キネオラマの月が昇る~偏屈王日記~

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井上雄彦のリアリズム

2004年09月17日 | 漫画
「バガボンド」 井上雄彦 1~18巻 を読む。

カッ・・・・・・・コイイ!(タメ長いな)
そっか、これが手塚治虫が最後に見出した漫画家、井上雄彦かぁ。

最初は、まるで現代人が戦国時代のコスプレをしてるみたいな絵のタッチに馴染めなかったけど、どんどん面白くなってきて、佐々木小次郎登場以降は5~6回読み返したよ。

特に胸を打たれたのは、鐘巻自斎が不動幽玄斎を倒しに行くところ。
時代劇の映画やドラマでは、斬り合いといってもまるで踊りの型のような華麗な殺陣(たて)で、恐怖や痛みなど全く感じられない絵空事にすぎない。
でも、井上は人間の弱さや怯えも描くから斬り合いのシーンが凄くリアルだ。
読んでる間は完全に自斎に感情移入して、自斎となって不動を恐れたし、自斎となって不動を憎んだし、自斎となって不動に斬りかかった。
・・・・いや、マジで。

「バガボンド」の作中では、鐘巻自斎は剣豪というより、ただの孤独な変人に過ぎない。
その変人が愛すべき存在=小次郎を得て、初めて人として完成されていく件(くだり)は見事というほかない。

漫画はストーリーと絵と二つの魅力を楽しむものだけど、この井上は本当に美しい男を描くね。
獣じみたギラギラした眼の男たちのなんと魅力的なことよ。
この人がホモ・セクシュアルだと聞いても驚かないね、私ぁ。
それくらい男の美しさを描ききってるもの。

巌流島の決闘が楽しみ。