◆暫定的に海上警備行動で対応
本日は、ジプチ周辺の情勢などについて、掲載する予定であったが、護衛艦派遣について、動きがあったので、そちらを掲載したい。
本件事案を検討している自民党公明党の与党作業チームは、海上自衛隊の海賊対処のための東アフリカソマリア沖派遣について、自衛隊法の海上警備行動命令に基づく派遣、という法的位置づけのもとで実施することとなった。海上警備行動命令が発令されれば、能登半島沖工作船侵入事案、南西諸島原子力潜水艦領海侵犯事案に続き三度目の発令となる。防衛省によれば、海上警備行動の準備には一か月を要するとのこと。
海上警備行動命令に基づく派遣では、日本船籍の船舶に加えて、日本人乗組員が乗船している船舶や、日本に向けての物資などを輸送する船舶に対しても護衛を行うことが可能、としている。ただし、外国船舶に対する護衛について、現状の海上警備行動命令では行うことが出来ないという課題が残る。
外国船舶が海賊に襲われた場合に護衛を行うことが現行法では不可能ということは作業チームでも問題とされている。これについて、三月上旬に新法を制定して、護衛任務を可能なようにする、としている。三月上旬であれば、一ヶ月後に派遣準備が完了し、任務に就くまでに間に合う。武器の使用は自衛などに限られる、ということなので、逃走する不審船に対して対艦ミサイルを発射したり、疑わしい陸上の施設に対して艦砲射撃を加えることなどはできない。
武力による攻撃については、米海軍なども躊躇しており、その理由は海賊船か占拠された民間船かの区別がつきにくいということだ。海賊は交戦団体でもなければ国家による不法行為でもなく、識別は難しい、特に、占拠された民間船を攻撃して、民間船の旗国の人員を殺傷することとなれば、逆に問題ではあるが、実際こういう事案も生じている。
なお、現在検討が進められている新法の制定や、自衛隊の海賊対処のための派遣について、社民党は反対の姿勢を加えている。海賊対処は、海賊行為を行っているのが海軍であれば国際紛争となるので、憲法九条が禁止している国際紛争への武力の使用、と言えなくもないが、海賊行為が私人によるものである限り、少なくとも現在検討されている対処法には、憲法上の問題はない。
ただし、大きな問題は、今回派遣されるのは、一個護衛隊4隻という規模であり、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援の補給艦、護衛艦各1隻の派遣と併せれば、海上自衛隊全護衛艦の一割以上がインド洋、アラビア海に展開していることとなる。一割というと、なんとかなりそうな印象が生まれるが、交代の一個護衛隊の回航や準備期間を加えると、これは大きな負担で、何らかの対応や、柔軟な運用が必要となる。
HARUNA
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>>一個護衛隊4隻
読売関係の情報では「2隻」のようです。しかし例え2隻でも、テロ特措法関連の派遣の護衛艦と合わせれば、インド洋派遣初期の護衛艦派遣数と同じ3隻ですので厳しいのは変わらないでしょう。
読売の情報では、SBUの派遣も検討されているようですが、日本近辺のこともありますのでどうなんでしょうか?
しかし例の事件のこともありますので、汚名返上のため政治的に派遣されるのかもしれませんね・・・
2隻ですか、DDかDDHか、振り分けが気になりますね。いまどき、船団を護衛、という、船団を集めるだけでも大変な提案は撤回して、給油支援の補給艦についている護衛艦からヘリコプターを飛ばして哨戒任務につける、というのではいけないのかな、と思ったりします。
無数の船舶が行きかう中で、船団護衛という、具体的に成果があやしい方式を出す以上、この派遣は単に政治的な目的があるのでは、という印象を強調しているだけにも感じるのですが。