日本政府は、韓国文大統領の五輪出席に合せ菅首相と会談することを韓国政府へ通知した。
文氏は、米バイデン政権が対中・対北朝鮮問題を解決するため日米韓同盟を強調し、韓国にとって「日本との関係改善は最も緊急な事案のひとつに浮上した状況」になっていた。
このため、文大統領が南北関係の改善を目指し、日本の「冷遇」にもかかわらず、日本との「対話のヒモ」を手放すことはできないという切羽詰まった状況に追込まれている。
『日本経済新聞』(7月11日付)は、「日韓首脳会談、7月内で調整 文大統領の来日に合わせ」と題する記事を掲載した。
(1)「日韓両政府は菅義偉首相と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の首脳会談を月内に実施する調整に入った。
文氏が23日の東京五輪の開会式にあわせて2年ぶりに来日した際に会談する方針だ。
日韓首脳会談はおよそ1年7カ月ぶりで菅首相と文氏の会談は初めてとなる。
日本政府は韓国側に首脳会談の開催を受け入れると伝えた。
韓国政府は文氏が五輪の開会式に出席する場合は首脳会談を実現するよう求めていた」
韓国は、菅首相との会談を求めて必死である。
南北問題解決には、先ず日韓関係改善が先決という米国バイデン政権の要請もあり、見栄も外聞も捨てて日韓首脳会談を要請せざるを得なかった。
(2)「文氏は2019年6月、大阪で開いた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)のため来日した。
当時の安倍晋三首相とは会談しなかった。
菅首相は6月に英国で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で文氏と同席した。
あいさつをしただけだった。
文氏の来日には鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相も同行する見通しだ。
日韓両政府は鄭氏が8月にも再来日し、茂木敏充外相と会談する日程も調整し始めた」
文大統領には、鄭外交部長官が随行するという。
鄭氏は、8月にも再来日して日韓の懸案を協議する方向という。
となれば、韓国は文大統領が訪日の際に何らかの案を用意することになろう。
(3)「文氏には、韓国内で「日韓関係を国交正常化以降、最悪に追い込んだ」との批判がある。
こうした世論を踏まえ、文政権は日本側に首脳会談を働きかけてきた。
日本政府は元徴用工や元慰安婦の訴訟の解決策を早期に示すよう求めている。
元徴用工や元慰安婦の問題は1965年の日韓請求権協定で請求権問題の最終解決を約束している。
韓国政府が具体策を示す見通しがなければ、日本政府は首脳会談を短時間にする構えだ」
文氏が、具体案を用意しなければ、儀礼的な短時間の会見に止めるという。
『中央日報』(7月11日付)は、「日本は『首脳会談検討もできる』と言うが…訪日手放せない文大統領の意志」と題する記事を掲載した。
これまで日本メディアは連日、「文大統領が日本に訪日の意向を打診してきた」という報道を続けてきた。
ほとんどが、「文大統領が訪日する場合、菅義偉首相が会うこともできる」
または「首脳会談を検討してみることもできる」という内容だった。
(4)「8日には菅首相が直接、「文大統領が訪日される場合は外交上丁寧に対応することは当然だ」と明らかにした。
ただ韓国が訪日の条件として提示してきた首脳会談に対しては、「韓国側参席者がまだ決まっていない」として具体的な言及をしなかった。
「文大統領が訪日を先に決めるならば丁重な対応次元で首脳会談を検討することもできる」という日本メディアの報道と同じ脈絡だ。
しかし、「外交的屈辱」に近いこのような立場が出るたびに青瓦台は、「不快だ」としながらも、一刀のもとに「日本訪問はない」という発表はしなくなっている」
これまで、韓国は日本側の対応に対して感情を露わにしてきたが最近、それもなくなっている。
(5)「すでに青瓦台では「強制徴用・慰安婦問題など過去史と連動された懸案を解決するためには首脳間チャンネルが稼動しなければ難しく、文大統領もこうした事実をよくわかっている」という意見が支配的だ。
特に文大統領は普段から「当事者が結者解之(自分が起こした問題は自分で解決するという意味)の次元からでも外交を正常軌道にのせた後に次期政権がスタートしなければならない」という趣旨の話を何回も強調したという」
文氏は、「結者解之」という言葉(自分の蒔いた種は自分で刈る)を使っているという。
次期大統領選で、野党候補から日韓関係悪化問題を追及されれば返答できないのが現状である。
米国バイデン政権の強い要請もあって、恥をしのんで日韓首脳会談を要請せざるを得ない局面になっている。