キネオラマの月が昇る~偏屈王日記~

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「ボーン・アイデンティティ」

2003年08月22日 | 映画
 マット・デイモン主演のスパイ・スリラー。 
 思った以上に面白かった。
 そのひとつが殺陣。 いまや、ハリウッドのアクションものは、どんどん表現のインフレがすすみ、ワイヤー・アクションやら、フローズン・モメントやらを多用しすぎ。
 007やチャリエンも大好きだが、この映画と比べると格闘シーンについては、お子様ランチといった趣。
 ガンと己の肉体のみを使った格闘シーンは、非常にリアルで手に汗握った。 ハーバード出の、ひ弱なインテリのイメージの強かったマットが、鍛錬した肉体を武器に素晴らしいアクション・シーンを見せてくれる。
 特に主人公ボーンが住んでいるパリのアパートにCIAの刺客が入ってくるところと、パリの女スパイがアジトにしてるアパート階段での戦い。 アクション監督は誰なんだろう?

 この映画を観て、白土三平の忍者ものをふと思ったりした。
 スパイの、超人的に強いだけではなく、体制に利用される哀れさのようなものを細やかに描いていたと思う。
 仏郊外の農家のそばの草原で、マットに敗れ死んでいく刺客が、「見ろ、これが俺たちの末路だ」といったあたりは、「死して屍拾うものなし」の世界。
 
ヒロイン役のフランカ・ポテンテ(すんごい印象深い響きの名前!)は、所謂、美人というのとは違うが、クセの強いマットの顔には割りに似合ってて、なかなかいい組み合わせだったと思う。
 オンボロの赤いミニを使ったカー・チェイスも良かった。

 ダグ・リーマンはインディーズ界出身の監督らしいが、あえて、パリやローマを舞台に選んだあたりに、ハリウッド・メイドの監督とは違うセンスが光った。