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NATO拡大、露が墓穴 北欧決別「緩衝地帯」失う

2022-05-16 23:34:08 | 日記

NATO拡大、露が墓穴 北欧決別「緩衝地帯」失う

スウェーデンのアンデション首相(左)とフィンランドのマリン首相=4月、ストックホルム(TT News提供・ロイター)

フィンランド、スウェーデンの北欧2国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟すれば、米主導のNATOとロシアは東西冷戦中さながらに、北極圏からバルト海に広がる境界線を挟んで直接対峙(たいじ)することになる。ロシアは、北欧の「緩衝地帯」を失い、米国に対露封じ込めの拠点を奪われる。軍事力による恫喝(どうかつ)で、高い代償を伴う羽目になった。

海の包囲網

ロシアにとって大きな打撃は、西への玄関口であるバルト海がNATOに完全に包囲されることだ。

沿岸にあるロシアの飛び地領カリーニングラードは露バルチック艦隊の拠点で、ロシアは今月、核搭載可能なミサイルの模擬発射訓練を実施したと発表した。NATO進出への危機感は強く、メドベージェフ前大統領は4月、北欧2国がNATOに加盟すれば、「バルト海の非核化について、協議は不可能になる」と警告している。

ロシアは2017年、バルト海で中国と合同海軍演習を実施。北欧2国では近年、ロシアのものとみられる潜水艦や無人機の領空、領域侵犯が続いた。これがNATO加盟への決断を促した。

2国加盟で、NATOは大きな戦略的資産を得る。

スウェーデンは、カリーニングラードの250キロ西方にゴットランド島を領有。ここがNATO軍の拠点になれば、ロシアには大きな脅威となる。

フィンランドは徴兵制を維持し、30日以内に28万人の兵力を動員できる態勢にある。今年2月には、F35戦闘機64機の購入契約に調印。2国はNATOと共同演習を行っており、兵力の相互運用には不安がない。

対露配慮に決別

NATOは東西冷戦後、ロシアとの共存を模索してきた。ロシアの強い反発をよそに北欧2国を加盟させれば、対露配慮路線からの決別になる。

1995年、東西の信頼醸成枠組みが欧州安保協力機構(OSCE)に発展し、米欧や旧ソ連諸国が参加した。OSCEが追い風となり、97年にNATOとロシアは、話し合いの枠組みを設置。2002年には「NATO-ロシア理事会」に格上げし、テロや軍備管理をめぐる閣僚級協議に乗り出した。理事会の設置文書には、プーチン露大統領が調印した。

だが、西欧主導の対話路線は、プーチン氏の野心で頓挫する。ロシアによるクリミア併合(14年)でNATOとロシアの協議は中断。その後、欧州連合(EU)では、独仏両国が「欧州安定にはロシアとの対話が不可欠」と訴え、北欧2国も寄り添った。2国のNATO加盟申請は、独仏主導のEU安保に見切りをつけ、「頼れるのは米主導のNATO」と結論付けたに等しい。(パリ 三井美奈)


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