◆南西混が最大負担、中国機接近が過去最大へ
防衛省は平成24年度の緊急発進の統計を発表しましたが、これはソ連崩壊後としては最大の緊急発進の実施を明示していました。
航空自衛隊では、我が国領空へ接近する飛行計画の無い国籍不明機に対し、防空識別圏内への侵入と同時に緊急発進を行い、対領空侵犯措置任務を実施しています。多くの場合、領空に接近する過程で警告を受け引き換えし、軍事的示威とともに我が国防空体制の偵察などを併せて実施、実戦には至らない範囲内での緊張関係が展開されているところ。
緊急発進は567回、航空自衛隊創設以来、緊急発進の回数が500回を超えたのはMiG-25函館亡命事件の発生した1976年以来で、1984年の944回をピークとして1991年の604回を最後に500回を超えることは無く、1998年から2004年までは緊急発進回数が200回を下回っていたものの、近年急増し22年ぶりに500回を超えています。
我が国への接近は元来、ソ連空軍、ソ連崩壊後はロシア空軍の接近が最たるものとなっていましたが、昨年度はロシア空軍機の接近は前年の247回とほぼ同じ248回、対して中国機の接近は前年の156回よりほぼ倍増して306回、2008年の中国機接近は31回でしたので5年間で十倍へ増加したこととなり、異常事態と言わざるを得ません。
また領空侵犯事案も二回、ロシア機により北海道北方空域へ一回と中国機により沖縄南西空域で一回の領空侵犯事案があり、航空自衛隊創設以来領空侵犯事案は36回目を数えるに至っています。緊急発進件数の増大と領空侵犯事案の複数発生は、我が国領空への脅威が冷戦時代最盛期の水準へ戻りつつあるといっても過言ではないでしょう。
防空管区は航空自衛隊では三沢の北部航空方面隊隷下の四個飛行隊、入間の中部航空方面隊隷下の四個飛行隊、春日の西部航空方面隊隷下の三個飛行隊、那覇の南西方面航空混成団隷下の一個飛行隊と分けて任務に当たっていますが対領空侵犯措置任務にあって、最も負担が大きいのは南西方面航空混成団です。
南西方面航空混成団の緊急発進回数は318回と半分以上をになており、北部の139回、中部の65回、西部の45回と比べても飛びぬけて大きいのが実情です。無論、那覇基地の一個飛行隊のみで対応出来るわけではなく、全国の航空団より増援の戦闘機が展開し、ようやく緊急発進任務の増大へ対応している、とのこと。
那覇基地の負担増は特にここ数年で顕著化しており、政府は防衛計画の大綱改訂に際し、本土より一個飛行隊を那覇へ増強に充てる計画を明示し、将来的に那覇の第83航空隊は第9航空団へと増勢される計画なのですが、航空団改編で対応できる水準を越えつつあるのかもしれません。
併せて過度な那覇基地の緊急発進集中は、那覇基地の整備補給能力が充分だルノ化、という視点や、本土の補給処からの戦闘機運用に必要な機材などの空輸態勢が現状のままで対応しきれるのかを改めて考えさせるものであり、併せて政治が決定すべき分野の問題も含んでいます。
空輸態勢もさることながら、場合によっては基地機能の充実や在日米軍施設への増援部隊の展開、空中給油輸送機の運用体制やその増勢を含め考えるべき命題となりますし、これは現在の防衛計画の大綱が想定している防衛力の上限を超えている脅威ではないか、という疑問符とも重なってしまうところ。
他方で日本周辺への国籍不明機の接近は、中国機によるものが最大の規模を占めているものの、中国機の接近はそこまで広い空域で接近しているしているものではなく、沖縄本島から奄美大島の西方空域から尖閣諸島北方海域上空を東シナ海日中排他的経済水域境界線付近へ接近しているのみ。
対してロシア機による領空接近は長距離を長時間にわたり飛行するものが多く、日本列島日本海沿岸を長距離飛行するものや北海道北方空域を飛行し太平洋岸を首都圏へ向け南下する航路や日本列島を周回する長距離飛行するなど、質的にはロシア機による接近がその軍事的意味の度合いを大きくしています。
中国機の飛行が限定されるのは、日本列島を周回飛行可能な長距離を飛行可能な航空機が無く、沖縄南方空域への接近は台湾空軍に、より北方空域は韓国空軍に阻止されることを意味しています。脅威度は低いものの回数は顕著であり、それだけ意志の強さを反映しているということもいえるもの。
日本は冷戦時代、ソ連空軍の強大な圧力へ対応する基盤を構築したことで現状の脅威に対応しているのですが、他方で、冷戦後自衛隊の従来型脅威への対処能力は、特に戦闘機定数という面で縮小され続けています。今後もこの冷戦後の制度の踏襲を続けるだけで良いのか、考えてゆかねばなりません。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
これだけの3点セットがあれば、下地島あたりに、空自基地をこさえるのは当然でしょう。
いつやる?今でしょう!
