◆訓練と実任務の両立が課題
ソマリア沖の海賊に関して、海上自衛隊の海上警備行動や特別措置法の立法を以ての派遣であるが、一つ動きがあったようなので掲載。
海上自衛隊は、呉基地の第4護衛隊群第8護衛隊より、護衛艦さみだれ(DD106)、護衛艦さざなみ(DD113)、をソマリア沖に派遣する。それぞれ、満載排水量は6200㌧、6300㌧と各国のフリゲイトと比較して大型である。二隻の護衛艦では、海賊対策の訓練を実施、実際の派遣では護衛艦による哨戒や護衛を実施、加えて海上保安官の同乗による海賊取締を実施する予定だ。
二隻の母港は呉基地で、臨検などを行う特殊警備隊の派遣も行われるようだ。第8護衛隊は、イージス艦きりしま、護衛艦いなづま、とともに二隻の護衛艦を加え四隻で一個護衛隊を編成しており、イージス艦ともう一隻の護衛艦は今回派遣されない。写真は、さざなみ、の写真が無かったので、おおなみ、で代用。
また、二隻の護衛艦にはSH-60J/K哨戒ヘリコプターが搭載されている。哨戒ヘリコプターは、北朝鮮工作船侵入事案に伴い、順次機関銃や防弾板の設置などの改修が行われており、捜索レーダーとともに高度な紹介能力を発揮できよう。また、K型であれば、対艦ミサイルの搭載も可能である。
はるな型や、しらね型のような、5インチ砲を背負い式に装備した威圧的な護衛艦を派遣した方が、ソマリア沖の海賊は、米軍のイージス艦であっても見境なしにロケット弾で攻撃してくるので、これは強そうだ!という印象を与えることで、凄みを利かせられるのでは、と考える次第。もっとも、従来型のヘリコプター搭載護衛艦はこれから減ってゆくのだが。
他方、忘れてはならないのは、本ブログでも繰り返し指摘され、当方も幾度か掲載している内容であるが、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援のための艦艇派遣である。過去には、この程度の任務と両立できない訳が無い、というコメントもいただいたことがあるが、補給艦と護衛の護衛艦を稼働艦の中から訓練体系の隙間を見つけて派遣することは、容易ではない。交代の艦艇を含めると問題はかなり大きいのだ。
インド洋への艦艇派遣と今回の海賊取締任務、ともにいわゆる出口戦略が確立しておらず、しかも多数の後退にあたる艦艇とを確保しなくてはならないことを考えると、自衛艦隊隷下に南洋艦隊か、インド洋艦隊、名称が刺激的であるならば外洋艦隊というようなものを編成して、必要な部隊と訓練体系の両立を図るべきではないか、と考える。
海上自衛隊は、このほかにも弾道ミサイル防衛や、工作船の侵入に備えた哨戒、そして南西諸島の島嶼部防衛などにおける護衛艦や哨戒機などを充当しなければならない。こうなると、実任務にあたる部隊と訓練に専任する部隊のローテーションを考えた編成への改編も射程に収め、議論を行う必要性があるのかな、と考える次第。
HARUNA
[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]
今回のソマリア派遣に対する私の願いは1つだけです。武器使用の大幅緩和です。さらに武器使用に関しての全責任は政府がとるとの確約が必要だと思います。まあ、この件に対する日本国民の関心の薄さがきになりますがね。石油はどこから運んできているのかわかっているのですかね?
