朝日新聞や毎日新聞などが主張している内容のどこが間違いなのかについては、個別に主張したとおりですので、いまさら繰り返すつもりはありません。
新宿会計士
ただ、改めてこれらの主張を読むと、「日本は加害者、韓国は被害者」といった従来型の「③対韓追随論」ではなく、従来であれば日経新聞や外務省あたりが主張していた「②対韓配慮論」をベースとしているようにも思えるのです。
もちろん、彼らが「③対韓追随論」を捨て、「②対韓配慮論」に「宗旨替え」したとしても、「②対韓配慮論」のような考え方が、現時点で日本国民の間で広く支持されるというものでもないでしょう。
その理由は簡単で、「日韓関係を破壊しているのは一方的に韓国の側である」という点を無視して、「悪化した日韓関係を修復すべきだ」などと主張したところで、広く国民レベルでの理解は得られないからです。
しかし、むしろここで注目したいのは、これまでの「日韓友好論者」にありがちな「②対韓配慮論」、すなわち「日本の側が大人の対応を取り、韓国に対して手を差し出すべきだ」といった主張が、どうも日本社会全体から影をひそめてしまったのではないかという点です。
これこそが日本社会の明らかな変化だと言えるのではないでしょうか。
日韓の齟齬は拡大する一方
これに対し、韓国国内の対日関係論を見ると、ざっくりと「用日」「反日」という、2つの考え方があります。
「用日派」とは、韓国が日本との関係において、権利だけ最大限行使しつつ、義務を徹底的に回避するという、まことに都合の良い考え方です。あるいは「食い逃げ外交」とでも呼べば良いでしょうか(『韓国の「食い逃げ外交」、そろそろ年貢の納めどき』参照)。
これに対し「反日派」とは、「用日派」と異なり、下手に日本を利用しようとせず、純粋に反日を貫く勢力です。現在の文在寅(ぶん・ざいいん)政権の支持基盤は、韓国国内の「左派」「親北派」とされていますが、対日関係でいえば、彼らの多くは「用日派」ではなく、純粋な反日原理主義者のようなものです。
(※余談ですが、用日派と反日派の両者を比べると、私個人的には、いっそのこと「反日派」の方が清々しくて好きですし、「用日派」の方が「食い逃げ外交」という意味で、日本にとっては性質が悪いのではないかとすら思います。)
つまり、「用日派」と「反日派」の違いは、「日本を都合よく利用する」(用日派)のか、それとも「純粋に日本との対立を選ぶ」(反日派)のか、という点にあります。
そして、韓国国内の「用日派」が日本国内の「②対韓配慮論」と結託しやすく、また、韓国国内の「反日派」が日本国内の「③対韓追随論」と結託しやすい、という特徴があったのではないでしょうか。
しかし、韓国国内で「反日派」が勢いを増している一方で、日本国内で「③対韓追随論」がほぼ絶滅しかかっていることは、日韓が社会レベル、国民レベルでお互いに理解し得なくなる世の中がすぐそこまで来ている、という意味でもあります。
また、韓国国内の「用日派」と、日本国内の「②対韓配慮論」についても、それぞれ勢力を弱めているようですが、このことは「日韓関係の潤滑油(?)」のような機能が、日韓両国から消滅しつつあることを意味していることは間違いありません。
もちろん、「東中朝」(東亜日報、中央日報、朝鮮日報)を初めとする、おもに韓国国内の「保守派」と呼ばれるメディアは、いまだに「韓日関係悪化は韓日双方のためにならない」、「韓日関係改善のために韓日双方が知恵を出すべきだ」、といった、古典的な「用日思想」に基づく主張を山ほど掲載しています。
まことに理解に苦しむ限りです。
しかし、韓国側のメディアが連日のように、「悪化した韓日関係を修復しなければならない」、「韓日関係改善は韓日双方に努力義務がある」、といった主張を掲載しているのに対し、わが国のメディアは右派、左派を問わず、日韓関係への関心を失いつつあるように思えてならないのです。
国家永続論
国家というものは永続するものではない
ところで、わが国では「日韓友好論」だの、「日本が韓国に配慮すべきだ」だのとする主張は徐々に社会から胡散霧消しつつあるのですが、それでもごくたまに、こうした考え方にこだわる人はいます。「日韓は友好を続けなければならない」という考え方に、1つの重要な特徴があるとすれば
「大韓民国という国が未来永劫続く」
という前提条件が、勝手に置かれているという点ではないでしょうか。
「大韓民国という国が未来永劫続く」という前提に立つならば、「この国は日本にとって不快ではあるけれど、隣同士離れられないわけだから、何とか折り合いをつけて付き合っていくしかない」という結論が出てくるのは当然のことです。
ただ、わが国ではいまだに、国際関係について、多くの人が「未来永劫変わらない」と考えているフシがありますが、「国際関係は未来永劫変わらない」というものではありません。