またしても論点のすり替えですか。
人の国に対しての嫌がらせは正当化するわけだ。
中国側のスクランブル回数?
平気で1万回とでも言い出しかねませんよね。
日本側の数字は、あなたの国とは違い馬鹿正直なものです。
10年で5倍。日本国民があなたの国へ危機感を抱くのは当然のことです。
新田原と那覇の飛行隊をひとつづつ増強、新田原の場合は元に戻すだけですが、南西の防空体制は考えなければなりません、そしてもう引き抜けるところが無いのですよね。
更に、中国の空母が太平洋上において活動を行う時代を迎えれば、小笠原諸島の百里基地防空圏外での対領空措置任務に対応する方策は考えなければならなくなるでしょう。
あなたが地図を全く見ずに物事を考えていることだけは理解しました。
本文にもあるように、中国機が多数飛来するのは那覇西方・尖閣北方海域ですよ?、先島諸島の下地島においてどうするのですか・・・
中国政府は数字を発表していません
発表しない背景はいろいろ考えられますが、数が少なく、発表して都合が悪い、もしくは、発表する意味が無い、ということになります
客観的判断を促すためにも中国の秘密主義は再考してほしいですね
2005年に中国は全土のレーダー警戒管制網を完成させた、と発表しましたので、把握はしていると思うのですよね
何故発表しないのか、と問われれば、数が無いから発表しても意味が無い、というくらいしか
那覇基地の増強について
・短期的には、「7個飛行隊の合計で110回のスクランブル"しか"ない」、中部と西部から回すのが一歩目ではないでしょうか?(南西は異常として)北部は4個飛行隊で139回ですから、百里、小松、新田原、築城から4エレメント16機を引き抜くことが大きな問題とは思えません。
・中期的には、F-35の価格があの通りですから、今後、戦闘機数は減るのは間違いないと思います。
例えばF4が全て退役した時に、F35は22機ほどしかない(仮定)とすると、配備機数(0.8がけ)でざっと18機減。中/
西部からさらに3エレメント抜いて、7個飛行隊全てを14機編成にすると、南西増強分を含んで28機になります。南西を14機飛行隊2個で我慢すれば、18機減は吸収できる。まだ北部は18機x4飛行隊体制ですから、ここから引き抜きを始めても良い。(その前に練習飛行隊から機体を抜くべきか)
私はこれで良いと思います。本当に防空能力の穴を気にするのであれば、いま急いで整備すべきは、実は、戦闘機ではない。AEWや空中給油機、なにより掩体です。高価で高性能なF35やF15近代化機体などは、敵にすれば、有事には地上で破壊するのが基本。F-35一機でざっと200億円ほどかかります。掩体が一つ当たり10億円(多分もっと安い)かかったとしても、20こ整備できる。敵の地上攻撃に対して、掩体の効果で1機でもF35を守れれば、元は取れる。つまり、ほぼ確実に、元は取れると思います。しかも掩体は100年近く使える。
現状の航空自衛隊の(いささかバランスの悪い)整備体制の中では、今は、(例えば)掩体を作った方が効率的かと思います。
(別件ですが)そもそも、F35だけのことを考えても、今あわてて作ると、後で改修費用が大変そうですから、すこしゆっくり作った方が良いかと思いますし。
>あなたが地図を全く見ずに物事を考えていることだけは理解しました。
>本文にもあるように、中国機が多数飛来するのは那覇西方・尖閣北方海域ですよ?、先島諸島の下地島においてどうするのですか・・・
横から失礼。
下地島なら近くなってより早く対応できると思うのだけれど、
なぜ呆れていらっしゃるのでしょうか?