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「これでチョグクも全国区に」文大統領の法相強行任命、支持者の意外すぎる受け止め方

2019-09-11 14:36:23 | 日記

「これでチョグクも全国区に」文大統領の法相強行任命、支持者の意外すぎる受け止め方

文春オンライン /

2019年9月11日 11時0分                

写真                                                                        

法相に任命された曺国氏 ©代表撮影/Lee Jae-Won/アフロ                    

 9月9日、曺国前青瓦台(大統領府)民情首席秘書官が法務省長官(以下、法相)に強行任命された。

 韓国では、来年4月の総選挙、さらには2022年5月の大統領選挙を見据えた動きがにわかに騒がしくなってきた。

 曺国法相が投資ファンドや子女の入学を巡る疑惑で物議を醸していたことは周知のとおり。

6日には国会の人事聴聞会が開かれ、深夜まで続くさなか、曺夫人が私文書偽造で在宅起訴となった。

ボランティア活動をしたとして、曺国法相の娘に送られた東洋大学の総長表彰状が、曺夫人の偽造によるものだという疑いが浮上していた。曺夫人は同大学の教授だ。

 夫人が起訴される中、それでも、文在寅大統領は曺国前秘書官の法相任命に踏み切った。

文大統領は任命した理由について、「疑惑があるからといって任命しなければ悪い先例となる」とし、

「大統領選挙時に権力機関の改革をもっとも重要な公約のひとつとし、その公約は国民から支持された」、そして、

「私を補佐し、権力機関の改革のために邁進し成果をみせてくれた曺国長官にその仕上げを任せようという抜擢理由を明らかにしたこともある。

その意思が頓挫してはならないと思う」などという内容の国民向け談話を出した。

文大統領の唯一の"殉葬組"

 中道派の記者は言う。

「疑惑に包まれてはいても、任命されるだろうというのが大方の見方でした。

曺国法相は文大統領の唯一の『スンジャンジョ(殉葬組)』ともいわれ、10日の国務会議に間に合わせるはずというのも想定通りで、やはりその前の任命となりました」

 余談だが、「殉葬組」とは最後まで共に進む盟友の意味合いで使われる。

数々の疑惑の真相についてはソウル地方検察特捜部の捜査結果を待つほかないので、ここでは触れない。

 8月9日に法相候補者として指名されてから、ほぼひと月。

韓国はそれこそ曺国一色だった。「進歩派のアイコン」といわれた曺国法相を取り巻く疑惑は、進歩派には打撃になるかに見られた。

学生たちの任命反対デモは続き、文大統領の支持率もひと月で5ポイント下落している。

 しかし、意外な調査結果も出ている。

 9月6日、世論調査会社「韓国ギャラップ」が恒例のウイークリーレポートで初めて次期大統領候補者の支持率を掲載したが、そこに曺国法相の名前が登場したのだ。

 次期大統領候補1位は李洛淵現国務総理(21%)で、

2位は自由韓国党の黄教安同党代表(14%)、

3位は、17年の大統領選の際、歯切れのいい発言で思いがけず人気を集めた李在明現京畿道知事(8%)、そして、

4位に曺国法相(6%)が続いた。

 候補者は、8月最終週に予備調査をし、上位10人をさらに9月第1週に調査したものとされている。

つまり、疑惑を巡る騒ぎがピークだった頃の調査となる。

「曺国はこれで有名になった」

 この中で3位となった李在明知事は9月6日、係争中だった公職選挙法違反などの嫌疑が2審で有罪となり、300万ウォン(約27万円)の罰金が宣告された。

公職者に100万ウォン(約9万円)以上の罰金が科せられた場合、当選は無効となり、被選挙権を喪失するため、上告審で刑が確定すれば、知事職は失われ、大統領選挙の予備選には出馬できなくなる。

