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韓国 貧困に苦しむ高齢者たち

2021-06-13 17:08:26 | 日記

韓国 貧困に苦しむ高齢者たち

貧困の中で必死に生き抜くお年寄りたち。

文在寅政権は急速な高齢化にどう向き合うのか

稲田清英 朝日新聞オピニオン編集部次長

2019年04月01日

出生率文在寅貧困韓国高齢化

貧困や孤独など高齢者の暮らしの厳しさが社会問題になっている韓国。

老後の安心は人々の切実な願いだ=2017年4月、ソウル

韓国ついに1を割り込んだ出生率

 

 韓国の2018年の合計特殊出生率(暫定集計)だ。

1月25日に配信した記事「出生率1.05 正念場の韓国」で「1を割り込む可能性も指摘されている」と触れていたが、予想通りというべきか、1を割り込む形になった。

 韓国政府によると、出生率が0.98というのは、韓国でこの統計が作られるようになった1970年以降で最低だという。

1を割り込むのは今回が初めて、でもある。

 7~9月までの四半期ごとの統計からある程度予想されていたことではあったが、

同様に少子化が定着した日本と比べても大きく下回る水準だ。

世界的にも異例の事態と言えそうだ。

 2000年代半ば以降、韓国では政府があの手この手で少子化対策を進めてきた。

それでも少子化傾向に歯止めがかかるどころか、むしろますます深刻さを増している。

そんな現状を、はっきりと数字が物語っている。

 少子高齢化は今後も、急速に進んでいきそうだ。

 韓国統計庁は3月28日、2017~67年の人口推計を発表した。

そこで示された「未来予想図」によると、出生率は、2021年に0.86まで下がる。

2029年からは人口がマイナスに転じる。

 韓国の高齢化率は2019年で14.8%。

日本は28.1%(2018年10月)だから、まだまだ韓国の方が大きく下回っている。

だがその進むペースはかつての日本よりはるかに速く、今後も加速するとみられている。

人口推計によると、2040年には33.9%、2060年には43.9%、2065年には46.1%まで高まる見通しで、

2065年時点での高齢化率はOECD(経済協力開発機構)でも最高水準になるという。

 次代の経済・社会の担い手の縮小と高齢化がこうして今後も加速していけば、韓国社会は果たして「持続可能」なのだろうか。

「少子高齢化先進国」たる日本からみても、韓国がこの問題にどう向き合うかは示唆に富むテーマと言える。

 ということで、前置きが長くなった。

少子高齢化のうち、1月25日配信の記事では少子化に焦点をあてたので、今回は韓国の高齢化、高齢社会の現状について考察してみたい。

日本を上回る少子化ペース

 その一つが、ここにきてさらに加速しつつある少子高齢化だ。

 新年演説でも文在寅氏は、「子どもたちにもっと果敢に投資をしていきます」と強調。

「子どものいるすべての家庭に児童手当を支給します」

「国公立の幼稚園の拡充を、計画よりもさらに早く進めています」などと施策も列挙した。

 人口約5100万人の韓国。

1970年代初めまでは出生率が4を超えていたが、いまや一変。

まだ人口は減少にこそ転じていないものの、少子化の進展ペースは日本を上回っている。

 2017年の出生率は1.05。

前年の1.17からさらに下がって過去最低となり、世界的にも最低水準だ。

「若年層の失業問題など厳しい経済状況の反映ではないか」(韓国政府関係者)といった見方があるが、

近く発表される2018年の出生率はさらに低下するとみられており、1を割りこむ可能性も指摘されている。

同様に少子化が定着して久しい日本(2017年=1.43)も大きく下回る。

「子どもを持ちたくても、今の自分では無理」

「2人以上ほしくても、1人が精いっぱい」。

これまでの少子化問題の取材では、韓国の人々からこうした悩みをよく聞いた。

子どもを持つ、持たないは完全に個人の選択の問題だが、安心して子どもを生み育てられる環境がないと、選択の余地そのものが大きく狭められてしまう。

 少子化が進む要因は単純ではない。

女性の社会進出の一方で、子育てと仕事の両立が難しい現実。

長時間労働や、男性の育児参加の乏しさなども関係が大きい。

出産を機に、女性が仕事を辞めざるを得ない「経歴断絶」の問題もある。

晩婚化が進み、「結婚は当然するもの」といった価値観も大きく変わってきている。

「政府は子どもを産めといいつつ、老後の面倒はみない」

 住宅費や教育費といった経済的負担の大きさも見逃せない。

 激しい受験戦争を勝ち抜いてソウルの一流大学に入り、サムスンに象徴される一握りの財閥系大企業に入社することが、韓国では典型的な「勝ち組」へのパスポート。

そうした社会のありように内心疑問を抱きつつも、我が子にはそうした道を歩ませたいのが親の心理。

自身の老後の蓄えもままならぬまま、所得を子どもの塾代などの教育費につぎこむ親が珍しくない。

 そして、「両立の難しさ」以前の問題が実は大きい。

雇用の不安定さや所得の乏しさなどから、

結婚したくてもできなかったり、結婚しても子どもは持たなかったりする若者が珍しくないからだ。

 韓国保健社会研究院の調査によると、

韓国の2015年時点での未婚の人の割合は、20代前半、20代後半、30代前半の世代ではいずれも男女ともに日本を上回る。

1995年時点ではおおむね日本より低かったという。

恋愛、結婚、出産を経済的理由などから放棄せざるをえない「3放世代」という言葉が流行したのが数年前だ。

 大学を卒業しても正社員の道は狭き門で、

正社員の半分ほどの賃金しか手にできない非正規職のまま、不安定な暮らしを続ける若者が珍しくない。

正社員も、将来にわたって仕事を続けられる保障もない。

 3年前にソウルで会った当時39歳の会社員の女性は、夫と話しあって子どもは持たないと決めた経緯を話してくれた。

「老後の備えで精いっぱい。政府は子どもを産めといいつつ、老後の面倒はみない。少子化もそれぞれの合理的選択の結果でしょう」。

女性の言葉は、今も強く印象に残っている。


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