勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2019-09-19 05:00:00
韓国、GSOMIA破棄の大博打で失敗、日米は動かず11月22日失効前に苦悩
テーマ:ブログ
GSOMIAの破棄で一芝居
文政権の歴史修正主義が問題
韓国は脱米国の可能性秘める
日本は自前の軍事情報収集へ
韓国は、安全保障政策という国家の根幹を守る政策で失敗した。
GSOMIA(日韓軍事情報総括保護協定)を延長せず、破棄する決定をしたからだ。
8月22日である。このままでは11月22日に失効する。
GSOMIAは2016年11月23日、朴槿惠政権下で発効したものだ。
当時、韓国国防部は、日本の提供する北朝鮮に関する軍事情報を高く評価していた。
GSOMIAでは、日韓が直接に軍事情報を交換できる。
それ以前の日韓は、米国経由で軍事情報を交換する「間接方式」であった。
それでも韓国国防部は、「米国経由で提供された日本の北スカッドERミサイル分析情報は、非常に有益だった」と述べたほど。
韓国側にとって、GSOMIAへの期待が大きかったことを物語るエピソードである。
「日本が保有する偵察衛星5機は、北朝鮮の弾道ミサイルの動向収集に役立つとみられる。
現在米国の偵察衛星は韓半島(朝鮮半島)上空を一日2、3回ほど通過するため、北朝鮮弾道ミサイルの動きを把握するのに限界がある。
特に今回の情報(総括)保護協定(注:GSOMIA)は北朝鮮が開発している潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)への対応にも効果的だ」
「北朝鮮が慶尚北道星州(ソンジュ)に配備される高高度ミサイル防衛(THAAD)体系の迎撃範囲を避けてSLBMを発射するには、独島(ドクト、日本名・竹島)近隣まで潜水艦を送る必要がある。
その場合、日本の海上哨戒機(P-3C)77機と潜水艦に探知される可能性が高い」(『中央日報』2016年11月23日付)
GSOMIAの破棄で一芝居
このようにGSOMIAへは、韓国側から高い評価と期待がかかっていた。
政権が、保守派の朴政権から革新派の文政権に代わって、位置づけが180度の変りようである。
現在では、日本が韓国のプライドを傷つけ、日本との相互信頼関係がなくなったので、GSOMIAを延長せず破棄すると決めた、というようになっている。
もはや、ここには軍事情報の重要性が消えている。
韓国のプライド論が、厳粛な安全保障政策を左右する議論として、余りにも感情的という批判を呼んでいる。韓国の本当の狙いはどこにあったのか。それが最近、明らかになってきた。
韓国は、日本が韓国を「ホワイト国除外」にしたことを取り消すことを条件に、GSOMIA破棄を取り消す。
米国が、その仲介をしてくれるという図式を描いていたことだ。
ところが、日米は全く動かないことが明らかになってきた。
むしろ、GSOMIAが日米韓三ヶ国の安保ラインの象徴的な存在であり、それを無視した韓国へ批判が高まったのである。
こうなると、文政権は民族主義で視野狭窄症という、はなはだ芳しからざる立場に立たされることになった。
韓国国内でGSOMIA破棄は、韓国へ不利益をもたらすという議論が増えている。その一つを取り上げたい。
文政権は、南北の信頼構築、特に軍事的な信頼構築を強調し、反面で米韓・日米韓軍事協力を弱体化させる方向に進んでいる。
こうした姿勢は、韓国がこれまで維持してきた伝統的な外交・安保の軸から離脱する兆候に見えるようになった。
ここには、親米より親北朝鮮の要素が強く現れているのだ。
中国に対しては沈黙し順応する姿勢を見せながら、日本には強く反発し、不買運動を展開するという極端な違いを見せている。
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