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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備防録:後継機はどうなる?C-130H輸送機運用開始40年!C-130J-30取得費用2.6億ドルの現状

2024-09-12 07:00:54 | 先端軍事テクノロジー
■自衛隊機後継問題
 来年度予算概算要求を見ますと輸入装備も国産装備もインフレと円安の要素が色濃く驚くほど人件費以外高騰しているのに驚く。

 C-130H輸送機の後継はどうなるのか。航空自衛隊にC-130H輸送機が配備されたのは1984年であり、今年はC-130H輸送機運用開始40周年となります。それは後継機を考えねばならない時期でもあり、また、C-130H後継機としてロッキードマーティンが開発したC-130J輸送機は歴史的円安とアメリカでの空前のインフレにより現状かなり割高となっています。

 F-35戦闘機を一例に見ますと、4月にアメリカのエマニエル大使が三菱重工小牧南工場のF35FACOを視察した際、年間250機を量産するロッキードマーティン社製F-35よりも年産12機の三菱重工の方がコストを抑えていると絶賛しましたが、それは最終組み立て工程だけでも、人件費や関連機材の費用、そこに円安が影響していると言わざるを得ません。

 オーストラリア空軍がC-130J-30輸送機を2022年に調達した際の調達費用が24機で63億ドルでしたので、C-130H輸送機をC-130J輸送機で置換えた場合、自衛隊の保有数は16機ですので42億ドル、本日の為替レートですと5950億円、1機あたりとしますと375億円、というところでしょう。ただ、2022年の調達費用、インフレの影響も考慮すべきで。

 円安が2025年以降にも続くと考えるべきなのか、1ドル110円程度まで円高に回復するのかは未知数ですが、1ドル70円の超円高を念頭に計算するのか、現状の為替相場で調達するのか、C-2輸送機の取得費用も高騰していますが、令和5年度に2機597億円で取得していますので、2023年の単純計算ではC-130J-30よりも安くなっている状況があります。

 C-2輸送機、高性能化と価格高騰によりC-130の後継は安価な機種を探すとして、生産計画を当初の25機から22機に削減するとの財務省と防衛省の過去の合意がありましたが、エアバスA-400MかエンブラエルKC-390がC-2輸送機と比較し、無論何機導入するかはありますが、機種が増える運用基盤整備費用を含めて抑えられるかという疑問も生じます。

 飛行隊定数を考えるとC-2とした場合は輸送機全体の数が削減されてしまいます。ただ、C-130J-30の費用が高い事も前述の通りで、それならば小型のC-27Jならば輸送力が減る分飛行隊定数を24機に増やせるかといわれると、それが通るならば22機しか生産しなかったC-2に加えてC-1と同じくらいの大きさの例えばUS-2飛行艇と部品を共通化させたC-3輸送機でも造った方がとさえ思う数で、難しい問題です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【防衛情報】アメリカ海兵隊野戦防空能力強化と沖縄近海で初の対艦ミサイル攻撃訓練

2024-09-10 20:23:57 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回も海兵隊関連の話題を。

 アメリカ海兵隊は野戦防空能力強化へ陸軍防空砲兵へ教育支援を求めています。これは陸軍の防空砲兵射撃管制指揮官課程教育へ海兵隊士官を初めて受け入れたもので、海兵隊は2024年7月、キャンプペンドルトンの第3海兵航空団第38海兵航空管制群より要員を派遣、三週間にわたり陸軍のペトリオットミサイル研修課程を受けたものです。

 水陸両用作戦を主任務としていたアメリカ海兵隊は、必要であれば上陸任務に際し海軍のイージス艦から防空援護を受けることが可能でした、イージス艦の配備数は年々増強され、またイージス艦が搭載するスタンダードミサイルもSM-2からSM-6へ転換したことで射程が大幅に延伸していました、しかしそれは上陸作戦の身において機能します。

 海兵沿岸連隊、大きな転換点はアメリカ海兵隊がインド太平洋地域での中国との緊張を受け、水陸両用作戦部隊から沿岸砲兵部隊へ、1940年代初頭までの運用に回帰した事で、自隊防空は海兵隊自身が行う必要が生じ、1990年代まで海兵隊が配備していたホーク地対空ミサイルの後継となる装備を2020年代に配備する必要が生じたための措置です。
■防衛フォーラム
 部隊を離党に分散させなければならない状況でどのように防空基盤を構築するかは日本も当事者として課題に。

 海兵隊は陸軍の協力支援を受けるとともにワシントン州ルイスマッコード統合基地での空軍州兵参加についても進めています。空軍州兵の防空教育訓練参加は5月に行われたという。アメリカ海兵隊の防空強化は喫緊の課題となりつつある。陸軍の防空砲兵射撃管制指揮官課程教育へ海兵隊士官を派遣したアメリカ海兵隊は、既に課題に直面した。

 当初想定した島嶼部での戦いの前に既に今年1月に空からの攻撃に曝されています、それはシリアヨルダン国境に展開しているタワー22前哨基地が無人機攻撃を受け3名の海兵隊員が戦死し、このタワー22前哨基地での3名の戦死と数十名の負傷者が出た攻撃に続き、8月9日にもシリアのルマリン補助飛行場が無人機攻撃を受け8名が負傷した。

 海兵隊は現時点でMRIC中距離迎撃能力という新しい防空装備調達を計画しており、MR海兵沿岸防空大隊を海兵沿岸連隊に組み込みます。MRIC中距離迎撃能力、想定されている装備は射程60kmで20発のミサイルを装備するものとなっています。ただ、海兵沿岸防空大隊は、既に海兵沿岸連隊の編成が始まっているものの未だ具現化していません。
■防衛フォーラム
 自衛隊も戦闘ヘリコプターについて真面目に考えて欲しい、高高度を滞空する無人航空機が上陸を試みる船団に攻撃を加えても出来る事はなく広域防空艦に一斉に落とされてしまう。