戦後に限ってみても、1991年にソ連が崩壊し、東アジアの中国や北朝鮮、ベトナムなどを除く共産圏の国々は軒並み「民主化」しました(※といっても、中央アジアや東欧にはいまだに事実上の独裁体制が続いている国もありますが…)。
また、ベネズエラのように豊かな石油資源を持ちながら実質的な経済崩壊状態に陥った国もありますし、中東ではイスラエルとパレスチナの対立、イエメンとサウジアラビアの対立など、そこかしこで国境紛争・内乱などが生じています。
このように考えるならば、「相手国が未来永劫、現状のままで存続する」という前提に立って、相手国との関係を議論するのは、むしろ非常に危険ですらあります。
鈴置氏の「北朝鮮分割論」と「韓国戦犯論」
そのことの重大性を感じさせる良記事が、『デイリー新潮』に掲載されていました。
中朝会談、習近平は金正恩を米国に売るのか “北朝鮮分割”という最終手段(2019年6月22日付 デイリー新潮より)
執筆者はいわずと知れた韓国観察者の鈴置高史氏です。私などはこの記事を発見次第、またしても一気に引き込まれ、読了してしまったクチです。
鈴置氏の今回の記事では、タイトルに「北朝鮮」という単語が出てくるとおり、北朝鮮に主な焦点が当てられています。それにしても「北朝鮮分割」とは、実に過激ですし、また、平和ボケの日本でこんなことを主張すれば、「北朝鮮分割?そんな荒唐無稽な!」という声が飛んでくることは間違いありません。
しかし、現代史では、独裁政権が武力で倒され、あとに周辺大国にとって都合の良い国ができるなど、いくらでも例があります。私は今回の「鈴置論考」について、「鈴置氏の論考で可能性として示された将来が、絶対に実現する」とは思いませんが、すくなくとも「荒唐無稽」とは、まったく思いません。
実際、独裁政権(この場合は金正恩(きん・しょうおん)王朝)が倒れてしまえば、治安を維持するために、大国や隣国など、他国が「国連平和維持活動(PKO)」などの名目を使い、軍を投入することは、一般に見られる現象です。2003年のイラク戦争後などがその典型例でしょう。
(※もっとも、鈴置氏の論考を読んでいただければわかるとおり、鈴置氏は「北朝鮮分割が絶対に実現する」とは主張されていません。某匿名掲示板あたりを覗くと、このあたりを短絡的に早とちりされている方もいるようですが、少し冷静になって頂きたいと思います。)
韓国の混乱は「歓迎すべき」とは限らない
さらに、今回の鈴置説では、「韓国が戦犯として(北朝鮮に)連座する」という可能性についても触れられていて、これについては、これまでに日米両国などをさんざん愚弄してきた韓国にお似合いの結末かもしれませんが、日本にとって最善なシナリオなのかは微妙です。
なぜなら、韓国が北朝鮮核武装問題で「連座」し、経済的焦土化などの制裁を喰らった場合には、最短50キロメートルもない対馬海峡で韓国と向かい合う日本が、朝鮮半島混乱の余波を受ける危険性も高いからです。
(※余談ですが、なぜこの手の「朝鮮半島再分割論」が市井の韓国観察者から提示されているにも関わらず、日本の与党政治家などがこの議論を真剣に取り上げないのかが疑問でなりません。もっとも、この点については「まだ機が熟していないから」なのかもしれませんが…。)
では、こうした近い将来に懸念される朝鮮半島の混乱について、韓国人自身はいったいどう考えているのでしょうか?とくに、「北朝鮮分割」が実現するならば、その隣国である韓国も影響は皆無ではありません。
ただ、まことに残念ながら、「自分たちの国・民族が世界を混乱に陥れる可能性がある」という危険性を正確に認識している人はほとんどいないばかりか、現在の韓国人は、現実逃避のあまりに自分たちの置かれている環境について理解しようとすらしないように思えてなりません。
周回遅れの議論
それなのに、現在、韓国側で出てきている話題といえば、たとえば韓国政府がいまだに来週の「大阪G19」…、じゃなかった、「大阪G20」サミットでの日韓首脳会談を求めているという話題や、先週金曜日に三菱重工に対し自称元徴用工の原告側が「最終通告をした」という話題ばかりが目につきます。
日韓首脳会談、なお調整=文大統領、G20出席へ(2019年06月21日16時08分付 時事通信より)
文大統領 27~29日に訪日=安倍首相との会談は未定(2019.06.21 14:56付 聯合ニュース日本語版より)
来月15日期限、現金化警告=三菱重に協議要求-韓国原告側(2019年06月21日14時25分付 時事通信より)
これらの報道については、別途、いろいろとツッコミをいれておきたいポイントがあるのですが、これについては余裕があれば、本日か明日、別稿にて取り上げたいと思います。
それよりも、ここで重要なポイントは、やはり韓国のメディアが現在、自分たちが置かれている状況や、周辺国を大混乱に巻き込もうとしているという現状を正確に把握していない、という点でしょう。あるいは「無責任」と言い換えた方が良いのかもしれませんが