を達成できずに罰金を払った市町村とその額が、12月28日の経済紙“Les Echos”(『レゼコー』)に発表されましたが、その情報を引用しつつ『ル・モンド』(電子版)が1日早く27日に概略を伝えています。その記事によると、最も高額な罰金を払った都市は・・・
社会住宅(les logements sociaux)の比率20%をクリアできずに、パリ市は1,500万ユーロ(約16億5,000万円)支払った。罰則として支払われた額は環境・住宅省から入手した数字で(ということですので、確かな数字なのでしょう)、もちろんパリ市が支払った額が最高額。続いてヌイイ市(Neuilly-sur Seine:パリ西郊)、ブローニュ・ビヤンクール市(Boulogne-Billancourt:パリ南西郊外)、ニース市(Nice:南仏)、サン・モール・デ・フォッセ市(Saint-Maur des Fossés:パリ南東郊外)、ボルドー市(Bordeaux:ワインで有名)と続いている。そしてパリを含めたこれら6都市が100万ユーロ(約1億1,000万円)以上を支払った都市だ。
住宅担当大臣のブノワ・アパリュ(Benoist Apparu)が12月21日に下院で語ったところによれば、20%を達成できなかった都市が2010年に支払った罰金の総額は7,500万ユーロ(約82億5,000万円)だった(ということは、パリ市が全体の5分の1、20%を占めたことになりますね)。
パリ市治安監視委員会(le comité de vigilance de la Ville de Paris)が昨年10月に公表したレポートによると、ドラノエ市長(Bertrand Delanoë:社会党)が2008年に再選(任期7年)された市長選挙の際、2014年までに公共住宅の比率20%を達成することを公約の一つに掲げていたが、当選後2年半の状況を見ると、この公約はとても守れそうにない、ということだ・・・
ということなのですが、ドラノエ市長、夏のヴァカンス・シーズンにセーヌ河畔を浜辺のようにして、ヴァカンスに出かけられないパリの人々にリゾート気分を味わわせるとともに、新たな観光スポットにしたり(パリ・プラージュ)、公共のレンタサイクル(ヴェリブ:velib’=le vélo en libre service)を始めたり、今度は公共のレンタカーを始めたり・・・市民の人気も高いアイディア市長なのですが、公共住宅20%の目標は実現できないようです。
パリ市の場合は、新たな住宅用ビルを建てるスペースがほとんどないので難しいのでしょうが、他の地域、特にヌイイ市などパリ近郊の富裕層が住むエリアでは、スペースがあっても外国人や移民を受け入れたくないという意識が、低所得者層住宅の建設を妨げているのではないでしょうか。たとえ罰金を払ってでも、外国人を中心とした低所得者層を周囲に住まわせたくない・・・移民受け入れに関して、フランスは同化主義で、言葉や習慣などすべてフランス式に合わせるよう移民側に求めますが、一方イギリスは多元主義で、移民の共同体を認めると言われています。しかし、住居エリアに関しては、フランスは都市郊外にHLM(habitation à loyer modéré:適正家賃住宅)など低所得者用住居ビルを数多く建て、移民をそこに押し籠めていますが、イギリスでは混住しており、それがイギリスで移民の暴動などが少ない理由の一つとも言われています。
移民受け入れ、特にその住環境をどうするのか・・・日本も無関心ではいられません。私たちの周辺に住む外国人も増えてきています。しかも、さらに増えそうな状況が次々と生まれています。例えば、日本企業が日本人と同じ条件で外国人を採用し始めています。単なる労働力としてではなく、専門職として、エキスパートとして、あるいは将来の経営を担う人材として日本企業に採用され、日本に住む外国人も増えてくることでしょう。外国人とどう共存するのか、早めに考え、社会としてのコンセンサスを得ておく必要があるのではないでしょうか。地域によってはすでに考えたり悩んだりしているのでしょうが、日本社会として外国人とどう共生するのか、一日も早く共通認識を得たいものです。