 アメリカ海兵隊は沖縄近海で初の対艦ミサイル攻撃訓練を実施しました、地対艦ミサイルによるものではなく攻撃ヘリコプターによるもので、6月26日に実施されました。31MEU第31海兵遠征群第262海兵中型可動翼機飛行隊に配備されたAH-1Z攻撃ヘリコプターが実施したもので、太平洋上での海兵隊対艦攻撃訓練はこれが初めて。

 第262海兵中型可動翼機飛行隊はMV-22オスプレイ可動翼機を装備する部隊ですが、MEU編成に際して混成航空部隊編成へ臨時改組し、AH-1Zバイパーを装備しました。沖縄近海での訓練では最近配備開始された撃ちっ放し方式のAGM-179統合空対地ミサイルを使用、曳航された標的船に対して正確に命中、これを破壊したとのこと。

 この訓練ではAH-1ZとともにUH-1Yヴェノム軽多用途ヘリコプターが随伴し、FARP前方再武装燃料補給の訓練も実施しました。AGM-179統合空対地ミサイルはヘルファイアミサイルやマーベリックミサイルの後継に当たるもので、2022年には射程を従来の9kmから18kmへ大幅に延伸した改良型も開発、運用に際する生存性を強化しています。
■防衛フォーラム
 B-2よりもF-2が必要なきも。

 アメリカ空軍はクイックシンク船舶攻撃誘導爆弾試験を実施しました。この試験は7月にメキシコ湾上で実施され、B-2戦略爆撃機が使用されています。メキシコ湾上に遊弋する標的船には退役した貨物船モナークカウンテスが用いられ、改良型のJDAM誘導爆弾により実施、目標に命中し標的船は水没したとのこと。

 クイックシンク船舶攻撃誘導爆弾というJDAMの改良型は、従来の爆弾は目標を逸れて海面に着弾した場合に反跳することがあり、これはスキップボミングという第二次大戦中の爆撃機からの船舶攻撃手法ではあったのですが、高高度から投下する爆弾の場合は大きく跳ねすぎ威力圏外に飛び出してしまうことがあり、弾頭形状を変えることとした。

 B-2戦略爆撃機によるクイックシンク船舶攻撃誘導爆弾運用は、2022年に先行して実施されたF-15Eストライクイーグル戦闘爆撃機による試験に続くもので、アメリカ空軍では巡航ミサイルや海軍の潜水艦が用いる魚雷などよりも遥かに安価な誘導爆弾を用いることで、膨大な輸送船弾などに対する有用な打撃力を空軍が整備する事を期しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-テルミット空中散布無人機ドラゴン実戦投入と警戒されるベラルーシ国境情勢

2024-09-10 07:00:05 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 近接航空支援という概念を無人機が開拓しつつありまして自衛隊も数が限られる対地攻撃任務対応航空機に新しい視座を開ける可能性が。

 ウクライナ軍は無人機からテルミット焼夷剤を撒布し陣地攻撃に多用している、通称"ドラゴン"、アメリカCNNは9月7日にその概要を報道しました。若干、特定通常兵器制限条約対象の油脂焼夷弾やその代表例であるナパーム弾と混同している報道の論調ではありますが、おそらく記者の兵器関連と国際法への理解不足が背景にあるのでしょう。

 テルミット焼夷剤の無人機からの撒布は9月3日頃からウクライナ軍が運用の景況を情報開示として動画を発表していまして、大型のクワッドドローンからテルミットを撒布、森林などに隠された歩兵部隊陣地の真上まで進出して、そこから農薬散布のようにテルミット剤を撒布、真下の陣地を焼尽させるか、陣地を隠す森林を焼き払う構図です。

 テルミットは酸化金属粉末とアルミニウム粉末を混合し燃焼させることで酸化物還元の際に二千度以上の高熱を発します。油脂焼夷弾などは都市部で使用されると大規模な延焼、東京大空襲のような、被害を引き起こすとして特定通常兵器制限条約の対象となっていますが、酸化金属の還元反応についてはいまのところ制限する条約はありません。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 日本もこういう事情が有るので西方シフトと北方警戒を並行しなければならないという。

 ベラルーシからのウクライナ侵攻懸念の現状について、ISWアメリカ戦争研究所はウクライナ軍事評論家のマショヴェッツ氏による現状報告を紹介しています。マショヴェッツ氏によれば、現状のベラルーシ軍にはウクライナへ侵攻する能力はない、とした上でベラルーシとウクライナとの国境地域に展開している軍事力について顕著な動きを指摘します。

 ウクライナと国境を接するゴメリ州には二つの戦術群が展開しており、バイキング戦術群とヴォラート戦術群、この二つの戦術群をあわせると3000名規模の部隊になると指摘、またこの3000名のうち1000名はロシア人要員により構成されていると指摘しました。もっとも、3000名の規模ではゴメリ州からウクライナへ本格的な侵攻は現実的ではありません。

 ゴメリ州の兵力についてISWはここまで踏み込んだ説明をしていませんが、ウクライナが警戒するのは首都キエフからの北方国境がベラルーシであり、2022年開戦劈頭にロシア軍はベラルーシ側からキエフ攻略を試み大規模侵攻を実施しています。兵力枯渇のロシアが1000名もの兵力をおいていることもウクライナには不確定要素なのでしょう。

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【防衛情報】アメリカ海兵隊沖縄県にACV水陸両用戦闘車配備,戦術航空作戦センター航空管制員・直接航空支援センター航空管制員統合