すでに、大統領候補レースから外れたとも囁かれ、そうなると、今後曺国法相が上位に食い込む可能性もないとはいえない。

 調査を見て思い出したのが、8月に会った進歩派の人物の言葉だった。

曺国前秘書官の法相任命について話を訊いた際、あまりにも予想外の発言だったので、そんな見方もあるのかと驚いたのだが、こう語っていた。

「曺国はこれで有名になった。これで、全国区になった」

 当時は、疑惑を巡り世論の反発が盛り上がっていた頃でもあり、

そんな渦中の人物が法相、ひいては国会議員になどなれるだろうか、世論を甘く見過ぎていると返したが、まったく意に介してなかった。

その人物も文大統領と同じように「本人が何か違法行為をしたわけではない」と言い切っていて、「来年4月の総選挙で曺国を国会議員にするのでは」と話していた。

#MeTooで次期大統領有力候補の実刑が確定

 曺国前秘書官が法相に任命された9日午前、もうひとつ”事件”があった。

 かつて次期大統領候補ともいわれた安熙正前忠南道知事が前随行秘書への性暴行の容疑で係争中だったが、その上告審で3年6カ月の実刑が確定した。

 安前知事は韓国で大きな#MeToo運動の波が起きたさなかの18年3月、前随行秘書の告発により起訴され、1審は無罪とされたが、2審で3年6カ月の有罪となり、控訴していた。

 これにより与党「共に民主党」から次期大統領候補として名前が挙がっていた2人の名前が消えたことになる。

進歩派は、今後20年の政権執権を謳っており、「進歩派内では、進歩派が結束できる候補は曺国しかいないと考えている」(前述、中道派記者)。

先述の世論調査の結果を見ると、与党「共に民主党」内の支持率では李洛淵国務総理は39%で、次が曺国法相の12%となっている。

曺国強行任命が、野党団結の契機になる?

 対して、野党は曺国前秘書官の法相強行任命を受けて、反発を強めている。

 任命された同日、自由韓国党は「任命撤回」を要求するデモを行い、野党陣営の団結を求めた。しかし、と保守系の韓国紙記者は言う。

「保守はいまだに分裂したままで、今後どうやって手を取っていくかが、まだ課題とされている。

ただ、曺国を強行任命したことにより団結するための名分ができた。これからでしょう。与党に勝つためには野党がひとつにまとまらないといけない」

 世論調査関係者はこう見立てる。

「これだけ曺国法相の任命を巡り世論が揺れていますが、もし、今、総選挙をすれば、野党は惨敗するでしょう。それだけ、野党の力は弱い。

ただ、中道層の与党支持からの離脱が明らかになってくると見ている」

 こうした混乱の中、現在、米国にいるとされる安哲秀前議員(「正しい未来党」所属)が韓国に帰国する可能性も取り沙汰された。

 10日の世論調査(リアルメーター)では、曺国前秘書官の法相任命に反対な人は49.6 %、賛成は46.6%と拮抗していたが、韓国は今週12日から旧盆の4連休で、本格的に世論が動くのはその後といわれている。

曺国が徴用工問題について放ったひと言

 ところで、曺国法相の人事聴聞会で気になるひとコマがあった。

朴智元議員(無所属)から徴用工問題の解決についての質問が飛んだ時のこと。

曺国法相は一個人の見解としてこう答弁した。

「(強制徴用工の)大法院(最高裁判所)の判決の趣旨を尊重しながらもどんな案で外交交渉をするのかは、過去、文在寅政府が提案した1+1(日本企業+韓国企業)案、このようなさまざまな折衷案があると考えます。

(中略)私は1+1を基本にして次にαを何で行うのか、そのスタイルが(韓国)政府が負担する場合にもどんなスタイルなのか、どんなかたちなのか、が残っているように思います」

 すでにこの案については韓国側が日本に伝えたと報道されているし、個人的意見と断ってもいるが、もっとも文大統領に近い人物の再びのこの発言は重いのではないか。

 来年4月の総選挙まで韓国の政局は混乱すると見られ、対日路線もこのままの強硬路線は変わらないともいわれる。

しかし、年末、徴用工問題で差し押さえられている日本企業の資産が現金化される前に、日本も韓国との対話へ動くべき時が来ているのではないだろうか。

(菅野 朋子)


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