公共住宅の比率20%を達成できずに罰金を払った市町村とその額が、12月28日の経済紙“Les Echos”(『レゼコー』)に発表されましたが、その情報を引用しつつ『ル・モンド』(電子版)が1日早く27日に概略を伝えています。その記事によると、最も高額な罰金を払った都市は・・・
社会住宅(les logements sociaux)の比率20%をクリアできずに、パリ市は1,500万ユーロ(約16億5,000万円)支払った。罰則として支払われた額は環境・住宅省から入手した数字で(ということですので、確かな数字なのでしょう)、もちろんパリ市が支払った額が最高額。続いてヌイイ市(Neuilly-sur Seine:パリ西郊)、ブローニュ・ビヤンクール市(Boulogne-Billancourt:パリ南西郊外)、ニース市(Nice:南仏)、サン・モール・デ・フォッセ市(Saint-Maur des Fossés:パリ南東郊外)、ボルドー市(Bordeaux:ワインで有名)と続いている。そしてパリを含めたこれら6都市が100万ユーロ(約1億1,000万円)以上を支払った都市だ。
住宅担当大臣のブノワ・アパリュ(Benoist Apparu)が12月21日に下院で語ったところによれば、20%を達成できなかった都市が2010年に支払った罰金の総額は7,500万ユーロ(約82億5,000万円)だった(ということは、パリ市が全体の5分の1、20%を占めたことになりますね)。
パリ市治安監視委員会(le comité de vigilance de la Ville de Paris)が昨年10月に公表したレポートによると、ドラノエ市長(Bertrand Delanoë:社会党)が2008年に再選(任期7年)された市長選挙の際、2014年までに公共住宅の比率20%を達成することを公約の一つに掲げていたが、当選後2年半の状況を見ると、この公約はとても守れそうにない、ということだ・・・
ということなのですが、ドラノエ市長、夏のヴァカンス・シーズンにセーヌ河畔を浜辺のようにして、ヴァカンスに出かけられないパリの人々にリゾート気分を味わわせるとともに、新たな観光スポットにしたり(パリ・プラージュ)、公共のレンタサイクル(ヴェリブ:velib’=le vélo en libre service)を始めたり、今度は公共のレンタカーを始めたり・・・市民の人気も高いアイディア市長なのですが、公共住宅20%の目標は実現できないようです。
パリ市の場合は、新たな住宅用ビルを建てるスペースがほとんどないので難しいのでしょうが、他の地域、特にヌイイ市などパリ近郊の富裕層が住むエリアでは、スペースがあっても外国人や移民を受け入れたくないという意識が、低所得者層住宅の建設を妨げているのではないでしょうか。たとえ罰金を払ってでも、外国人を中心とした低所得者層を周囲に住まわせたくない・・・移民受け入れに関して、フランスは同化主義で、言葉や習慣などすべてフランス式に合わせるよう移民側に求めますが、一方イギリスは多元主義で、移民の共同体を認めると言われています。しかし、住居エリアに関しては、フランスは都市郊外にHLM(habitation à loyer modéré:適正家賃住宅)など低所得者用住居ビルを数多く建て、移民をそこに押し籠めていますが、イギリスでは混住しており、それがイギリスで移民の暴動などが少ない理由の一つとも言われています。
移民受け入れ、特にその住環境をどうするのか・・・日本も無関心ではいられません。私たちの周辺に住む外国人も増えてきています。しかも、さらに増えそうな状況が次々と生まれています。例えば、日本企業が日本人と同じ条件で外国人を採用し始めています。単なる労働力としてではなく、専門職として、エキスパートとして、あるいは将来の経営を担う人材として日本企業に採用され、日本に住む外国人も増えてくることでしょう。外国人とどう共存するのか、早めに考え、社会としてのコンセンサスを得ておく必要があるのではないでしょうか。地域によってはすでに考えたり悩んだりしているのでしょうが、日本社会として外国人とどう共生するのか、一日も早く共通認識を得たいものです。