2024-09-03 20:11:17 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 アメリカ海兵隊に関する話題について沖縄県や太平洋地域の話題を中心にみてみましょう。

 アメリカ海兵隊は日本の沖縄県にACV水陸両用戦闘車配備を開始しました。これは6月28日にアメリカ海兵隊が発表したもので、アメリカ軍の那覇軍港より到着した車両はキャンプシュワブへ向かうべく整備を行っているとのこと。ACVは既にフィリピンで行われたバリカタン演習に参加しており、第3海兵師団に配備された車両です。

 ACV水陸両用戦闘車はイタリアのイヴェコスーパーAV装輪装甲車を原型としてイギリスのBAEシステムズ社が開発したもの、アメリカ海兵隊のAAV-7両用強襲車の後継車両として配備が開始されています。当初はリーフを超える際に装軌式でない点が不安視されていましたが、戦略機動性と海上性能の高さはこれを補って余りあるとのこと。

 AAV-7両用強襲車の後継装備について、アメリカ海兵隊はフォースデザイン2030により、従来の水陸両用戦部隊としての編成から1940年代初頭の沿岸砲兵部隊への回帰を発表し、これによりインド太平洋地域でのミサイルや無人機を駆使した中国軍との正面からの対決に備えていますが、こうした中でACV水陸両用戦闘車は配備が継続されている。■

 ACV水陸両用戦闘車について。自衛隊が水陸両用車としてAAV-7両用強襲車を導入した際には時代遅れの装備、といわれていましたが、当時このACVは評価試験中で、導入を五年程度遅らせる事が出来ればこのACV水陸両用戦闘車を導入できた可能性があり、しかしそれ程当時悠長な状況であったのかという時際的な問題認識を持つひつようがありました。

 AAV-7両用強襲車、自衛隊の選択肢としては正しかったといいますか、2010年代半ばに選択できる装備といえば、EFV海兵遠征車両は中止されていましたし、まさか中国の05式水陸両用装甲車に対抗出来る装備を2010年代の内に国内開発する事も出来ません、ただ、ACV水陸両用戦闘車がACV30として機関砲搭載型を開発している原罪を見ていますと。

 ACV30はコングスベルク社製30mm機関砲型RWS遠隔操作銃搭を搭載した装甲車で、これはストライカー装甲車に搭載すると如何にも大き過ぎる印象ですがACVの倍は大きさは丁度良く、また水上から沿岸部目標と不期遭遇した際に対応が可能で、AAV-7の数が揃ってきました今だからこそ、ACV30については採用を検討するべきなのかもしれません。■

 アメリカ海兵隊はペリリュー飛行場の再活性化を行いました。ワスプ級強襲揚陸艦のペリリューではなく、第二次世界大戦中の激戦地となったパラオ諸島のペリリュー島にある飛行場です。着陸は2024年6月、今回この飛行場を整備させたのはインド太平洋地域での中国軍への対抗を念頭とした戦力投射能力強化が主眼とされています。

 海兵沿岸連隊の新編などアメリカ海兵隊は太平洋島嶼部での戦闘を念頭に改編を進めていますが、中でもKC-130Jは戦車や火砲に水陸両商社部隊などが廃止や削減される中で数少ない増強される部隊であり、アメリカ海兵隊はこうした地域にHIMARS高機動ロケットシステムや地対艦誘導弾部隊などを展開させる手段として運用する計画です。

 KC-130Jスーパーハーキュリース空中給油輸送機が今回着陸したもので、所属は第1海兵航空団、飛行場の再生には第 1 海兵兵站群第 7 工兵支援大隊パラオ海兵隊工兵派遣隊が実施し植物などを除去、課題であったのは大量の不発弾で、戦闘工兵小隊がその処理に当たりました。KC-130Jがパラオに着陸したのは今回が初めてとのことでした。■

 アメリカ海兵隊は長距離航空作戦に対応する新しい航空管制方式へ改編します。具体的には2026年に戦術航空作戦センター航空管制員と直接航空支援センター航空管制員を統合し、海兵航空部隊の管制官は航空基地勤務課前線航空管制を行うかという区分を廃止し、双方の任務に対応できるように改編、前線航空統制要員も統合するという。

 戦術航空作戦センター航空管制員と直接航空支援センター航空管制員を統合する試みは、同時に2025年に予定される防空システム改良に併せるものとなり、海兵隊はこれまで強襲揚陸作戦への近接航空支援という限られた任務に対応するAV-8Bハリアー攻撃機の後継として、より運用能力の幅が広いF-35B戦闘機を大量配備してゆくこととなります。

 F-35B戦闘機は第五世代戦闘機であり、より広範囲の航空作戦を展開できるよう成るため、より空軍的な任務を担う以上、戦域航空統制についても従来の前線航空統制員よりも進んだ能力が求められます。戦術航空作戦センター航空管制員と直接航空支援センター航空管制員を統合する背景には、後方と前方の境界線が転換期にあることを象徴しました。

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ウクライナ情勢-F-16戦闘機1機喪失,戦闘による喪失ではなく操縦士の過失によるものでもない

2024-09-03 07:00:42 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 イギリス国防省ウクライナ戦況報告やISWアメリカ戦争研究所ではまだ確たる原因の分析には至っていないようですが。

 ウクライナ空軍の配備されたF-16戦闘機が1機、任務中に喪失しました。これは8月30日付NHK報道などで報じられたもので、NHKはウォールストリートジャーナルを引用、F-16喪失は8月26日に発生し、ロシア軍ミサイル攻撃への迎撃任務に当っていたF-16戦闘機が基地のと交信が途絶え、墜落、この際に操縦士が戦死したとされています。

