キネオラマの月が昇る~偏屈王日記~

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セッション9

2003年08月30日 | 映画
 これ、シャイニングだね。 ホテルじゃなく病院を舞台にしたシャイニング。 たしかに、建物に執り憑く妄執の存在もあるかもしれないけど、人の精神の脆弱さが一番恐ろしいという、作品のテーマが一緒。 多分、脚本の人はシャイニング好きだと思う、絶対。
 精神病院を町役場に改装するのに雇われた、アスベスト除去の会社の男たちが、どんどん追い詰められていく話。
 オチはといえば、オバケや幽霊よりも、生きている人間が一番怖い・・・・・・ある意味、真理ですなあ。 だから、この映画はホラーというより心理劇なんだよね。
 舞台装置としての廃病院が怖い。 壁のペンキが瘡蓋のように剥がれかけているのとか、壁一面に張られた古い写真とか・・・。
 天井が低く長い廊下の壁一面に、ビニール製の手術着がずらっとかけてあるシーンでは、鳥肌が立った。
 血や大きな音で驚かしたりするのではなく、あくまでも淡々と静寂の中、物語が進行していくのが、怖さとともに哀しみを誘った。

 世の中で一番怖いこと、それは、働いて女房、子供を食わせていくこと・・・そんな、男だったら洒落になんない怖さを描いた、サイコ・サスペンスの佳作。

「ボーン・アイデンティティ」

2003年08月22日 | 映画
 マット・デイモン主演のスパイ・スリラー。 
 思った以上に面白かった。
 そのひとつが殺陣。 いまや、ハリウッドのアクションものは、どんどん表現のインフレがすすみ、ワイヤー・アクションやら、フローズン・モメントやらを多用しすぎ。
 007やチャリエンも大好きだが、この映画と比べると格闘シーンについては、お子様ランチといった趣。
 ガンと己の肉体のみを使った格闘シーンは、非常にリアルで手に汗握った。 ハーバード出の、ひ弱なインテリのイメージの強かったマットが、鍛錬した肉体を武器に素晴らしいアクション・シーンを見せてくれる。
 特に主人公ボーンが住んでいるパリのアパートにCIAの刺客が入ってくるところと、パリの女スパイがアジトにしてるアパート階段での戦い。 アクション監督は誰なんだろう?

 この映画を観て、白土三平の忍者ものをふと思ったりした。
 スパイの、超人的に強いだけではなく、体制に利用される哀れさのようなものを細やかに描いていたと思う。
 仏郊外の農家のそばの草原で、マットに敗れ死んでいく刺客が、「見ろ、これが俺たちの末路だ」といったあたりは、「死して屍拾うものなし」の世界。
 
ヒロイン役のフランカ・ポテンテ(すんごい印象深い響きの名前!)は、所謂、美人というのとは違うが、クセの強いマットの顔には割りに似合ってて、なかなかいい組み合わせだったと思う。
 オンボロの赤いミニを使ったカー・チェイスも良かった。

 ダグ・リーマンはインディーズ界出身の監督らしいが、あえて、パリやローマを舞台に選んだあたりに、ハリウッド・メイドの監督とは違うセンスが光った。  

華氏451

2003年08月12日 | 映画
 たまには、トリュフォーなど。 レイ・ブラッドベリ原作のSFをトリュフォーが映画化。
 読書を禁止された未来社会。 かつては、火を消すのが仕事だった消防士は、本を焼くのが仕事となっている。
 とにかく、オープニングの前衛さにびっくり。 延々、アンテナ、アンテナ、アンテナ。 そのすべてに違う色のフィルターがかかってて、カラフル。 キャストやスタッフの名を、声を出して読み上げるタイトル・ロール、生まれてはじめて観た・・・というか、たぶん最初で最後だろう。 パクる人がない限り。
 赤い消防車に黒い制服を着て、整然と乗り込む消防士はなんかキュート。 思わず真似したくなるほど。 フィギュアがあったら欲しい。
 1966年の作品だから、インテリアやモノレールなど、古いんだけど新鮮で飽きない。 トリュフォー=難解という先入観があったけど、この映画は飽きずに観られる。
 そうそう、妻とクラリス二役のジュリー・クリスティーは、マジ、マネキンみたいな美女。