
© ダイヤモンド・オンライン 提供 日本で少子化が進む「残酷すぎる理由」とは?
世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る!
データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
本連載の書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。
日本地理学会の企画専門委員としても活動している。
『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。
日本で急速に少子化が進んだ理由とは?
日本の少子高齢化は深刻です。
この問題は、少子化と高齢化を別々に分けて考える必要があります。
少子化とは、幼年人口(15歳未満人口)数が減少し、全人口に対する幼年人口割合が低下することを指します。
一方の高齢化とは、少子化の進展にともなって全人口に対する老年人口(65歳以上人口)割合が上昇することです。
つまり少子高齢化は、必ず少子化が先に起きます。
2020年の日本の出生数は84万832人。前年よりも2万4407人減少し、5年連続で過去最少を記録しました。
合計特殊出生率(15~49歳の女性が生涯に生む子どもの数)は1.34。
2019年から0.02ポイント減少し、5年連続で低下しました。
出産時の母親の年齢をみると、1970年当時は25~29歳が最多で、以下20~24歳、30~34歳、35~39歳と続いていました。
現在は30~34歳が最多で、以下25~29歳、35~39歳、20~24歳と続きます。
そして25~39歳の女性人口が減少傾向にあり、今後も増加の見込みがありません。
日本で少子化が進んでいるのは、
①母となる女性そのものが減少し、
②晩産化が進行していることが原因と考えられます。
また、新型コロナウイルスによる社会不安が出生数の低下をさらに加速させるかもしれません。
死亡数は137万2648人と前年よりも8445人減少。自然増減(出生数―死亡数)は53万1816人の減少となりました。
戦後、日本で初めて自然減少となったのは2005年です。
2006年は自然増加に転じたものの、2007年以降は再び自然減少となりました。
少子高齢化はすでに1990年代後半には傾向が現れており、老年人口割合が幼年人口割合を超えたのは1997年。
もう四半世紀近い時が流れています。
ベビーブーム世代が年金受給者に!
日本では1947~1949年と1971~1974年にそれぞれ出生数の大幅な増加が見られ、ベビーブームと呼ばれました。
前者のベビーブームは敗戦直後の社会的混乱期を脱して出生数が増加し、3年間で800万人を超える出生数を数えました。
彼らは「団塊の世代」とも呼ばれ、2014年以降は年金受給者に転じています。
後者のベビーブームは4年間で毎年200万人を超える出生数がありました。
彼らが大学入学を迎えた1990年代前半は特に進学競争が厳しく、私が身を置く予備校業界も活況を呈していたようです。
老年人口割合が7%を超えると高齢化社会、14%超が高齢社会、21%超は超高齢社会といわれます。
日本の老年人口割合がそれぞれの水準に達したのは、7%超が1970年、14%超は1994年、21%超は2007年です。
そして2019年は28%となっています。
これは世界で最も高い割合です(2位はイタリアの23.01%)。
急速な高齢化は、急速な少子化が背景にあります。
このままでは現役世代は高齢世代を支えるだけの存在になってしまうでしょう。
これから日本はどうなるのか?
「生む」と「育てる」は別です。日本政府には一刻も早く、両方が充実した社会づくりをお願いしたいところです。
例えば、フランスやスウェーデンなどは政府が積極的な少子化対策を講じたことで、人口置換水準(合計特殊出生率2.1程度)に近づくまで合計特殊出生率が回復しました。
フランスでは1990年代以降に、保育の充実などによって、出産・育児と労働の両立を支援する取り組みを進めました。
1993年に1.73と底を打った合計特殊出生率は、その後、2010年には2.03にまで回復しました(2019年は1.87)。
またスウェーデンでも、出産・育児と労働の両立を支援しました。
子どもの数に応じて加算される児童手当制度、両親保険(1974年より導入された両親が取得できる育児休業の収入補塡制度)などです。
スウェーデンは1998年に1.5だった合計特殊出生率が2010年には1.98にまで回復しました(2019年は1.70)。
日本は、2005年に1.26と底を打ち、2015年には1.45にまで回復しました。
しかし、50年近く合計特殊出生率が低下傾向にあったため、そもそも母親になる人数が減っており、出生数の大幅な改善には至っていません。
2人目が生まれた段階での手厚い給付制度を創設するなどの政策が早急に必要と考えられます。
(本稿は『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)
宮路秀作(みやじ・しゅうさく)
代々木ゼミナール地理講師、日本地理学会企画専門委員。鹿児島市出身。「共通テスト地理」から「東大地理」まで、代々木ゼミナールのすべての地理講座を担当する実力派。
地理を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。
講義の指針は「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。
生徒アンケートは、代ゼミ講師1年目の2008年度から全国1位を獲得し続けており、また高校教員向け講座「教員研修セミナー」の講師や模試作成を担当。
いまや「代ゼミの地理の顔」。
2017年に刊行した『経済は地理から学べ! 』はベストセラーとなり、これが「地理学の啓発・普及に貢献した」と評価され、2017年度の日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞。
大学教員を中心に創設された「地理学のアウトリーチ研究グループ」にも加わり、2021年より日本地理学会企画専門委員会委員となる。
「Yahoo! ニュース」での連載やラジオ出演、YouTubeチャンネルの運営など幅広く活動。