 F-16戦闘機は8月6日にウクライナへ到着したもので、ウクライナのゼレンスキー大統領はF-16戦闘機について、ロシア軍からの攻撃に対して前線がこうちゃくしている中、その打開の為に決め手となる装備であるとして各国へ供与を要請していました。F-16はウクライナ軍に配備されるMiG-29戦闘機と同世代の戦闘機ですが全く異なる概念の航空機です。

 墜落の際に操縦していたのはCNNによれば、タッグネームムーンフィッシュことオレクシーメス氏、F-16戦闘機は操縦システムがフライバイワイヤ方式であるとともに、戦闘システム等を操縦中に操作する事で様々な任務に対応出来ますが、言い換えれば戦闘機操縦経験が在っても機種転換に時間を要し、戦死したメス氏は貴重なF-16操縦要員でした。■

 ウクライナのゼレンスキー大統領は8月30日、ウクライナ空軍のミコラオレシチュク司令官を解任したと発表しました。この解任はF-16戦闘機喪失を原因としているかについては言及しませんでしたが、ゼレンスキー大統領は空軍を司令部レベルで強化する必要があると発言、後任にアナトリークリボノジュコ中将が司令官代行に任命されたとのこと。

 ゼレンスキー大統領の方針と共に、ウクライナのウメロウ国防大臣の発言をCNNが報じていて、今回のF-16戦闘機喪失は、ロシア空軍により撃墜されたものではないとしました。そして技術的な問題により撃墜されたものでもないといい、ウクライナ国防省は今回のF-16戦闘機墜落について調査委員会を組織し原因究明にあたっているとしています。

 ウメロウ国防大臣の発言は戦闘による喪失でも無く操縦の過失でもないといいますと、他に関係する可能性は限られてくるのですが、重要なのはウクライナ空軍の装備体系や運用思想はソ連時代の運用の延長上にあり、ここからNATO方式の空軍へ変革することは、それは装備から戦術までの根本の転換を意味する為、容易ではない、ということでしょう。

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【防衛情報】海上自衛隊イージスシステム搭載護衛艦,F-126防空フリゲイト一番艦起工

2024-09-02 20:13:08 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の話題を適当に持ってきた過去撮影の写真と共に。

 ギリシャ海軍はMEKO200フリゲイトの艦砲と防空能力を近代化するもよう。イギリスでおこなわれた5月23日のCNE2024海軍首脳会議においてギリシャ海軍のパナギオティスカラバス准将がギリシャ軍の近代化計画について、ドイツから導入したMEKO200フリゲイトのタレス社による近代化改修を進めており、先ず艦砲を改修するもよう。

 防空能力の強化として、シースパロー艦対空ミサイルに代えて射程の大きなESSMblock2発展型シースパローの運用能力を付与し、また艦をミサイル攻撃から守るCIWS近接防空火器についても改良型に置き換えるとのこと。改修計画は早ければ2024年内にも開始され、7年間をかけてギリシャ海軍のMEKO-200型を能力向上するとのこと。


 フィリピン海軍向けドック型揚陸艦4番艦が起工式を迎えました。5月29日にインドネシアのPT-PAL国営造船所において124m級揚陸艦の起工式が行われ、フィリピン海軍の水陸両用作戦能力を強化する試みは第二段階に入りました。タルラック級ドック型揚陸艦としてフィリピン海軍が導入する揚陸艦は既に2隻が竣工し運用中です。

 今回建造されるドック型揚陸艦はタルラック級の拡大改良型、バッチ2となる揚陸艦の2番艦です。バッチ2の1番艦は2024年1月22日に既に起工式を迎えており、これらが完成することでフィリピン海軍はアメリカ供与の第二次大戦艦が老朽化する中、長年の課題であった多島海域での防衛部隊輸送能力を再整備することが可能となります。


 フランス海軍は強襲揚陸艦へのアメリカ軍ヘリコプター発着試験を実施しました。試験が実施されたのはツーロン基地近海、強襲揚陸艦ディクルミュードでミストラル級強襲揚陸艦にアメリカ海軍台79海上攻撃ヘリコプター飛行隊のMH-60S多用途ヘリコプターが着艦、続いてアキテーヌ級フリゲイトアルザスにおいても同様の発着試験が。

 SIF戦略的相互運用性フレームワークとしてアメリカ海軍とフランス海軍は装備共同運用基盤を構築しており、今回のMH-60S着艦試験についてもその一環であるとされています。今後の課題は、一時的な着艦には留まらず、ヘリコプター分遣隊をアメリカ海軍がフランス海軍艦艇に展開させることとされ、防衛協力を強化する方針です。


 中華民国台湾は次世代フリゲイト計画を推進中です。これは5月25日に台湾メディアであるLTNが報道したもので、AN/SPY-7アクティブフェーズドアレイレーダーを搭載したイージス艦になるとしています。その排水量は6000tといい、満載排水量か基準排水量かは示されていませんが、アメリカからのイージスシステム供与を進めるもよう。

 AN/SPY-7アクティブフェーズドアレイレーダーの探知距離は大きく、台湾海峡に留まらず、例えば台湾太平洋側に展開し、遠方から弾道ミサイル攻撃等を探知しつつ、データリンクにより台湾本土の目標探知能力と搭載するスタンダードミサイルを連接することも可能です。LTNはこの報道について、政府高官の話として報道しています。


 海上自衛隊のイージスシステム搭載護衛艦はロールスロイスMT30を搭載します。イージスシステム搭載護衛艦はイージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システムがブースター落下問題により計画が中止されたのちの代替手段として計画されたもので、単なるイージスシステム搭載船計画から水上戦闘艦計画へと収斂した歴史があります。

