JDFが障がい者制度改革推進会議にあたって、政府の障害者基本法改正案に対する見解を公表した。
多くの障害者団体からなるJDFは様々な障害特有のニーズの解決とともに、障がい者全体の福祉と権利の向上を目指して意見をまとめたのが第二次意見だ。
しかし、この内容と大きな隔たりがあることを指摘している。障害者基本法の改正の内容と性格を説明するための「前文」がないこと、「可能な限り」と権利の制限を思わせる言葉が入っていること、「合理的配慮」は規定されても、「差別や理的配慮」の定義がないことなどが指摘されている。
聴覚障害者の立場から言えば、「言語としての手話」の記述があることは評価されても、情報・コミュニケーションの条項が具体的なものがないこと、後者については個別法で補強するという説明があった。
ラビット 記
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2011年4月18日
障害者基本法の改正等についての見解
日本障害フォーラム(JDF)
代表 小川 榮一
本題に入る前に、3月11日に発生した大地震と津波、それに伴う福島第一原発事故の問題が複合的に作用している「東日本大震災」は、障害者や関係者にも甚大な被害を与えた。JDF構成団体一同、今回の大震災により、多くの尊い生命がうばわれたことに心からお悔やみ申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
Ⅰ.障害者基本法3月14日改正版についての意見
3月14日付で内閣府により示された障害者基本法の改正案について、評価すべき点があるものとは認識しつつも、基本的には、12月17日に障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)で取りまとめられた「障害者制度改革の推進のための第二次意見」(第二次意見)の内容と大きなかい離があると言わざるを得ない。
JDFとしては、2008年以降、障害者権利条約の規定に基づいた障害者基本法の抜本的な改正を求めて活動してきた。推進会議においても、それを前提に精力的に議論してきたところである。しかしながら、JDFをはじめとする障害当事者、関係者の努力にもかかわらず、多くの課題が残された。たとえば、前文が入っていないこと、基本原則(第三条)において地域生活の権利規定がされず「可能な限り」の選択の自由という限定的な文言が入っていること、「合理的な配慮」という文言の規定はされているが、差別や合理的配慮の定義が明記されていないこと、精神障害者の社会的入院の解消や医療の問題について規定がないこと、教育条項の内容、労働に関する条項の内容など、多くの問題を指摘せざるを得ない。
一方で、手話の言語性が確認され、国際関係の条項、司法手続きにおける配慮、勧告や応答義務を盛り込んだ推進体制の規定など、一定の評価できる点があることも事実である。
私たちは、障害者基本法改正案3月14日版における問題点や課題については、今後の国会における議論等によるさらなる改正を求めるものである。JDFとして与野党をはじめ各省庁とあらゆる機会を通して、個別の政策課題について、継続した取り組みを進める。
Ⅱ.災害復興対策に関すること
1.障害者基本法に関して
障害者権利条約第11条「危険な状況及び人道上の緊急事態」に基づき、障害者基本法において、① 障害者の被害の実態の検証、② 検証から見えてきた障害者が必要とする支援体制の確立、③ 復興において、障害者権利条約の理念に基づき、障害当事者の参画のもとでのインクルーシブ社会の「新生」などに関する緊急事態における障害者の保護と安全の確保に関することについて、国会でも審議を求めるものである。
(提案理由)
JDFは、震災直後より各構成団体での障害者救援活動が取り組まれるとともに、それらをネットワークする形で「JDF被災障害者総合支援本部」を設置し、地元団体と連携して被災地の障害者救援活動に取り組んできている。
災害等緊急事態において、緊急に求められる被災者の救済や新たな社会づくりに向けた取り組みについては、人の生命に関わる重大な検討課題であるにも関わらず、この間の推進会議等の議論の中で議論がなされなかった。このことについては反省するとともに、この現状に鑑み、障害関連法の中核法たる障害者基本法において、緊急事態における障害者の安全と支援等についての規定がされるよう、今後の国会でも検討されたい。
2d.災害復興の検討に際して障害当事者の参画を
現在、政府で進められている「復興構想会議」のメンバーに、障害当事者はもちろん、障害福祉に造詣の深い関係者等も見られないことにも懸念を抱かざるを得ない。当事者の声を抜きにして、障害あるなしにかかわらず平等でインクルーシブな社会の構築という障害者権利条約の理念がゆがめられる形であってはならない。現在、進められている障害者制度改革(障がい者制度改革推進本部長/菅直人内閣総理大臣)は、障害当事者参画を基本に進められており、これを踏まえれば、「復興構想会議」の構成メンバー等に障害当事者を参加させるべきと考える。 (以上)
