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韓国で「物価上昇」が止まらない…韓国の人々が恐れ始めた「インフレの大打撃」

2021-06-15 14:16:39 | 日記

韓国で「物価上昇」が止まらない…韓国の人々が恐れ始めた「インフレの大打撃」

もし利上げが起こったら…

 

真壁 昭夫

法政大学大学院教授

プロフィール

 

5月下旬以降、韓国の2年国債の流通利回り(2年金利)が上昇基調にある。

6月11日には一時、2年金利が1.130%をつけ、年初来高値を更新した。

その背景にあるのは、物価上昇への警戒感の高まりだ。

その一方で、6月に入り10年国債の流通利回りは低下した。

目先の物価上昇による利上げを警戒しつつも、中長期的には緩和的な金融環境が続くと考える投資家は多い。

言い換えれば、主要投資家は、韓国の物価上昇は一時的と考えている。

〔PHOTO〕iStock

株式市場に目を向けると、サムスン電子など成長期待の高い株(グロース銘柄)の上値は抑えられているが、株価は大幅に下落してはいない。

世界的に見ても、割高感があるグロース銘柄から、ワクチン接種の恩恵が見込まれるバリュー銘柄(既存分野の企業)に投資資金を振り向ける投資家は多い。

しかし、やや長めの目線で今後の展開を考えると、韓国の物価上昇が一時的と論じるのは早計だろう。

5月、米消費者物価のコア指数は前月比0.7%上昇した。

多少勢いが弱まったとしても、米国の物価は緩やかに上昇する可能性がある。

それが韓国の物価に与える影響は軽視できない。

仮に韓国で物価上昇が続けば、家計の債務返済能力などには無視できない影響が及ぶ恐れがある。

 

物価上昇懸念高まる韓国

年初来、韓国の物価が上昇基調にある。

物価を示す経済指標には生産者物価指数(PPI)と、消費者物価指数(CPI)の2つがある。

これまでのところ、韓国ではPPIの上昇が鮮明だ。

2020年の後半以降、前月比で見た韓国のPPIには上昇圧力がかかり、2021年に入ると上昇圧力が一段と強まった。

その背景には複数の要因がある。

まず、世界的な低金利と過剰流動性(カネ余り)の環境が出現し、コモディティー市場に投資(投機)資金が流入した。

それに加えて、中国の景気対策が鉄鉱石などの需要を高め、商品価格が上昇した。

中国の生産年齢人口の減少による賃金上昇も、韓国のPPI上昇の一因と考えられる。

他方、半導体などの輸出増加などに支えられた韓国経済の回復によって、CPIも緩やかに上昇している。

現状、韓国のCPI上昇率はPPIよりも緩やかだが、今後はCPIも徐々に上昇する可能性がある。

5月、中国のPPIは前年同月比で9.0%上昇し、物価上昇ペースは加速している。

韓国にとって中国は最大の輸出、輸入相手国だ。

理論的に考えると、中国のPPI上昇は韓国企業の生産コストを増加させる要因だ。

韓国企業が収益力を維持するためには生産活動の能率向上などに取り組みつつ、製品価格(川上から川下)へコストを転嫁する必要性が出てくるだろう。

それはCPIの押し上げ要因の一つになり得る。

ワクチン接種もCPI上昇を支えるだろう。

5月27日の“金融通貨委員会”にて韓国銀行は自国経済の状況に合わせて金融政策を調整する姿勢を示した。

その背景には、そうした要因によって徐々にCPIが上昇して韓国でインフレが進行し、何らかの対応が必要になるとの警戒感があったと解釈できる。

すでに韓国のCPIは中央銀行のターゲット水準である2%を上回っている。

物価動向が韓国経済に与える影響は一段と大きくなっていると考えられる。

物価上昇を一時的と論じるのは早計

今後の展開として、韓国では、ある程度の期間にわたって物価が緩やかに上昇する可能性がある。

その要因の一つとして、世界的なモノの上昇圧力は高まりやすい。

まず、米国経済の回復の勢いが増していることが重要だ。

ワクチン接種の進行によって経済が正常化する中、米国はドライブシーズンを迎えた。

多くの人が外出を謳歌しようとするだろう。

それはガソリンへの需要を高める。

他方で、産油国が供給を増加させる展開は想定しづらい。

6月8日には米ブリンケン国務長官がイラン制裁の維持を明言し、WTI原油価格は、2018年10月以来の70ドル台に上昇した。

また、欧州でもワクチン接種の進展によって景気が上向きつつある。

それも、原油などの資源価格上昇を支える。

欧州の株式市場では“ZARA”を展開するアパレル大手のインディテックスの株価が堅調だ。

外出の増加(動線の回復)によって欧州各国の消費が増加し、繊維などの資材価格も上昇する可能性がある。

やや長めの目線で考えると、2022年秋に中国では共産党の党大会が控える。

権力基盤を強化するために習近平国家主席は景気回復のペースを維持しなければならないだろう。

そうした見方は、銅や鉄鉱石などインフラ投資に用いられる鉱物資源の高値傾向を支える可能性がある。

それも、生産者物価指数を中心に韓国の物価を上昇させる一因となろう。

このように考えると、韓国では一時的ではなく、ある程度の期間にわたって物価が上昇する可能性がある。

その展開が鮮明となれば、

韓国銀行は主要投資家の想定を上回るペースで利上げを進め、文政権の最低賃金引き上げによって経営体力が低下した企業や、借り入れを増やして株式や仮想通貨への投資(投機)を行った個人などにはかなりの衝撃が走るだろう。

回復傾向にある韓国経済ではあるが、今後、物価上昇が内需に与える影響は慎重に考える必要があるだろう。