 ロールスロイスMT30はイージスシステム搭載護衛艦の動力方式がハイブリッド電気機械推進装置となることを受け選定されたもの。従来のエンジンよりも自動化と整備間隔冗長性が高まった。コンパクトパッケージエンジンエンクロージャとして計画ではロールスロイスから納入された機関部を川崎重工が推進システムとして組み立てるとのこと。■

 ドイツ海軍F-126防空フリゲイト一番艦起工式が実施されました。ヴォルガストのペーネヴェルフトで6月3日に行われた起工式、ニーダーザクセン級フリゲイトとよばれる新型艦は満載排水量10000t、前型に当たるF-125型ことバーデンヴュルテンベルク級の満載排水量7316tを上回り、ドイツ海軍が戦後導入するフリゲイトとしては最大だ。

 F-125型は安定化作戦など長期間の任務公開を想定し武装よりも居住性を重視していましたが、F-126型は重武装となっています。ただ、防空フリゲイトとはいいますが、計画されているのはMk41VLSを16セル搭載し、いまのところESSM発展型シースパローを64発搭載するという僚艦防空能力に留める。2028年竣工で4隻が建造予定です。■

 アメリカ海軍はスタンダードSM-6ミサイルの空中発射を検討しています。これはVX-9飛行隊所属のF/A-18E/Fスーパーホーネットに搭載し、2021年に一度飛行中の様子が目撃されたものですが、あたらめて2024年に飛行試験を行う様子が高空飛行の様子を長望遠レンズにより撮影されたもののSNSへの投降により話題となっています。

 VX-9飛行隊は通称ヴァンパイア、アメリカ海軍の評価試験飛行隊です。スタンダードSM-6,正式名称RIM-174-ERAMはイージス艦に搭載する艦対空ミサイルですが射程240㎞、空中発射の場合は463㎞に達するとみられており、NIFC-CA海軍統合対空火器管制とデータリンクすることにより、イージス艦能力を次の段階まで発揮させ得ます。■

 トルコのバイラクタル社はスキージャンプ台による無人機試験を実施しました。試験は6月1日に行われ、同社が開発したバイラクタルTB-3無人機が試験に成功しています。重要なのはこの試験がトルコ海軍の強襲揚陸艦アナドルのスキージャンプ台を模した12度の角度で設計されていることで、強襲揚陸艦からの無人機運用の評価試験という。

 バイラクタルTB-3無人機はウクライナの戦場で活躍したバイラクタルTB-2無人機の改良型で、滞空時間は32時間と従来のバイラクタルシリーズよりも長く、また指令ビーム方式管制のバイラクタルTB-2とことなり衛星通信を使用でき、その航続距離は5700㎞に達するという。兵装搭載能力は280kgあり、誘導爆弾や小型ミサイルを搭載可能だ。■

 スペイン海軍のボニファス級多目的フリゲイトについて、F-110計画として進むスペインの将来水上戦闘艦建造概況がイギリスで行われたCNE海軍首脳会議において発表されました、これは計画統括調整者のファンカルロシディアスクアドラ氏が発言したもので、現在位置番艦がフェロル造船所の船台上において形になってきた段階である、と。

 ボニファス級多目的フリゲイトはOHペリー級ミサイルフリゲイトをライセンス生産したサンタマリア級ミサイルフリゲイトの後継艦で、2019年に5隻を43億2500万ユーロで建造が決定しました。クアドラ氏によれば建造は四か月前倒しで進んでいるとのこと、計画通りならば一番艦はこの後進水式を経て、2028年に竣工する予定です。■

 オーストラリア海軍はコリンズ級潜水艦の延命改修を発表しました、オーストラリア政府の公式発表として6月5日に開示された情報によれば、コリンズ級潜水艦のLOTE耐用年数延長を行うとのこと。コリンズ級潜水艦は1990年代に建造され、オーストラリア国内での建造に拘ったことから騒音欠陥と建造の大幅遅延が発生しました。

 コリンズ級については当初、日本の潜水艦などを後継とする構想でフランスよりバラクーダ級の導入が発表されるものの、突如独自建造の原子力潜水艦計画に切り替えフランスとの深刻な係争問題に発展しました。原潜建造はアメリカとイギリス支援を受けますが2050年代まで実現が難しく、今回の改修で20年コリンズ級は耐用年数を延長できます。■

 マレーシア海軍の新フリゲイトマハラジャレラが進水式を挙行しました。5月23日、マレーシアのルムレット海軍造船所で行われた進水式ではマレーシアのヤンベルホルマットダトスリモハマドハレドノルディン国防大臣も出席、このフリゲイトは沿岸海域戦闘艦第一号とも呼ばれ、マレイシア海軍沿岸艦隊の旗艦となる計画とのこと。

 マハラジャレラの概要は満載排水量で3100tあり、全長は111m、最高速力28ノットで機関部はCODAD方式、乗員は138名とのこと。武装は57mm艦砲と30mm機関砲2門にNSM対艦ミサイル8発と短魚雷発射管などを備え、艦対空ミサイルなどはない。建造計画は2019年に発表、当初計画では6隻を建造予定でしたが5隻になるとのこと。■

 オーストラリア海軍はプロジェクトシー3000フリゲイト建造加速を希望しているとのこと。アンザック級フリゲイト8隻を置き換える11隻のフリゲイトについてオーストラリア政府は5月24日にドイツとスペインに日本及び韓国の造船企業へ情報提供要請書を送っているとのことですが、建造を加速するべく4週間での回答を求めているという。