多くの障害者団体からなるJDFは様々な障害特有のニーズの解決とともに、障がい者全体の福祉と権利の向上を目指して意見をまとめたのが第二次意見だ。
しかし、この内容と大きな隔たりがあることを指摘している。障害者基本法の改正の内容と性格を説明するための「前文」がないこと、「可能な限り」と権利の制限を思わせる言葉が入っていること、「合理的配慮」は規定されても、「差別や理的配慮」の定義がないことなどが指摘されている。
聴覚障害者の立場から言えば、「言語としての手話」の記述があることは評価されても、情報・コミュニケーションの条項が具体的なものがないこと、後者については個別法で補強するという説明があった。
ラビット 記
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2011年4月18日
障害者基本法の改正等についての見解
日本障害フォーラム(JDF)
代表 小川 榮一
本題に入る前に、3月11日に発生した大地震と津波、それに伴う福島第一原発事故の問題が複合的に作用している「東日本大震災」は、障害者や関係者にも甚大な被害を与えた。JDF構成団体一同、今回の大震災により、多くの尊い生命がうばわれたことに心からお悔やみ申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
Ⅰ.障害者基本法3月14日改正版についての意見
3月14日付で内閣府により示された障害者基本法の改正案について、評価すべき点があるものとは認識しつつも、基本的には、12月17日に障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)で取りまとめられた「障害者制度改革の推進のための第二次意見」(第二次意見)の内容と大きなかい離があると言わざるを得ない。
JDFとしては、2008年以降、障害者権利条約の規定に基づいた障害者基本法の抜本的な改正を求めて活動してきた。推進会議においても、それを前提に精力的に議論してきたところである。しかしながら、JDFをはじめとする障害当事者、関係者の努力にもかかわらず、多くの課題が残された。たとえば、前文が入っていないこと、基本原則(第三条)において地域生活の権利規定がされず「可能な限り」の選択の自由という限定的な文言が入っていること、「合理的な配慮」という文言の規定はされているが、差別や合理的配慮の定義が明記されていないこと、精神障害者の社会的入院の解消や医療の問題について規定がないこと、教育条項の内容、労働に関する条項の内容など、多くの問題を指摘せざるを得ない。
一方で、手話の言語性が確認され、国際関係の条項、司法手続きにおける配慮、勧告や応答義務を盛り込んだ推進体制の規定など、一定の評価できる点があることも事実である。
私たちは、障害者基本法改正案3月14日版における問題点や課題については、今後の国会における議論等によるさらなる改正を求めるものである。JDFとして与野党をはじめ各省庁とあらゆる機会を通して、個別の政策課題について、継続した取り組みを進める。
Ⅱ.災害復興対策に関すること
1.障害者基本法に関して
障害者権利条約第11条「危険な状況及び人道上の緊急事態」に基づき、障害者基本法において、① 障害者の被害の実態の検証、② 検証から見えてきた障害者が必要とする支援体制の確立、③ 復興において、障害者権利条約の理念に基づき、障害当事者の参画のもとでのインクルーシブ社会の「新生」などに関する緊急事態における障害者の保護と安全の確保に関することについて、国会でも審議を求めるものである。
(提案理由)
JDFは、震災直後より各構成団体での障害者救援活動が取り組まれるとともに、それらをネットワークする形で「JDF被災障害者総合支援本部」を設置し、地元団体と連携して被災地の障害者救援活動に取り組んできている。
災害等緊急事態において、緊急に求められる被災者の救済や新たな社会づくりに向けた取り組みについては、人の生命に関わる重大な検討課題であるにも関わらず、この間の推進会議等の議論の中で議論がなされなかった。このことについては反省するとともに、この現状に鑑み、障害関連法の中核法たる障害者基本法において、緊急事態における障害者の安全と支援等についての規定がされるよう、今後の国会でも検討されたい。
2d.災害復興の検討に際して障害当事者の参画を
現在、政府で進められている「復興構想会議」のメンバーに、障害当事者はもちろん、障害福祉に造詣の深い関係者等も見られないことにも懸念を抱かざるを得ない。当事者の声を抜きにして、障害あるなしにかかわらず平等でインクルーシブな社会の構築という障害者権利条約の理念がゆがめられる形であってはならない。現在、進められている障害者制度改革(障がい者制度改革推進本部長/菅直人内閣総理大臣)は、障害当事者参画を基本に進められており、これを踏まえれば、「復興構想会議」の構成メンバー等に障害当事者を参加させるべきと考える。 (以上)
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