>武器使用の大幅緩和です
ううむ、これは難しいのですよね、実はソマリア沖で海賊対策任務にあたる各国海軍の最大の悩みがココだったりします。
武装した海賊が乗っているトロール船、発砲してきたので応戦して撃沈したら、実は相手は占拠されてる普通の船だった、乗組員巻き添えで死亡。そういう事例が既に発生しています。
無線で問い合わせても、相手の船の言葉が不自由だったり、逆に海賊船で相手が商船を装っていて偽称されても見破る手段が無いのが難点。
一番楽なのは、第二次大戦中のように船団を組んで護送船団方式で周囲を護衛艦が軽快する方式なのですが、その場合一番遅い船に船団が合わせる必要があるのと、船団が集結するまで動けないこと、集結する途中に襲われる可能性があるという点でしょうか。コスト的には非現実的なので行われないでしょうが・・。
最も確実な方法は、過去にも書きましたが、ソマリアの国家再建を行う国際平和維持活動を行い、ソマリア国内に海賊を取り締まる治安機関を含め、政府を再建することです。時間がかかるようですが、根本的な解決へのほぼ唯一の手段です。
今回の派遣で、2隻の護衛艦が投入されますが、インド洋派遣の分を合わせると合計3隻が常時派遣されますが・・・・これは事実上、国内の通常任務に投入できる艦艇が9隻いなくなったことを意味します・・・
なんで9隻?と感じるかもしれませんが。まずインド洋ほどの遠洋になると、現地での活動は約4ヶ月が限界です。
それは現地への行き帰りだけで1ヶ月以上掛かるからです。
一般的に軍艦の母港から離れる限界の期間は6ヶ月と言われています。それを超えると乗員のメンタルの外、家庭が持たないと言われています・・・・
日本からインド洋までの航海は約20日です。
トラブル等に備えるとやはり4ヶ月が現地での活動限界です。
そうすると単純に1隻派遣するには年間3隻そして3隻派遣するなら全部で9隻が必要なことは解ります。
そして当然国内に帰ると休暇も必要だし(長期派遣前にも準備のほか最後に家族と過ごす休みも必要)、ドックにも入る必要があるし、また錬成訓練の期間も必要です・・・・そう考えると長期海外派遣に出す艦艇って使えないのが解ります・・・・
前出の旧地方隊護衛艦のヘリ搭載はひょっとしたら、長期海外派遣で手薄になる国内の防衛の為の方策なのかもしれませんね。
実質、1個護衛隊群にあたる護衛艦が、交代と回航にあたっているわけですが、例えば、乗員のローテーションシステムを考慮したり(たとえば、同型艦の乗員をローテーションで回す米海軍のシースワップ制度、海上自衛隊には艦と乗員を別々に運用するという制度は馴染みませんが、護衛艦の数が限られている以上検討するべき時期に来ているのかな、と)、訓練体系を見直したりすることで多少対処できるような気がします。
また、艦隊編成も、インド洋艦隊、もしくな南洋任務群、というような司令部を編成して、護衛艦隊から必要な部隊を回してもらうなどの、もう少し工夫する必要があると思います。
他方で、あまりに長期化することがないよう、確固たる出口戦略と展望のもとで実施する必要があるようにも。
>米海軍のシースワップ制度
もうまた一つ伝統を捨てざろ得ないのでしょうね・・・・しかしシースワップをすると、乗員が艦を大事にしないなど問題があるみたいですね・・・
米軍はそのせいで整備記録の書類が膨大化してしまったとか・・・・・
また国内の艦も、戦略原潜よろしくブルー・ゴールドチームを編成して、稼働率を高めるなど手を尽くさないといけないのかも知れませんが・・・・抵抗があるでしょうし、弊害がありそうです。
整備・訓練・人事全てをいじる必要がありそうです。
>隊編成も、インド洋艦隊、もしくな南洋任務群、というような司令部を編成して・・・・
本当に米軍の艦隊方式になってしまいそうですね・・・
シースワップ制度は、いろいろ抵抗があるでしょうから、導入するにしても、そのまま、とはいかないでしょう。例えば、護衛隊を同型艦3隻編成を基本とすれば、むらさめ型で三個、はつゆき型で、少なくとも三個は編成出来ますので、護衛隊としての護衛艦への愛着と連帯感を培うという方式が一つ考えられます。
もうひとつ、海上保安庁の予算体系を見直して少人数で長期間活動できる長距離哨戒艦のような巡視船を3~6隻建造するべきでしょう。
>本当に米軍の艦隊方式になってしまいそうですね・
旧海軍の合理的な方式を再評価して、といえば響きが違ってきます。