 アンザック級フリゲイト後継艦11隻は、3隻を国外で建造するとともにのこる8隻を西オーストラリアにおいて建造する方針で、ドイツのMEKO-A200型やスペインのAlfa-3000型、日本では護衛艦もがみ型拡大改良型と韓国では新型フリゲイトが候補になる見通し。決定した場合にはオーストラリアでの建造計画を3週間で提出を求めています。■

 アメリカのニューポートニューズ造船所は原子力艦建造の工員確保に難航しているとのこと。2024年採用予定は3000名、COVID-19新型コロナウィルス感染症により多くの熟練工が事業縮小を受け退職し数年単位の空白が生まれた結果、高校新卒者を新規雇用した場合に熟練工が操業の主力を担った場合と比較しての生産性に影響が及んだという。

 ニューポートニューズ造船所は今後10年間で1万9000名を確保したいものの熟練工を探すには苦労しており、現在は造船熟練工ではなく建築業界の溶接工や電気技師の熟練工を探し出すことで現状の苦境に備えているという。また造船所のあるヴァージニア州のほかにノースカロライナ州からも通勤バスの設定など従業員確保に邁進しているもよう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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【防衛情報】24式装輪装甲戦闘車と24式機動120mm迫撃砲,共通戦術装輪車歩兵戦闘車型等の正式名称が公表

2024-09-02 07:00:46 | 先端軍事テクノロジー
■来年度予算概算要求
 最新装甲車両の開発が進められている概況は予算や幾つかの専門誌により紹介されていましたが、このほど最新型の装甲車について正式名称が公表されました。

 24式装輪装甲戦闘車、24式機動120mm迫撃砲、防衛装備庁が開発を進めていました共通戦術装輪車の歩兵戦闘車型と自走迫撃砲型は正式名称が24式装輪装甲戦闘車と24式機動120mm迫撃砲であることが防衛予算来年度概算要求において発表されました。これらの装備は96式装輪装甲車や120mmRT重迫撃砲の後継として即応機動連隊等に配備されます。

 来年度予算では24式装輪装甲戦闘車18両が218億円、24式機動120mm迫撃砲8両が83億円、そして現在開発中の共通戦術装輪車偵察戦闘型が6両90億円で調達され、またこれらの原型車両となった16式機動戦闘車も15両が156億円で調達されます。一方、パトリアAMV装甲車のライセンス生産も継続され、28両が225億円で調達が要求された。

 24式機動120mm迫撃砲は自動装填装置を搭載した自動迫撃砲を採用したもようです。これは公表された24式機動120mm迫撃砲の写真に搭載されていた迫撃砲がスイスのRUAG社が2015年に開発したコブラ自動迫撃砲システムと共通点が多い為で、砲口に砲弾を装填するまでの動作を機械式で行うと共に、標定と照準も機械式で自動化されているものです。

 コブラ自動迫撃砲システムはスイス連邦軍も今年正式に調達を開始しています。もっとも、防衛省が公表した写真は小さく、コブラ自動迫撃砲システムをそのまま採用しているのか、類似の装備品を独自開発したのかは不明ですが、開発関連予算ではこれに相当するものはありません。同様の装備にパトリアNEMO自動迫撃砲がありますが、採用されていない。

 共通戦術装輪車偵察戦闘型は87式偵察警戒車の後継となるものです。24式装輪装甲戦闘車と共通点が多い装備ですが、後部人員輸送区画に伸縮式センサーマストを装備し、レーダーアンテナを搭載するなど、いままでの87式偵察警戒車よりも高度な監視能力を有していますが、剥き出しのセンサーは前衛を突破する威力偵察は重視していないのでしょうか。

 24式装輪装甲戦闘車と24式機動120mm迫撃砲に共通戦術装輪車偵察戦闘型、さてさて今回遂に制式化されまして量産車両が生産開始となります。早ければ再来年にも富士学校記念行事にも参加する事でしょう。ただ、一昔の89式装甲戦闘車や96式装輪装甲車の調達費用を比べると、高くなったなあという印象と、まだまだ数は足りないなあという実感です。

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【防衛情報】C-130輸送機2700号機納入とFGMTCフランスドイツ多国籍訓練センター,KC-390ミレニアム輸送機

2024-08-27 20:09:34 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回はC-130輸送機の話題を主として小牧基地で撮影したC-130H輸送機の写真と共に紹介してゆきましょう。

 アメリカのロッキードマーティン社はC-130輸送機2700号機を納入しました。C-130輸送機はハーキュリーズ輸送機として戦術輸送機の決定版ともいわれ、装甲車両の開発などにおいても一つの重量や寸法の目安として、C-130輸送機に搭載できるかできないか、という点が海外市場において販路を左右することになるほどの一種の規格です。

 2700号機を受領したのはアメリカ海兵隊、ノースカロライナ州のチェリーポイント海兵航空基地に展開する第252海兵空中給油輸送飛行隊でした。アメリカ海兵隊ではHIMARSを空輸でき、海兵空地一体部隊運用の観点から固定翼機はもちろん、ヘリコプターに給油するべく低速飛行性能が優れたC-130を空中給油輸送機として重要視している。

 C-130輸送機は製造期間が長いことから少なくない機体が既に退役していますが、アメリカ空軍とアメリカ海兵隊を筆頭に運用国は民間型のL-100を含めて60か国以上で航空自衛隊も運用していて、最新型のC-130J輸送機だけでも世界中で22か国により540機が運用されており、その飛行時間の合計は300万時間に迫るものとなっているという。
■防衛フォーラム
 C-130Jは高性能ですが性能異常に割高となった為に国際市場では新しい選択肢を示す動きが。

