ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

ワールド・カップは、マネー・カップだった。

2010-10-20 19:44:07 | スポーツ
華麗なパスサッカーで魅せたスペインが優勝し、しかも日本代表がベスト16に進出したため、大いに盛り上がったワールドカップ南アフリカ大会。次回は2014年のブラジル大会。ザック・ジャパンがどんな戦いを見せるのか、今から楽しみですが、日本はその先、2022年大会の誘致に乗り出しています。

もちろん、競合相手がいて、韓国、カタール、オーストラリアという同じAFC(アジアサッカー連盟)所属の3カ国と、アメリカ。初めての開催を目指すオーストラリアが、国際的なスポーツ大会開催の実績、競技レベル、インフラなどの点も含めて優位かと思われますが、南アフリカ、ブラジルと南半球での開催が続くことがどう影響するか、またカタールのオイル・マネーも侮れず、日本も含めて5カ国の激戦が予想されます。12月2日にスイスのチューリッヒで行われる理事会で決定される予定ですが、この日には、2018年大会のホスト国も決定されます。こちらには、イングランド、ロシア、スペイン・ポルトガルの共催、ベルギー・オランダの共催、というUEFA(欧州サッカー連盟)所属の4候補があり、こちらも大激戦。

2018年、2022年ともに激戦だけに事前運動が活発に。「夏には豪州協会関係者がFIFAの幹部に真珠やネックレスなど高価な品物を贈った問題が地元紙に報じられた。イングランドでは、スペインが招致からの撤退を取引材料にW杯南アフリカ大会での審判員買収をロシアに持ちかけたと発言し、招致委会長が辞任に追い込まれてもいる」(18日:産経)といった騒動がありましたが、ついに、やはり、というべき「マネー」絡みの事件が起きてしまいました。

日本のマスコミも伝えていますが、『ル・モンド』も17日、18日、二日連続で詳細を伝えています。

事の発端は、英紙『サンデー・タイムス』が「ワールド・カップ、その票売り出し中」(仏語訳:Coupe du monde : des votes à vendre)というタイトルの記事を掲載したこと。その内容は・・・

『サンデー・タイムス』紙の記者が、アメリカの誘致活動を支援するロビイストになりすまし、FIFAの委員に接触したところ、理事一人と副会長一人が、アメリカへの投票と引き換えに金銭を要求した。証拠としてその映像まである!

おとり取材に引っかかって金銭を要求したという二人は、ナイジェリア出身のアダム理事(Amos Adamu)とタヒチ出身のテマリイ(Reynald Temarii)副会長。アダム理事は57万ユーロ(約6,500万円)を要求。FIFAの副会長であり、OCF(オセアニアサッカー連盟)の会長でもあるテマリイ氏は、160万ユーロ(約1億8,000万円)をスポーツ・アカデミー建設のために要求するとともに、すでに2候補がOCFに何らかの金銭を支払い済みであると漏らしたそうです。

この記事が出るや否や、FIFAのゼップ・ブラッター会長(Sepp Blatter)は、この好ましからざる状況に際し、徹底した調査を命じるとともに、委員たちにこの件に関しては意見を公にしないよう要請しました。

記事で指摘された2委員に関しては、倫理委員会が取りうるすべての手段を講じて事実を明らかにするとともに、おとり取材のターゲットになったと言われる他の委員に対しても調査を開始。また、今回の件に関連した委員を輩出している各連盟とそこに所属する18年・22年大会への候補国に対しても、不正な活動がなかったか調べることになりました。

莫大なマネーが動くと言われているワールドカップとFIFA。ベールに包まれてきた闇の部分をどこまで明らかにすることができるのでしょうか。どこまでの自浄作用が期待できるのでしょうか・・・

かつて『黒い輪 権力・金・クスリ―オリンピックの内幕』(原題:The Lords of the Rings)という本が出版されていました。タイトルから分かるように、オリンピックの五つの輪は、権力、金、ドーピングにまみれた黒い輪だ、という内容の本なのですが、国際オリンピック委員会(IOC)のみならず、国際サッカー連盟(FIFA)、国際陸上競技連盟(IAAF)も同じような状況にあると書かれていたと記憶しています。出版された1992年当時、IOCはサマランチ(スペイン)、FIFAはアヴェランジェ(ブラジル)、IAAFはネビオロ(イタリア)という会長がトップの座に長く君臨し、ラテンの三悪人とも呼ばれていました。スポーツ・マーケティングをめぐる「マネー」。日本の「政治とカネ」以上に規模も大きく、根が深いのかもしれません。せめて選手たちがこうした動きに巻き込まれず、素晴らしいプレーで「金メダル」・「優勝」を目指してほしいと願っています。

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