北大路機関

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【28】F-35,安価なF-22補完から三軍統合戦闘機へ昇華

2019-01-08 20:17:33 | 先端軍事テクノロジー
■F-35,そもそもどんな機体か
 F-35戦闘機は単純な戦闘機ではなく情報優位と情報伝送による戦域優位を掌握するための航空機だ、とは開発中に予算削減が検討された当時のアメリカ海軍の反論です。

 F-35B戦闘機はアメリカ海兵隊が強襲揚陸艦の艦上から運用する航空機として要求され、イギリス海軍が軽空母の艦隊防空用空母艦載機として運用する事が要求された航空機です。そしてF-35の能力は単純に第五世代機としてステルス性と長距離打撃力を活かした絶対航空優勢確保と航空阻止近接航空支援任務、単なる強い戦闘機に留まるものではありません。

 ネットワークセントリック、という能力が強調されるF-35B,この戦闘機が展開する事により敵目標情報と脅威情報を標定し情報を共有すると共に、地上戦闘を優位に展開させるうえで重要な地位を有する事となるでしょう。勿論、経空脅威の無い安定化作戦等ではF-35は必要性が薄いですが、攻勢防勢共に従来型戦闘ではその必要性が飛躍的に高まります。

 JSF計画として現在のF-35戦闘機の構図が醸成されたのは1990年代であり、この頃は単にF-22戦闘機という取得費用と運用費用が莫大且つ機密の塊で輸出が難しい第五世代戦闘機を補完する安価なステルス戦闘機、という青写真が構成され一つの共通認識となっていた事は確かです。F-16にF/A-18CとAV-8やA-10を一機種で置き換える壮大な構想でした。

 F-16にF/A-18CとAV-8やA-10を一機種で置き換えるという構想ゆえに当初は一機当たり2300万ドル程度に抑えられるという量産効果と性能を含め、安価な第五世代機が見込まれていたのですが、開発期間が長期化すると共に戦闘機を取り巻く運用環境が変化し、これを適合させる為に様々な性能を盛り込み、一機一億ドルという区切りの好い高価な機体となる。

 ハープーンミサイルの後継が長射程化するためにセンサーノードが必要となり、ステルス性と自衛空対空戦闘能力を有するF-35B,という構図はハープーンミサイル後継のミサイルが非常に長射程化した今日であるからこその視点であり、JSF計画当時の対艦ミサイルは200km前後の射程が主流、F-35等に索敵を依存しなくともある程度対応できる物でした。

 海兵隊が運用するF-35B戦闘機、これは同時にネットワークセントリックという通信技術と情報優位の戦域優位への必然的な直結時代には不可欠な装備であると共に、F-35Bのネットワークセントリックが頭上に展開しているか、戦域内にネットワークセントリック能力が展開していない状況では、空の下、陸上戦闘の様相は全く異なるものとなるでしょう。

 MQ-9無人攻撃機やRQ-4高高度無人偵察機等の無人航空機が多数滞空している状況ならば、陸上戦闘は情報優位を比較的堅実に維持できる事でしょうが、残念ながらMQ-9やRQ-4では敵戦闘機や敵広域防空ミサイルの脅威下での従来型戦闘では、まず敵戦闘機とミサイル、これらを無力化しない限り、低速且つステルス性が低く簡単に無力化されかねません。

 垂直離着陸可能なF-35Bを陸上自衛隊の視点から考えるのであれば、敵無人偵察機を排除し敵からの情報秘匿を維持しつつ、しかし我が方は敵戦闘機を自力で排除し情報優位を確保出来る、という、アメリカ海兵隊とF-35Bの関係の様に陸上自衛隊の陸上防衛とネットワークセントリック能力の不可分の関係性から、F-35Bが必要性だと視る事も出来ます。

 陸上自衛隊もF-35Bの能力を必要としている、しかしこの能力はF-35A戦闘機でも成り立つものですが、遠方の航空基地から陸空作戦協定の枠内で運用される機体よりは、制空戦闘とは別枠で運用できるF-35Bを航空自衛隊が運用し、情報優位能力を陸上自衛隊へ提供する、可能ならば海兵航空団のような自前の機体を、という考えもあるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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