 ポルトガル空軍はKC-390輸送機2号機を受領しました。6月29日、ポルトガル空軍はブラジルのエンブラエル社よりKC-390輸送機2号機受領式を実施、すでに納入されている初号機は事実上訓練用に充てられている状況でしたが、ポルトガル空軍によれば、2号機受領を以てKC-390は世界規模の展開作戦に対応することになるという。

 KC-390ミレニアム輸送機、ポルトガル空軍は輸送機5機と訓練シミュレータを8億2700万ユーロで導入することとなっています。開発国であるブラジル空軍も既に4機を運用、計画では22機を調達します。ただ、ブラジル政府の慢性的財政難から一時はKC-390を15機まで調達縮小する案が検討されていた時期があり、輸出が期待されていた。

 KC-390はマッハ0.8と巡航速度が速く、最大23tの貨物を搭載した場合で航続距離は2720km、フェリー航続距離は6240kmに達します。輸送能力はC-130と大差ない性能ですが、速力は国際航空貨物路線をそのまま利用できる水準であり、日本の川崎C-2と並んで2000年代に新規開発される輸送機は高速化が潮流となっているといえましょう。
■防衛フォーラム
 自衛隊のC-130Hも老朽化が進んでいますが何も考えずに後継機にC-130J-30を随意契約のように充てるのか、C-2輸送機に置換えるのか。

 アメリカのC-130とブラジルのKC-390について。C-130輸送機は傑作輸送機として開発以来連綿と改修が行われ続けているため、現代の視点で見た場合でも優れた輸送機ですが、その反面、アメリカ空軍が大量に調達していた時代が終了しているため、一機当たりの取得費用が極めて割高になっているという現状があります。

 比較対象は的確ではありませんが、現在のC-130J-130輸送機の調達費用はフライアブルコストの場合で1990年代のC-17輸送機のユニットコストを上回る水準となっていて、もちろん1990年代のフライアブルコストで比較しますとその場合はC-17の費用が逆転するのですが、C-130H輸送機の時代ほど簡単に調達できないことだけは確か。

 KC-390は、輸送機という機能に特化して取得費用をフライアブルコストで1機2億ドル以下に抑えています。ただ、機体自衛装置など戦術輸送機としての性能はC-130の方が格段に強化されており、結局、脅威度の高い地域に輸送するのか脅威度の高まる前の地域に輸送するのかでC-130とKC-390の優位性が変わってくるのかもしれません。
■防衛フォーラム
 C-130Jについては多国間で運用を統一してしまう事で運用費用を抑えることは出来るようです。

 フランス空軍とドイツ空軍は初のFGMTC訓練を完了しました。FGMTCとはフランスドイツ多国籍訓練センターの略称で、フランス空軍とドイツ空軍が運用するC-130J輸送機の多国籍運用を念頭としている部隊です。ドイツ空軍とフランス空軍は共にエアバスA-400M輸送機を運用していますが、併せてこのC-130J輸送機も運用している。

 FGMTCフランスドイツ多国籍訓練センターの設置は2021年にアメリカのロッキードマーティン社が提案したもので、もともとはフランス空軍のC-130J輸送機導入に併せ、訓練装置や訓練管理システムと整備支援などの一環として、同時期にC-130J導入を計画していたドイツ空軍と一括取得することで費用を抑える方策として提案したものです。

 C-130J輸送機について、多国籍飛行隊が設置される事となったのはその延長線上で、ドイツ空軍にはC-130J輸送機6機、フランス空軍にはC-130J輸送機4機が装備されていて、この10機を以て多国籍部隊が運用、FGMTC訓練はFGMTC設置後初の訓練となっていまして、費用を抑えるとともに二国間防衛協力強化の一環ともなりました。

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【防衛情報】ドイツ空軍ユーロファイター戦闘機20機増強,ブライムストーン3空対地ミサイルを増強

2024-08-19 20:24:41 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 ドイツ軍はユーロコプタータイガーの任務を貧弱なH-145ではなくユーロファイターに置換え昔のヤーボのような台風を吹かせるのでしょうか。

 ドイツ空軍はユーロファイター戦闘機20機を増強します。ドイツのショルツ首相はILAベルリン国際航空宇宙展開会式において、ドイツのNATOへの協力体制強化と、ロシアウクライナ戦争の長期化を受けての国際安全保障への関与強化の一環として、その具体策に現在も生産が継続されているユーロファイターの増強で応えたかたち。

 ユーロファイター戦闘機は初期製造型のトランシェ1から比較的新しいトランシェ3Aへの改修費用の割高さや、トランシェ3AからAESAレーダー方式のトランシェ3Bへの改修費用がかさみ、機体構造部分から当初の運用期間以上に延命する事が難しいなど2000年代初頭ほど優位性を強調できない状況が続いていたところでした。

 ユーロファイター戦闘機について、ドイツ政府は既に38機の増強計画を進めており、此処に追加の20機を加えることになります。現在ドイツ政府は老朽化したトーネード攻撃機の後継機としてF-35A戦闘機の導入を決定していて、一方今回のユーロファイター増強決定は、ユーロファイターの生産ライン維持にも重要な要素となるでしょう。■

 ドイツ空軍はブライムストーン3空対地ミサイルを増強します。これはMBDA社とドイツ政府の間で結ばれた新しい契約にもとづくもので、今回の増強発注は過去に無い規模との事で、ドイツ空軍の空対地攻撃能力が大幅に強化される事を意味します。ドイツ空軍ではユーロファイター戦闘機に搭載しての運用を想定しているもよう。

 ブライムストーンはユーロファイター戦闘機に加え、MQ-9リーパー無人攻撃機やユーロドローン等の無人航空機にも運用が可能で、また陸上発射型やヘリコプターからの投射も可能となっています。ドイツ政府はユーロコプタータイガー戦闘ヘリコプターの早期退役を発表しており、今後はユーロファイターがその役割の一端を担うかたち。

