北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

現代日本と巡洋艦(第五回):巡洋艦の戦力投射任務と沿海域戦闘艦

2015-05-17 23:14:54 | 防衛・安全保障
■巡洋艦の戦力投射任務と現代艦艇任務
今回の議論は少々巡洋艦というには小型の艦艇を提示しますが、お付き合いいただければ幸い。

やはり我が国の場合、有事の際に実任務へ投入する前提の装備を以て、海賊対処任務や国際貢献に邦人保護任務へ対応可能な多機能艦を建造しなければなりません。しかし、新装備を導入すればその分の後方支援や整備基盤などが必要となり、余りに多機能を盛り込む場合、専用艦として特定任務へ投入する際に多用途機能で他の用途の部分が支障となる可能性も無視してはなりません。

ならば、専用の護衛艦を多用途に用いるとの前提で平時から十分な数をそろえる正攻法が望ましいところなのですが、十分な規模の護衛艦部隊というものが、年々護衛艦に求められる水上戦闘や対潜戦闘能力と個艦防空能力が脅威の増大に併せ高まり、併せて建造費も大きくなっているため、十分な数を、という施策は現実的に難しいことも事実でしょう。

米海軍の沿海域低戦闘艦構想のように敢えて低性能に甘んじ、数を確保する、という施策は逆にリスクがあります。沿海域戦闘艦計画、先日、この沿海域戦闘艦を示すLCSという呼称は両用戦艦艇と誤認するためとの理由からフリゲイトに呼称統合されましたが、高速度と航空運用能力特化に重点を置き、57mm砲と機関砲など最小限の装備とし、任務に応じ装備を積み替える方式は事業評価で低い評価を受けました。

フリーダム級とインディペンデンス級が建造されたLCSは、米海軍の水上戦闘艦が満載排水量9000t前後で推移するなか、最小限の性能を盛り込み3000t前後にとどめ、対水上戦闘や掃海任務などはコンテナ式モジュールを組み替えて対応する、という構想で整備されました、我が国へも再来年にも佐世保基地へ掃海艦の後継へ前方展開させます。

しかし、モジュールを換装する場合、そもそも平時使わないモジュールを陸上で保管する場合にも整備が必要で、モジュールはそれぞれ高価であることから、平時まったくつかわないモジュールを多数調達し整備の上保管し、加えてその操作に熟練した要員を養成し訓練し維持しなければなりません、これを多数部隊で維持することは負担が大きすぎるというもの。

この種の発想はデンマーク海軍が1990年代初頭にスタンフレックス300構想として、300t前後の船体に数カ所区画のモジュールを搭載し、ハープーンミサイルを搭載するミサイル艇、PAP-104掃海器具と曳航式機雷探知装置等を搭載する掃海艇、後部に機雷を搭載する機雷敷設艇、76mm単装砲と近接防護装置及びシースパローミサイルを搭載する哨戒艇、とモジュールを組み替え対応する方式を実施しました。

スタンフレックス300計画は鳴り物入りで導入開始されたのですが、結局、積み替え運用を行いませんでした。有事のさい必要になったとしても積み替えには一旦重整備が可能な母港へ戻らねばなりませんし、要員訓練とモジュールの整備は容易ではない、結局ミサイル艇モジュールを搭載したものはミサイル艇で、掃海艇モジュールを搭載したものは掃海艇で、ほぼ固定化した、とのこと。

北大路機関:はるな
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 将来航空自衛隊練習機体系へ... | トップ | 防衛省、陸上総隊司令部を朝... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事