 ユーロコプタータイガーはドイツ政府のメルケル政権時代の国防費圧縮政策により段階近代化改修を停止していた時代に整備費用も同時に抑えたことで稼働率が極端に低下し、ショルツ政権に移行した後ロシアウクライナ戦争勃発を受け、その運用強化を模索したところ難しく、H-145観測ヘリコプターの武装型に置き換える決定を下しました。■

 ドイツ連邦軍のブライムストーンミサイル増強を受けMBDA社は新工場を建設します。これは現在MBDA社が運営しているシュロベンハウゼン工場に新しくブライムストーン製造棟とサービスセンターを増築するもので、MBDA社エリックベランジェ最高経営責任者は、この転換によりドイツのミサイル備蓄能力は大幅に強化されると話します。

 ブライムストーンミサイルは元々イギリスがユーロファイター戦闘機用に開発したミサイルで、原型となるブライムストーン1はヘリコプターから発射した場合の射程が12kmで、戦闘機から発射した場合でも射程は20kmと決して長いものではありませんでしたが、ミリ波レーダー誘導により同時多目標対処能力の高さが大きな強みとなっていました。

 ドイツ連邦軍が今回調達するものはブライムストーン3で、ブライムストーン2の時点で射程は60kmと大幅に射程が延伸していましたが、改良により射程やシーカー部分の稼働時間が30%増大したといい、射程80㎞前後となった事を示します。またブライムストーン2から陣地目標などへレーザー誘導方式の直接目標照準も可能となっています。■

 ドイツのユーロファイターとブライムストーン3ミサイルについて、PAH-2ユーロコプタータイガーの後継と成り得るのでしょうか。ドイツ連邦軍自身はPAH-2の後継機としてH-145の武装型を想定していますが、防弾構造ではない軽ヘリコプターの武装型であり、野戦防空火器に防衛された機甲部隊への攻撃は非常に危険を伴う決定でした。

 ユーロファイター戦闘機と原型のブライムストーンミサイルはもともと対戦車攻撃を念頭とした装備であり、それはユーロファイター戦闘機用に6発用兵装架が開発されるとともに、ユーロファイターのキャプターレーダーが捕捉した地上目標をそのまま照準可能、兵装架3基を搭載可能であるため、18発を連続して発射することも可能です。

 H-145ヘリコプターの武装型では対戦車攻撃はいかにも困難で、実際、ロシアウクライナ戦争においてウクライナ政府は汎用ヘリコプターの対戦車型を各国に供与要請していません。しかし、射程を80kmまで延伸したブライムストーンミサイル3とトランシェ3B以降のユーロファイターならば、充分な対戦車攻撃が可能なのかもしれません。

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陸上自衛隊多用途攻撃用UAVはMQ-9リーパー無人攻撃機か?来年度予算概算要求公示前報道

2024-08-18 07:00:48 | 先端軍事テクノロジー
■AH-1S/AH-64D後継
 MQ-9の写真を撮影に行かなければなあと思いつつ近場で運用されておらずにこうした話題の際には困る次第で。

 陸上自衛隊が導入する多用途攻撃用UAVについて、来年度予算概算要求に盛り込まれる可能性を関係者が示しているとの報道がいくつか出てきました。多用途攻撃用UAVについて、防衛省がイメージ図として公開したをみるかぎり、この導入を計画している機種はアメリカのゼネラルアトミクス社製MQ-9リーパー無人攻撃機を想定しているとみられます。

 AH-1S対戦車ヘリコプターとAH-64D戦闘ヘリコプターの後継機となる多用途攻撃用UAV、AH-1S対戦車ヘリコプターの減勢が続く中で一刻も早い無人機の導入が望まれていましたが、MQ-9Bシーガーディアンについては海上保安庁と海上自衛隊が試験運用を開始しています。この運用実績を陸上自衛隊がどの程度、情報に接しているかは不明ですが。

 MQ-9リーパーは滞空時間が14時間から28時間と長く、巡航速度は313km/hと戦闘ヘリコプターを大幅に上回ります、けれどもCOIN機のような固定翼航空機と同じ様にMQ-9の運用には滑走路が必要となっていて、野戦飛行場において運用される対戦車ヘリコプターとは運用特性が異なり、また匍匐飛行など経空脅威状況下での運用能力はありません。

 しかし、行動半径は、九州を拠点とした場合、中国大陸内陸部まで進出が可能というほどに大きく、これは陸上自衛隊が今後整備を進める反撃能力、射程2000km規模の地対地ミサイルの運用を考えた場合、先ず目標に関する情報を得る場合、情報収集衛星のような手段以外、自衛隊には独自の情報を得る手段が無く、MQ-9はこの点を覆す可能性もあります。

 一方、MQ-9は、島嶼部防衛を考えた場合では、中国海軍は射程100km以上の艦対空ミサイルを標準装備した広域防空艦を多数運用しており、匍匐飛行も行わず高高度を戦闘機などと比べれば低速で飛行し、ステルス性も持たない航空機が、有事の際に多数の戦闘機と防空艦のさなかを、どの程度運用できるのか、という疑問符が生まれないでもありません。

 陸上自衛隊は無人航空機の運用では、標的機を改造した無人偵察機については比較的早い時代から運用していましたが、普及の度合いという事を考えますとまだまだ端緒というところであり、果たして、AH-1Sの後継機として充分な能力を発揮出来るまでどの程度時間を要するのか、果たして可能であるのかも未知数ですが先ずは最初の一歩、となる訳です。

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